| 武装集団の傍まで行き、その注意を引く。 「おい、お前」 そう言って腕を引かれた。「きゃあ」と小さく悲鳴を上げる。自分でちょっと気持ち悪いと思ってしまった。 「そ、その人を離してよ!あなたたち、こんなことをして警察や地球軍に捕まるってわかんないの!?」 正義感の強い女の子を演じてみた。 武装集団も人質は多くない方が得策と判じたのか「じゃあ、お前と交代だ」と言って最初に人質に取った女性を解放した。 彼女は転がるようにその場から離れる。 自分に向けられている拳銃を見ては驚いた。 この世の中、結構簡単に武器が手に入る。しかし、そんな中でもやはり軍が持っているものは大抵決まっている。 この武装集団の持っている銃はブルーコスモスが持っているものではない。そして、何度か地球軍の工作員がバナディーヤに攻めてきたことがあるが、そのときに所持していた型と同じものだ。もしかしたら地球軍と何らかの繋がりがあるものかもしれない。 そして、自分を拘束している人物の内ポケットにはディスクが入っている。これを何とかしてどさくさに紛れて奪えないだろうか... そのディスクに入っているものが、全く使い物にならない情報かもしれないが、使えるかもしれない。 遠くからサイレンが聞こえてきた。誰かが警察に通報したのかもしれない。 警察に連行されても困る。 しかし、逃走用の車が到着したらしくそれに連れ込まれた。 ニコルを見た。 ニコルは頷き、車がすぐ傍を走る場所で発信機をつけた。 警察からとりあえず逃げ切ってもらわないとこちらが脱出出来ない。 ニコルはこの発信機を元に自分を追いかけてくれるだろうから、いつか追いつくのは分かっている。 暫く走ると山道に差し掛かる。 ああ、丁度良いな、と思った。 「撒いたか?」 「さあな。とりあえず今のところは追いつかれることはないみたいだ」 そんな会話をしている。 そして漸くに注意を向けられた。 「コイツどうする?」そんな相談事が始まる。 街から随分と離れ、急な山道を走り始めた。 そろそろいいだろう。 そう思って右隣に座る男の鳩尾を殴った。 人質に取ったちょっと正義感の強い少女の突然の反撃に車内は完全に虚を突かれた。 呆然としている左隣の男も顎を殴り上げて気絶させた。 しかし、がどさくさに紛れて奪いたいと思っているディスクを持っている男は助手席に座っている。 後部座席からは男の首を絞めにかかったが、鳩尾を殴られた男がに銃を向けて撃った。 至近距離だったが間一髪でそれを避け、男の頭を殴りつけて脳震盪を起こして行動不能にする。 そのまま助手席の男の内ポケットからディスクを抜き取り、そしてカーブに差し掛かったところで運転手の持っているハンドルを思い切り崖の方に切った。 運転手はブレーキを踏んだがガードレールのない道だったため、そのまま車は崖へと飛び出した。 は男の持っていた拳銃のグリップの部分で窓ガラスを割って、そこから一度車の屋根に立ち、すぐにそれを蹴って崖の上に降り立った。 「大丈夫でしたか?全く、無茶しますね」 すぐに追いついてきたニコルが車から降りてきてそう言った。崖の下から煙が上がっており、が何をしたか何となく察しがついたようだ。 「下は川だったから。よっぽど運が悪くない限り生きてると思うよ」 の言葉に「そうですね」とニコルは返した。 「これ、貰っちゃった」 そう言ってがディスクを見せる。 ニコルが首を傾げたので先ほど、自分が考えたことを話すと「じゃあ、帰ってから確認してみましょう」と言われた。 そのまままた街に戻り、自分たちの指定された区域に戻った。 裏路地に入ってみると表通りとは全く様子が違う。バナディーヤと同じだな、と思いながら歩いているとニコルが突然路地の隙間に入り、を抱きしめる。 「に、ニコル!?」 「静かに。11時の路地の隙間」 短くそう言った。 言われた方向を見ると、先日から自分の上司になったクルーゼが居る。普段から顔を隠している人が顔を隠すためのサングラスをしても全く変化がないからそれだと分かった。 「どういうこと?隊長も情報収集に出るって仰ってたっけ?」 「いいえ。そんな作戦だった記憶なんてにないですね」 「だよね」と呟く。 「ディスク、渡してる。相手は男ね」 ニコルが背を向けているため、が実況した。 「ディスク、ですか?」 「勿論、何が入っているかは分かんない。隊長も何か受け取った」 「どういうことでしょう...」 「隊長に直接説明を求めるのは何となくまずい気がするよ」 の言葉にニコルも躊躇いがちに頷いた。 |
桜風
09.9.1