| イザークは学校の長期休暇を利用してプラントに帰った。 を独り置いて帰るのも気にはなったが、プラントの情勢の方も気になる。 プラントに上がってすぐに墓地へと向かった。 仲間たちが眠るそこで、ひときわ仲の良かった友人たちの墓前に花を手向ける。 まずは墓参りと思っていたそれも済み、実家に帰ると母に歓迎されて、その日は動けなかった。 翌日、イザークは迎えに来たディアッカと共にアプリリウスに向かった。 車で議事堂の前を通り過ぎて少し町の中心部から離れた邸宅に向かう。 クライン邸だ。 ディアッカの話では、資料や情報をそこに集めているらしい。 屋敷の中に案内されてイザークは驚いた。ラクスも居たのだ。 しかし、今日は公休日だということを思い出して納得した。 「すみません。公休日にお邪魔して」 イザークが謝罪をすると 「いいえ。わたくしも公休日でなくてはゆっくりお話も出来ませんから。丁度良かったですわ」 ふわりと微笑むラクスだが、やはり疲れが顔に出ている。 プラントのアイドルだった彼女は、疲れなどは顔に出さないことに慣れているはずだ。つまり、隠し切れないくらいの疲労が蓄積しているということだろう。 話は手短に済ませて、ラクスには休んでもらおうと思い、早々に話を促す。 ラクスが議会の中で不穏と思われる動きを一通り話した。 聞いていたイザークも確かに、摘んでおきたい芽だと思った。 「ザフトは?」 部屋の入り口に立っているディアッカに問う。 「まあ、こっちはまだ大丈夫かな?」 そう言いながら現状を話す。 政界と軍が同時に蜂起をしたらどうしたって鎮圧するのに時間と人の命が懸かる。 「何だって、まあ。そんなに大騒ぎにしたんだ?」 「新しい、ロゴスのようなものだよ」 キラの言葉にイザークも頷いた。 彼らはラクスや彼女を慕っている派閥に気づかれないように刺客を送り込んできていた。 垂らした1滴の毒がじわりと広がり始めた感じだ。 だが、まだ間に合う。 「本当に、戻ってこなくていいのか?」 「ええ。でも、あと半年程度しか...」 ラクスは俯いてそう言う。 イザークは溜息を吐いた。ここでも同じ反応だ。 「別に、是が非でも噛り付いておきたいものじゃない。俺の中での優先順位は決まっている。学校に通わなくても、勉強は出来るし」 イザークがそう言うが、ラクスは大丈夫だの一点張りだ。 イザークが戻った方がいいのはこの場に居る誰もがわかっている。 評議会議員の経験もあり、ザフトでの実績もあるイザークは意外と顔が広いし、生真面目な性格のお陰で各方面からの信頼を得ている。更に、母のコネクションだってまだ生きているのだ。 他の者なら話も聞かないといった重鎮もイザークになら多少の時間を割いて会うこともあるだろう。 だから、イザークが戻って来た方が話が早い。 「でもさ。今、イザークが戻ってきたとして。ちゃんはどうすんの?あ、連れてくればいいか」 何故そんな話になる... イザークは半眼になってディアッカを見た。 「“ちゃん”って..・とか?」 キラが問う。 「え、キラ。知ってんの?」 「ああ、うん。カレッジが一緒だったから。お父さんが有名な教授で、最近知ったけどプラントでも有名だったんだね」 「ああ。そうだったのか。カレッジが同じ...」 ふと、思い出す。 キラのカレッジはヘリオポリスで...ディアッカも同じことを思ったのか、苦い表情を浮かべている。 「えっと、じゃあ。もしかして、押しかけ家政婦している家ってイザークのところ?」 「何故そこまで知っているんだ?」 イザークが眉間に皺を寄せて聞き返す。 「この間、オーブに降りたとき、さんに会いましたの。わたくしたちがそこを離れてもずっと海を眺めていて。少し、痛ましく思いましたわ」 ラクスが沈んだように言う。 「そういえば、何でちゃんはイザークのところで押しかけ家政婦をしてるの?」 キラが話題をそらせる。 「...ナンパだ」 「うわぁ。いい度胸!さすがちゃんだなー」 ディアッカが腹の底から愉快そうに笑う。 ムカついてキッと睨んだ。 「の家では20歳になったら問答無用で追い出されるっていう伝統があって。そのお陰で帰るところがないんだと言われてな。あとで嘘だってのは気がついたんだが、まあ。いい働きっぷりだし追い出すまでもないから置いているんだ」 「あ。ちゃんと嘘だって言ったんですね」 キラは納得しているようだ。 そういえば、ディアッカみたいに軽い性格をしていないキラが誰かの事を“ちゃん”というのは珍しいと思った。 それだけ、親しかったのかもしれない。 イザークは勝手に納得してキラにラクスを休ませるように促した。 暫く、この家で仕事させてもらうことを断ってイザークは目の前の書類に目を通し始めた。 |
桜風
09.4.3
ブラウザバックでお戻りください