Liar 9





「お友達ですか?」

キラに向かってラクスが問う。

「お友達、っていうか...」と言いよどみながらキラがを見た。

「知り合い、っていうところが一番妥当だと思います、ラクス・クライン様」

が言うと

「まあ!わたくしのことをご存知でしたの?」

と彼女が驚いた。

どこに、こんな目立つ女王様を知らない人物がいるのだろうか。

「式典にいらっしゃったのでしょう?」

が言うと彼女は頷いた。

「少し、お時間がありましたから。昔、わたくしもオーブで生活をしていましたし、この慰霊碑にお花を捧げるのを日課にしていましたから」

にこりと微笑みながらラクスが言う。

初耳だ、とは驚いた。

さんは、何故この慰霊碑に?」

先ほどは『マイナーだから』と答えたが、流石によその国の代表に適当に返すのはまずいだろうな、と思った。

「昔、オーブは戦場になったんです」

「ええ」とラクスは頷いた。

「この近くにはオートキャンプ場があって。家族でそこに来ていました。父は、論文の締め切りが近いからって仕事を持ち込んで。母が、怒っていました。それでも、いつもの事で、学者の父はいつも研究の事を考えている民俗学オタクでした。家族の事も大切にしてくれて...
でも突然MS戦がこの海岸近くで展開されました。逃げることになって。父がキャンプ場に原稿の一部を忘れたからって戻ったんです。」

「はい」

「父は、その流れ弾で死にました。殆ど直撃、といいますか。だから、苦しむことはなかったと思います」

「そうでしたか」

ラクスは目を伏せた。

先ほど不快そうに顔をゆがめた少女もまた同じ表情をする。


「紅葉が、綺麗なんですよね」

少年が言った。

が彼を見る。彼はシン・アスカと名乗った。

「オレも、あのオートキャンプ場には何度か行ったことがあります」

も名を名乗り、そして頷く。

「そうね。紅葉が綺麗だったわ。ウチは、元々ヘリオポリスで生活をしていたけど、母が紅葉が好きだから秋には必ずこっちに降りて来てたの」

懐かしむようにが目を細める。

「有名だったよね。教授は必ず秋に長期休みを取るって。それ以外で休みを取らないのに、真顔で秋に長期休暇を申請するって。学校側も困っていたけど、結局言いくるめられるというか...」

「文系の学者だったからね。口八丁で丸め込んでたみたい」

キラの言葉にはクスクスと笑う。

とても懐かしい。

自分の周囲には父の事を知る者は無く、の家族の事を語り合う知り合いなどもいなかった。

だから、偶然この場でキラと、シンに会えたのはとても幸運だ。


ちゃんは、今どこに住んでるの?」

キラが問う。

「んー、人のいい人を見つけてね。その人の家で無理やり押しかけ家政婦してる。母は亡くなったし、弟は、所謂ブレイクザワールドで色々あってね。記憶喪失なんだ。私じゃ育てられないから、親戚に頼んだの」

「何、で...?」

シンが問う。

「私とセットだったら、親戚は面倒見てくれないっていったから。私は、ナチュラルだからね。弟はコーディネーターでまだ幼いから色々と可能性があるでしょ?それに、両親を亡くした記憶だったら戻らない方がいい。私がいたら、結構辻褄を合わせるのに苦労しそうだからさ」

心配そうな表情を浮かべる彼らには苦笑した。

「大丈夫!私は逞しくて強かなの。今の同居人も凄くいい人だし」

『...良心が痛むくらいに』という言葉は飲んでは笑顔を作った。

軍人ってもっと粗暴なんだと思っていた。

がさつで、人の事を考えない。

そんな偏ったイメージを持っていた。

でも、イザークは優しい。

相手の事を心配して、手を差し伸べてくれる。

彼のその優しさが時々心配になる。

騙されて痛い目を見るのではないか、と。

自分の事を棚に上げてそんな事を考える自分に思わず自嘲の笑みを零す。

酷いことをしているのは自分だな、今のところ。

何せ、自分の身が危なくなったらとっととずらかろうとかまで思っているのだ。

ああ、最低だな...


「ラクス!」と遠くから声がしてクラクションが鳴る。

「あら、もうお時間ですわ」とおっとり彼女が言う。

さん、またお会いしましょうね」

と言って彼女は背中を向けた。

「じゃあ、また。プラントに来ることがあったら、声を掛けて」

とキラはにメモらしきものを渡す。

ああ、プラントに上がっていたのだな、と彼がラクスの隣にいる理由をやっと納得した。

「じゃあ、オレたちももう行きます」

そう声を掛けてシンが隣に立つ彼女を促して慰霊碑から去っていく。


は彼らに手を振ってそしてまた、慰霊碑の前に佇んだ。









桜風
09.


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