Liar 14





の寂しそうな笑顔に少し胸を締め付けられる感覚を覚えたディアッカは、「何?」と努めて明るく続きを促した。

「イザーク、迎えに来たの?」

「...意味、わかんないな」

そう言って何かを誤魔化すようにディアッカはコーヒーを一口飲んだ。

「イザーク・ジュール。数年前に最年少のプラント最高評議会の議員として政界で活躍。その後、アイリーン・カナーバ議長による臨時議会の解散と同時に政界は引退。きっと、ザフトに戻ったんじゃないのかな?」

の言葉にディアッカは反応しあぐねていた。

「イザークがザフトだったのは聞いている。評議員ってのは調べればすぐに出たわ。ちょっと前に、イザークがアスハ代表のボディーガードと知り合いだったって知ったから。気になって調べたの。当時、結構話題になったのね。新聞でも結構騒がれたようだけど。記事が載ってたわ。そして、その後ろにあなたが控えていた。ディアッカは秘書さん?」

「...どっちかといえば、ボディガード?」

ディアッカの返答には「そう」と短く相槌を打つ。

「オレは、この家には遊びに来たんだよ?」

ディアッカの言葉に「嘘ね」とが返す。

「私、自分がウソツキだから他人の嘘が分かるの。それは、全くの真実ではないわ」

ディアッカは視線を彷徨わせた。

どう誤魔化したら納得してくれるだろうか。

「ねえ、ディアッカ。私は嘘で塗り固めたの核になっている真実をあなたに話したわ。プラントの紳士と言うのは、誠実さをお持ちなのでしょう?それとも、そんなものはプラントにはないのかしら?」

挑発するような瞳でが言う。

ディアッカは深く息を吐いた。

あー、もう!

「そうだよ。でも、今すぐじゃない。一応、まだ猶予はあるはずだ。今回は今後要請が入ると思うって話もしておこうと思って来たの。たぶん、イザークの留学は1年で終わる。本人が最低1年はって言ってたからせめてそれくらいはって周りが踏ん張るつもり。勿論、オレがここに来たのはオーブの観光もかねてる。隊長職って結構ストレス堪るからさ。まあ、ちゃんが家にいるとは思わなかったからまだ話せないでいるんだけど」

「夜、同室でしょう?」

「声が漏れたらまずいでしょ?一応これでも気を遣ってたんだよ。でもまあ、今日のうちにでも話すけど。今更君に隠す必要がなくなったし」

ディアッカの言葉に「そう」とは返して「ありがとう」と続けた。


「ただいま」とタイミングよくイザークの声が届く。

ディアッカは椅子から立ち上がり玄関に向かった。

「おかえりなさ〜い!ご飯にする?お風呂にする?それとも、ア・タ・シ?」

「帰れ」

しなりながら少し声を高くして言うディアッカにイザークはいつもの如く冷たく言い放った。

「聞かなかったフリしろよ」

「貴様に言われなくともそうするつもりだ」

ディアッカとイザークは小声でそんな会話を交わした。

の話はイザークは全て聞いていた。ディアッカもイザークが帰ってきていることに気づいてに話すように仕向けた。

今日の講義は少し早く終わった。

だから、家にも早く帰ることができた。

鍵を開けて家の中に入るとディアッカとの話し声が聞こえてきた。

の隠していた真実だ。

彼女がこの家に来て最初に話したあの話は嘘ではなかったのだ。

色々あったとディアッカには端折った箇所も自分は聞いている。

そして、何よりも彼女が自分の事を知っていたことに驚いた。


「おかえり」

ひょいと玄関に顔を覗かせてはイザークに声を掛ける。

「ああ、ただいま」

彼女は何事もなかったように微笑んでいる。

嘘で塗り固めた笑顔。

彼女はそれを浮かべるたびにもしかして罪悪感を抱いていたのだろうか。

意外と素直なのは彼女も同じだ。

「イザーク、補講は今日まででしょ?いつプラントに帰るの?」

「コイツの観光に付き合ってやらんと煩いからな。2、3日はまだこっちに居る」

がなにやら思案し始める。

「どうした?」とイザークが聞くと「その間の滞在先をどうやって確保しようかな、と」とが返した。

「この家は、嫌なの?」

ディアッカが問う。

「や、ダメっしょ?」

そう言いながらイザークを見上げた。

「いや、俺もはこのままこの家で、と思っていたんだが...」

とイザークもを不思議そうに見ている。

も不思議そうにイザークを見上げたままだ。

「家の鍵、渡してあるだろう?」

「まあ、一応」

数ヶ月前の話だ。

「ここは、お前の家だろう?」

鍵とはそういうことだ。

「え、でも。家賃払ってない」

「家事をしている。労働で払っているだろう?」

「それで、いいの?イザーク居ない間はその家事は自分のためだよ?」

「戻ってきたとき、部屋を片付ける必要が全くないならそれでいいと思うが?何か、郵便物が送られてくるかもしれないしな」

イザークがそう言ってもは何となく納得していない様子だった。

「まあ、。イザークが良いって言ってるんだから良いじゃん。一々家を変えるのも面倒くさいだろう?しかも、イザークが戻ってくるまでの期間限定。もうこのまま留守を預かっちゃえって」

第三者のディアッカにもそう言われては頷いた。

「ありがとう」

「よく分からんが、どういたしまして」

イザークは苦笑しながら返してとりあえず荷物を置くため自室に戻っていった。



その背中を見送るの頭にディアッカが手を載せて乱暴に撫でる。

抗議をしようと見上げた先のディアッカの瞳が優しく見えて、は思わず俯いてしまった。

寂しい、と素直にそう思った。









桜風
09.3.13


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