| 窓の外は依然豪雨だ。 不思議そうに窓の外を見ているイザークには首を傾げた。 「イザークって、もしかして留学生?」 彼女の言葉にイザークは「ああ、そうだ」と頷く。 なるほど、と彼女も納得して頷いた。 「これは、天気予報になかったと思うが...」 「んー、そう?この時期、スコールがよく来るから言ってると思うんだけどな」 の言葉を聞いて「じゃあ、聞き漏らしたのかもしれないな」とイザークは思った。 「どれくらい続くんだ?」 「1時間弱で済むときもあれば、数時間続くときもある。プラントは、たしか自分たちで天候を調整してるって聞いたんだけど、地球は自然任せだからね。空の気分次第なんだよ。不便と言えば、不便なのかな?」 そう言っても窓の外を眺めた。 この豪雨の中、自称帰る場所のない彼女を追い出すのも何だか気が引ける。 チラリとを見ると彼女も困った表情を浮かべている。 「何で、帰る場所がないんだ?」 突然のイザークの問いには目を丸くした。 「信じてくれるの?」 「いいから話せ。聞いてから考える」 イザークの言葉にはひとつ頷いてゆっくりと話し出す。 は生まれも育ちもオーブだそうだ。まあ、オーブと言うか、ヘリオポリスで生活をしていた期間のほうが長いらしいが。 両親と弟の4人家族だった。自分はナチュラルだが、弟はコーディネーター。両親は、ナチュラル。 家族で平穏な生活を送っていたが、ある日オーブが戦場になった。地球軍が攻めてきたのだ。 多くの国民と同様にの家族も避難した。 国の用意した船に乗って逃げる予定だった。 しかし、その付近でもMSの戦闘があり、それに巻き込まれて父が死んだ。 父を亡くして家族が3人になった。 戦争は一応の終わりを告げ、またオーブに帰ってきた。 父がいないため、母が働いて弟と自分を養ってくれていた。 そして、またオーブは戦場となる。今度は、ザフトが攻めてきた。 前の戦争ほどではないが、国が焼けた。 弟はブレイクザワールドの際に大怪我を負った。戦争中も彼を動かすことが出来なくて、一緒にこの国に残った。それから目を覚ました彼は、記憶喪失になっていた。 殆ど起きていることはないが、目を覚ますたびに他人行儀に話をされた。 は当時、学生でカレッジに通っていたが入院した弟の面倒を見るのと、母親の金銭的負担を軽くするために学校は辞めた。 先日、母が倒れた。 過労だそうだ。 母は衰弱しきっていて、結局亡くなった。 残ったのは自分と弟だ。 弟の治療の目処は立っていた。元々コーディネーターだし回復する見込みがあったが如何せん金銭的問題で足踏みをしている状態だった。 だから、母の残した生命保険を全て弟の治療に宛て、遠い親戚に弟の事を頼んだ。 彼は、コーディネーターだから、きっと優秀な学者になる、と。 家に残った価値のあるものは全てその親戚に譲り、自分はそのまま仕事を探して自分を養わなくてはならなくなった。 母親が家にいないことが多かったため、家事全般は自分がしていたし、意外と性にあっていた。だから、家事をして生活をしようと思っていた。 だが、中々住み込みをさせてくれるところがない。 資産家の家にメイドとして置いてもらったことはあったが、やれ、愛人になれだの何だので結局逃げるように辞めてきている。 だから、今度は学生なんてどうだろうと思って声を掛けてみた。 着ている服は結構高級そうないい服を着ているし、立ち居振る舞いや纏っている雰囲気も中々教育されている感じを受けたイザークをナンパしてみた。 そしたら、意外と面倒見が良くて一応家の中までは入れてくれたのだ。大変感心した。 が他人事のように少し前の話をするので軽く頭痛を覚えた。 イザークの中でも嫌な思い出としてこの先どれくらいの期間か分からないが記憶に留まっていそうな出来事だ。 イザークは溜息を吐いた。 「大変だったな」 2度目の戦争のときはその場にいなかったが、最初のときは自分は海底からその様子を目にしている。 「...信じちゃった?」 同情に近いそれを胸に抱いた途端、彼女がイタズラっぽい笑みを浮かべる。 「は!?」 「いやぁ。ごめん。信じてもらえなかったらやばいなーって思って結構お涙頂戴的な話にしてみたんだけど...意外と良心が痛むね」 そう言って頭を掻く。 「きっさまー!」 イザークが怒って立ち上がる。 「ホントはさ。何か伝統らしいんだけど、ウチって20歳の誕生日に家を追い出されるの。無条件で。私親にそんな話1回もされなかったのにしきたりだからってポイって追い出されてさ。途方に暮れているところにイザーク発見。捕まえちゃえ!って感じだったのよね」 「ゴメン、ゴメン」と軽くそういう。 「じゃあ、出て行け」 「いやいや。んー、1週間!」 人さし指を立ててビシッとイザークに向けて腕を突き出す。 イザークは眉間に皺を寄せる。 「クーリングオフありで1週間。お試し期間だよ。それで使えないって思ったら追い出して。まあ、置いておいても害はないなーって思ったら置いてよ。給料は要らない。生活費を出してくれたらそれで良い。どうかな?」 相変わらず強引だ。 だが、やはりこの豪雨の中放り出すのは可哀想だと思ったイザークは仕方なく頷いた。 「納得いく仕事をしなかったら1週間後、貴様を追い出すぞ」 は笑顔を浮かべて頷いた。 どこか自信に満ちたその笑みを、イザークは何となく気に入った。 |
桜風
09.1.16
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