Liar 13





最初、がイザークの家にいたときには驚いた。イザークも変わったなぁ、と。

だが、3日も泊まっていると何となくそういう艶っぽい何かがあるという間柄ではないというのが分かる。

イザーク、情けないなぁ...

彼の前で言ったら確実に怒鳴り散らされそうなことを考えながらディアッカはが淹れたコーヒーを口にしていた。

イザークは今日も補講を受けるために学校にいる。


は本当に良く働く。手際がいいし、無駄がない。客である自分がいても不快な思いをさせずにてきぱきと家事をこなしている。

ディアッカは感心しきりだ。

一段落着いたのか、はエプロンを脱いだ。

「休憩?」

「ん、少し」

そう言っては自分のマグカップにコーヒーを注いでディアッカの前に座った。

「そういや、聞いてなかった。ちゃんは何で帰る場所がないの?」

ディアッカの問いに少し沈黙した後、

「伝統といいますか」

と少し歯切れ悪く話し始める。

「ウチって20歳の誕生日に家を追い出されるの。無条件で。私ってば親にそんな話1回もされなかったのにしきたりだからってポイって追い出されたってわけ」

の言葉にディアッカはすぐに言葉を返さずに少し黙って、そしてコーヒーを一口飲んだ。

「で?ホントのところは?」

と返す。

「え、今のが「嘘だろ?」

確信した瞳を向けて、ディアッカはの言葉を遮ってそう言った。

彼女は肩を竦めて溜息を吐く。

「イザークは信じてくれたよ」

「あいつは、意外と素直だからな」

ディアッカは苦笑する。


少し間をあけて「ホントはさ..」とが話し始める。

自分の家族構成。オーブが戦場になり、父がなくなったこと。父が、実はイザークが尊敬して止まない民俗学者だということ。

母が過労で亡くなったこと。

弟が、記憶を失くしてそのまま病院の治療を受けていること。そして、がが一緒にいたら引き取ってはくれないが、コーディネーターの弟一人なら、と承諾した遠い親戚に弟の治療のために母が残した全ての財産を預けたこと。

それから、独りで生きていくために、仕事をしていたが、どうにも上手くいかなくてイザークを騙して今の場所を獲得したこと。

静かに聞いていたディアッカが「あのさ」とマグに口をつけたまま声を出す。

「何で、それ。イザークに言わなかったの?嘘の方じゃなくて」

ディアッカの言葉には寂しそうな表情を浮かべる。

「初めは、ね。言ったの。でも、イザークって何の疑いもなく信じちゃって。だから、慌てて嘘を吐いたんだ」

「意味、分かんないんだけど...」

ディアッカの言葉に「だよね」と自嘲の笑みを浮かべる。

「私、この先自分が生きていくのに沢山嘘を吐かないといけないと思うんだ」

ディアッカは相槌を打たずにそのまま沈黙を以って話を促す。

「あのとき、本当の事をそのままイザークに信じてもらってそのまま置いてもらってたら、もう独りで生きていけない気がしてね。ずっと赤の他人のイザークに面倒見てもらうなんて絶対に不可能でしょ?ましてや学生さん」

「まあ、そうだろうね」

「私は、逞しくて強かでないといけないの」

自分に言い聞かせるようにが言う。

ディアッカは「そっか」と呟いてもう何も言わなかった。

その沈黙が今はとてもありがたいと思った。



暫くして、が「コーヒーのお替りは?」とディアッカに問う。

「あ、うん。頂戴」と言ってディアッカはマグカップをに渡した。

新しいコーヒーを淹れたマグカップをディアッカに渡しながらが「今度は私の番」と言った。

不思議そうに自分を見るディアッカには少しだけ寂しそうな笑みを浮かべた。









桜風
09.3.13


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