Liar 10





インターホンが鳴る。

レポートの提出課題があるから、とイザークは机に向かっていたが、仕方なく立ち上がった。

ドアを開けると懐かしい顔が2つ並んでいる。シンとルナマリアだ。

ザフトの後輩で、直近の戦争では、最前線にいたMSパイロットたちだ。

「どうした?」と言いながら家の中に入るように促した。

「今日は、オーブの慰霊の日ですから」

シンの言葉に納得した。

そういえば、彼はオーブ出身だったな、と。

隣にいるルナマリアは付き添ってきたのか。

「適当に座ってろ」と声を掛けてコーヒーを淹れる準備をする。

「ジュール隊長」とルナマリアが声を掛ける。

「隊長じゃないんだがな」と呟いて「何だ?」と振り返る。

「もしかして、誰かと同棲中ですか?」

少し興味津々といった表情で言った。

別にの私物が部屋の中に投げてあるということはない。女物の何かがあるわけでもない。

「何故だ?」

「んー、部屋の雰囲気ですね」

女の勘と言うのは怖いな、と思いながら

「押しかけ家政婦ならいるぞ」

と返した。

シンとルナマリアは先ほど聞いたばかりの単語に引っ掛かりを覚えた。

「というか、その家政婦さんって女性..ですよね?」

「ああ、そうだ」とイザークがこともなさそうに言う。

「それを同棲と言うんじゃないですか?」

まだ言うか、と思いながらも

「利害の一致で同じ空間にいるだけだ。そういうのは普通同棲とは言わんだろう?」

器用にマグカップを3つ持ってイザークはソファに向かった。

「まーそうかもしれませんけど」と少し不満そうに相槌を打ち、「ありがとうございます」と言いながらルナマリアはそれを受け取った。


「カグヤに行ったのか?」

イザークがシンに問う。

「あ、いえ。海岸に小さな慰霊碑があるんです。そこに。オレの家族はその近くで亡くなりましたから」

シンの言葉に「そうか」と返してコーヒーを口にする。

「そういえば、そこでラクス様とキラさんにも会いましたよ」

ルナマリアが言う。

「ラクス・クラインだと?式典は?公務で来ているんだろう、彼女は」

「時間があったから、って。オーブに身を隠しているときにその近くに住んでいたらしくて、慰霊碑にお花を捧げるのが日課だったから来たとか。アスランが迎えに来てそのまま戻っていきましたけど」

何となく様子が浮かんだ。

オーブに身を隠していたのは聞いたし、そういうこともあるのだろう。

「ジュール隊長、学校はどうですか?」

ルナマリアの言葉で話が変わる。

「まあ、やりたいことをやってるんだから、楽しいといえば楽しいな」

その話に「へー」と関心を示していたルナマリアが首を傾げる。

「ジュール隊長」

「何だ?」

「ジュール隊長に彼女が出来たとして。押しかけ家政婦さんはどうするんですか?」

「...は?」

どうするもこうするも...

「恋人の家に知らない女の人がいるって気持ちのいいものじゃないですよ。そりゃ、ご実家のように大きな家だったらメイドさんとかいても別に気にならないとは思いますけど...」

ルナマリアの言葉にイザークは深い溜息を吐いた。

「何でお前はそういうことばかり気にするんだ」

呆れたように言うイザークに「そういう年頃なんですよ」と返してくる。

「ほう?」と殆ど相手にしていない様子でイザークは返す。

「ジュール隊長はいつまで留学されるつもりですか?」

何となく2人の雰囲気が怪しくなってきたので、シンが話を変えた。結構気を遣う。

「最低1年は、と思っているが。何かあるのか?」

“1年”とイザークが言うとシンが少し難しそうな顔をした。

「ちょっと上がごたごたしてきているみたいです。オレみたいな下っ端はよく分からないんですけど。エルスマン隊長とか...」

そういえば、ディアッカは今隊長職に就いたのだったなと人事を思い出す。

「せっかく、好きなことをできるようになったのに...」となぜかシンが申し訳なさそうな表情を浮かべる。

イザークは苦笑して

「元々、ずっと研究者としてこの分野に身を置けるなんて思っていなかったし。いつかは、ザフトか評議会に戻ろうと思っていたんだ。遅かれ早かれと言った感じだな」

と言った。

そういえば、自分がいなくなったらはどうするのだろうか。

ひとつだけ、彼女の再就職先に心当たりがある。

いつか連絡を取って、頼むだけ頼んでみよう。


シンとルナマリアは暫く滞在していたが、本日中に戻らないといけないとのことで帰っていった。



それから10分もせずにも戻ってくる。

「お客様が来てたの?」

流しに置いてあるマグカップを見てそう聞いた。

「ああ、昔の。ザフトにいたときの後輩だ。オーブ出身だったから降りてきたみたいだ」

「ふーん」と言いながらは流しのカップを洗う。

「イザーク、今日はお休みをくれてありがとう」

がそう言い、「ああ」とイザークは返す。

「髪が酷いことになっているぞ」と眉間に皺を寄せてイザークが言った。

「ああ、うん。ずっと海岸にいたから。潮風で...」

苦笑しながらがそう言った。

「先にシャワーを浴びて来い」とイザークが促すと彼女は家事の手を止めてその言葉に甘える。

本当は自分でも結構気持ち悪いと思っていたのだ。


「...その前に長期休暇か?」

学校の長期休暇中はプラントに戻ろうと思っていた。

その間、はどうするか...

一緒に上がってきてもいいが、頷くとは思えない。

後で話すか。

とりあえず書きかけのレポートを仕上げるべくイザークは自室に戻った。









桜風
09.


ブラウザバックでお戻りください