| 街へ買い物に出ていたら噂話が耳に入る。 ああ、もうそんな季節か... 何となく感慨深く思ってしまった。 「ハウメアの祝福祭って何だ?明日からだって聞いたが...」 帰宅したイザークが「ただいま」の後の開口一番に聞いてきた。 「オーブで一番大きな秋のお祭り」 が簡潔に返す。 「どういったものだ?」 そんな事を聞くイザークに「一緒に行ってみる?」とは返した。 「約束があるなら、いいけど」と付け足す。 「いや、ないな。じゃあ」とイザークが言い、明日はイザークと共にハウメアの祭りにいくことになった。 ハウメアの祝福祭は、オーブの国を代表とする祭りだ。 「で、結局何を祝うんだ?」 「秋祭りといえば豊穣でしょう」 車でメイン会場となる場所まで向かう。 が言うには、その会場の手前で車を置いたほうがいいとか。結構歩くことになるが、どうせその先は渋滞で進まない。 なるほど、と納得してのナビの通りに車を走らせた。 「しかし、宗教色の強いものがあるとはな...」 驚いたようにイザークが呟いた。車を置いて海岸線を歩いている。先ほど派手に自分の車を抜かしたスポーツカーを徒歩で追い抜いた。 「まあ、一応ハウメアはオーブの唯一神だからね。盛大に感謝しておかないと。プラントは宗教色のあるもの、全くないの?」 「以前、の言っていたクリスマスくらいだろうな。元の意味を既に放棄している祭りだよ。ところで、何で海で祭りなんだ?」 「さっき言ったでしょ?“唯一神”って」 の言葉にイザークは頷く。 「元々、オーブにも様々な神の存在が認められていたみたい。ほら、えーと..ニッポン?」 眉間に手を当てながらが思い出すように呟く。 「日本だな。八百万の神々を言いたいのだろう?」 「あ、それ。そこまで多くないけど、空には、とか風には、とか色々分野別に神様を設定して信じていたんだって。本当に大昔」 「それで?」 「けど、信仰する神が多くて、人々の記憶の中の神が減ったの。忘れていったのよね。そして、いつの間にかハウメアだけに。 けど、その役割は全部ハウメアに引き継がれた。元は海の女神だったんだけど、何かに感謝した方がいいときには必ず彼女..って言っていいんだかわかんないけど、“ハウメア”が出てくるのよね。まあ、オーブにとっては一番意味のある神様だからかな?」 「どういうことだ?」とイザークはを促す。 「ハウメアはこのオーブが出来た歴史に出てくる神様なの」 昔、オーブは大きな大陸の半島で小さな村だった。 しかし、その大きな大陸で戦争が起こった。その戦火は広がり、その半島にもそれは迫ってきていた。 半島で暮らしていた村の神官は、神に祈りを捧げた。 どうか我らをお救いください。 その村の人々も信仰心が篤く、毎日のお祈りとお供え物を欠かしたことはなかった。 神は自分の子達である、その村の人々を救うために大陸から半島に続く森を津波に飲ませて沈めた。 半島はゆっくり大陸から離れ、沈んだ森の代わりに周りに島々が浮かんできた。 結局、その村は戦火に焼かれることはなく誰一人犠牲にならずに平和な国を築いていった。 その津波を起こした神が、ハウメアである、と。 「まあ、大まかに言うとこんな感じ。けど、今思うと昔も変わらないのねー」 「変わらない、って。何がだ?」 「人間の身勝手さ、よ」 そっけなくいうにイザークは首をかしげた。 「だって、そうでしょ?村..人を守るために森を犠牲にしたのよ。森の動物を全て村に移したかもしれない。現実には無理でも神話じゃよくある話よね。けど、森は?木は??沈めたのよ。動けるものだけが命じゃないでしょ? まあ、そうは言っても。この神話が本当にあった話だったとして。私の中にはそんな身勝手な願いを聞き入れてもらって喜んだ人間の血が脈々と流れているということになるけどね」 肩を竦めてそういう。 「それで、ハウメアの祭りは海なのか?海を司る神だから」 「そういうこと」、とは頷いた。 |
桜風
09.5.1
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