| 夜遅くまで課題をしている日もある。 勉強したくてオーブの学校に留学しているのだし、徹夜は結構慣れている。以前は連日それだったのだ。 はよく、イザークが遅くまで起きていたら気にして起きているが、イザークは寝るようにいつも声を掛けている。 そのお陰か、最近は無理をしていないようだ。 寝る前にイザークにコーヒーを淹れて彼女は一言断って寝る。 今日もそうだった。 暫くイザークは課題に取り組んでいたが、少し喉が渇き、部屋を出る。 の睡眠を妨げないように夜はなるべく部屋を出ないようにしているのだが、喉の渇きには勝てなかった。 静かにドアを開けてシンクに向かう。 冷蔵庫から水を取り出してコップに注いだ。 部屋に戻ろうとしたときゴトリ、と鈍い音がした。 イザークはコップをテーブルの上に置き、音のした方、ソファに向かった。 覗き込むと、がソファから落ちている。 おでこから落ちたと言うのに彼女はまだ寝息を立てている。 「凄い根性だな...」 普段の自分の気遣いは無用だったのではないだろうかという疑問が頭に浮かんでくる。 しかし、この姿勢のまま放っておいたら明日の朝、確実に寝違えて首を痛めているだろう。 はぁ、と短く息を吐き、イザークはを抱え上げた。 思いのほか軽いに多少戸惑いを覚えたが、ソファにそっと寝かせる。 足元に蹴っ飛ばされているタオルケットを掛けておいた。 じっとの顔を覗きこむ。 意外と幼い表情をしているものだな... いつもは家事をテキパキとこなし、話をすれば理路整然と自分の意見を言う。 時もあるが、大抵好き勝手言っていることを思い出して自分の考えを否定しておいた。 本当に、こういうところはあいつとそっくりだ。 数日前までしょっちゅう顔を合わせていた元自分の右腕を思い浮かべた。 そうは言っても、彼は自分の仕事のほかにイザークの仕事を手伝っていた。一番働いたのはもしかしたら彼かもしれない。 自分がオーブに滞在している期間中で後1回、長期休暇がある。 この前のほど長くない。せいぜい2週間だったと思う。 そのときもプラントに戻って仕事をしておこうと思っていた。 今度は本格的な根回しだ。 たぶん、自分が戻るのはザフトではなく、評議会の方だろう。 益々根回しが必要だ。 ふと、目の前のに視線を戻した。 自分が居なくなったらどうするのだろう。 また誰かあの妙なナンパでもして生きていくのか... もし、彼女が嫌ではなかったらアスランに紹介しよう。 カガリの家もメイドが居るから、も仕事させてもらえるのではないだろうか。 ―――それとも、自分と一緒にプラントへ... そこまで思ってイザークは頭を振った。 何を考えているのか。 プラントに上がったら、自分は忙しくて仕事にしか目を向けられない。 例えが頷いて着いて来ても、自分は彼女を気にかけてやることは出来ない。何かあってもプラントに上がってしまっては頼れる人物が少ない。 生活環境が変わって、頼れる者もなくて。 そんなところに放り込むよりは、あまり生活環境が変わらないオーブで働く方が余程いいはずだ。 アスランは、あれで気遣い人間だし、カガリも結構面倒見がいいはずだ。 の頬にかかる髪を梳いた。 彼女はくすぐったそうに、甘えるように微笑んだ。 その表情に愛しさを感じたイザークは自然な動きで彼女に唇を寄せる。 触れる瞬間、彼女の唇が微かに動いた。 「お父さん」と漏れた声に、イザークは離れていく。 すっくと立ち上がり、先ほどグラスに注いだ水を一気飲みして自室に戻った。 静かにドアを閉めて天を仰ぐ。 「何をやってるんだか...」 呆れたように呟いた。 ふと、思った。 もしかして、今、の父親に邪魔をされたのか? 可愛い娘のピンチに父が何かしら力を発揮した。だって、あの一言がなかったら確実に彼女にキスをしていた。 「俺はアホか」 自分の考えに呆れて思わず呟いた。現実離れした話だ。 どうやら疲れているようなので寝ることにした。 |
桜風
09.4.17
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