| 久しぶりに全員が集まった。 あの戦争が終わってそろそろ1年だ。 みんな忙しくしているが、それでも元気だと報告しあう。 長い間病院で療養生活を送っていた少女は随分と元気になり、今は退院してメカニックの仕事をしている。週に1回病院に通う必要はあるが、それでもかなり元気になった。スカーフはもう巻いていない。その必要がなくなったから。 小さかった体も標準くらいまでは大きくなった。 「食欲が凄いんだぜ」とディアッカが苦笑し、「みんなの前でそんな事を言わないで」と彼女が拗ねる。 不意に、店内から曲が流れてきた。ラジオか何かからだろう。 DJが「謎のヴェールに包まれた新人」とか言っている。 ガタン、と椅子が倒れた。 その音のした方向に視線が集まる。 「ニ、ニコル?」 困惑気味にアスランが声を掛けた。 「ごめんなさい、僕。ちょっと行かなきゃいけないところが出来ました」 そう言って財布から適当にお金を抜いてテーブルに置き、「すみません」と謝って駆けていった。 店内に流れる曲に耳を傾ける。 「あ、わたしこの声好きかも」 彼女がそう呟いた声に 「あー、そうだな」 とディアッカが同意する。 曲を聴き終わってDJが「・で、」と曲紹介をした。 「・!?」とラスティが声を上げる。 その声に驚いた彼女がディアッカに説明を求める。 ディアッカは1年前、一緒に戦った少年の話をした。・。それはたぶん・だ。 「ニコルのお友達なの?」 彼女が問う。 「んー、友達って言うより..恋人?」 ディアッカが首を傾げながらそういうと 「未満、ってのがつきそうだけどね」 苦笑しながらラスティが付け加える。 「でも、生きてたんだな...」 少し嬉しそうな声音でアスランが呟いた。 「まあ、簡単にくたばりそうにないタイプだろう。図太いというか...」 「イザークは神経質すぎるのよ」 少女の言葉にイザークは反論する。 「あー、もう。やめろってお前ら」 店員の視線が非難を孕んでいる。 また俺が宥めてる、と思いながらディアッカは溜息を吐いた。 白いワンピースに白い帽子。 あの時と違うのは髪の長さだ。肩くらいで切りそろえている。 「...」 名前を呼ばれて振り返った。 「ああ、良かった。覚えていてくれた」 振り返っては嬉しそうに微笑む。 「歌を、..」 「うん、歌った。ニコルが褒めてくれた歌声を届けたくて。ねえ、これ」 そう言っては何かの紙をニコルに渡す。 受け取ったニコルは絶句した。 「さあ、サインして?」 それは契約書だ。 「僕、でいいんですか?」 「約束したでしょう?またピアノ弾いてくれるって。戦争が終わったら弾いてくれるって言ったはずだけど?」 がニコルの顔を覗きこみながら言った。 「でも、のデビューコンサートって。そんな大切な場所で」 「“だから”、ってことくらい察してほしいな」 ウィンクをする彼女はとてもキュートで、愛おしさがこみ上げてくる。 「僕、もう二度と会えないと思ってました」 を抱き寄せる。 「そうね。わたしも、正直そう思った。けど、ほら。せっかくニコルと約束したのに。それをフイにするなんて勿体無いって思っちゃったから」 「でも、MIAって...」 「・と・は同時に存在出来ないから。じゃあ、どっちかなって病院にいるときに考えて...」 の言葉にニコルが驚く。 「病院!?」 「え、ああ。だって、あの中駆け抜けて無傷でいられるはずがないでしょう?でも、傷は綺麗に消してもらえたわ。ザフトの名医にね?」 「...レオンさんですか?」 半眼になって聞く。 戦争が終わってからも何だかんだでレオンとは何度も会っている。 「ああ、うん。ニコルたちが病院に来ているとかって情報も流してくれてた。実はニコルたちよりもプラントに戻ったのはわたしの方が先なのよね。ディアッカの彼女とも会ったことあるよ。会ったというか、見たってのが正しいな。 髪が伸びるまでは、またバルトフェルド隊長のところにいたの。パイロットじゃなくて、メイドさんとして。殆どそんな仕事させてもらえなかったけど」 肩を竦めてが言った。 「僕、の過ごしている病院に何度も行ったのに...」 恨みがましそうにそう言う。 「だって、そのときはどちらにするか決めてなかったから。決めてからじゃないと会えないって思ったの。でも、友達としてのニコルと一緒にいるよりも好きな人としてのニコルと一緒にいるほうがいいなって思って」 のその言葉に驚き、思わずの顔を覗きこむ。 「まあ、そういうことデス...」 視線を逸らしては照れくさそうにぶっきらぼうに言った。 「ああ、良かった。そうですよね。これで周りを気にせずに人前でもといちゃいちゃ出来ます」 その言葉に驚いて目を丸くしたの口をニコルが優しく塞ぐ。 「もう、居なくならないでくださいね?」 さあっと風が駆け抜ける。花びらの舞う草原で少年と少女は再び唇を寄せた。 |
桜風
09.12.1