Liar 25





イザークが再びプラントへ発った日にデータの纏めは終わった。

まあ、彼がプラントに上がる前に仕上がってもきっと忙しくてこれが活用されるのはオーブに戻ってきてからなんだろうと納得する。


は先日連絡を入れていた人物に会うべくカレッジに向かった。

「良く来たな」

そう声を掛けてきたのはの恩師だ。

「お久しぶりです」

暫く話をしていた。

が学校を辞めてからの話をすると益々この教授はを心配する。

は自分のゼミの最年少の少女だった。

そして、優秀だった。

「学校に、戻ることはないのかな?奨学金制度もあるし、私も力を貸すよ」

「遠くない未来に、戻ると思います。戻りたいと思っていますから」

の言葉に教授は安心したように微笑んだ。

「そうか。そういえば、先日お世話になっている人が居るとか言っていたね。その人が学校に入れてくれるのかい?」

「いいえ、別の人になると思います。その人は、帰らないといけないので。とても優秀で、頼りにされているようなので」

どこかの企業の人間なのかもしれない。

国外に子会社や系列会社を置いている企業は、あの戦争が終わってから随分と増えた。

「そうか」と教授は納得する。

「そういえば、頼みたいことがあるとか言っていたね。何だい?」

それを聞いて、は話をする。

「父の、出版した本をいくつかお持ちですよね?」

「ああ、うん。持っている」

「同じものを何冊か持っていませんか?ご存知の通り、ひとつの本をあまり多く出版していませんから、今探そうと思ったら古書店でも中々置いていないみたいなんです」

「ああ、はそうだったね。あいつは出版部数が少なすぎる。まあ..2つ3つくらいなら、たしか...君は持っていないのかい?」

「昔の家は、ブレイクザワールドで倒壊してしまいました。持って逃げるなんて出来ませんでしたから」

の言葉に教授は眉を顰める。

「そうか。それは、残念..と言って良いのか。とにかく、大変だったね」

教授の言葉には首を振る。

「わかったよ、少し待っていなさい。研究室にも置いている」

そう言いながら立ち上がり、「2冊持っているものはここに置いているんだよ」と書架へと足を向けた。




イザークがプラントに戻っても帰郷を味わう時間など全くなかった。

バタバタと数年前を髣髴とさせるような忙しさの中に身を置いていた。

しかし、驚いたことにかつての政敵が意外にもイザークに協力的だということだ。

彼も色々と懲りたのかもしれない。

そんな事を思いながらひそかに根回しと早急に片付けておきたい案件を水面下で処理していた。

「でさ。どうすんの?どうせこっちに上がってきたらマンションかなんか借りてアプリリウスで生活すんだろう?マティウスの実家からじゃちょっと遠いしさ」

もの凄く忙しい中、ほんのちょっと取れた休憩中に、例によって手伝いに来てくれていたディアッカがなんでもない風に問う。

当然、一緒に上がって来るんだよなと言った感じに。

「さあ、な」

「オイオイ。って行き場がなくて嘘を吐いてまでイザークの家に転がり込んだんだろう?お前居なくなったら、どうすんだよ。また別の誰かを探して転がり込むの?」

一瞬イザークはディアッカに視線を送る。

そして、言葉を返さずに溜息を吐いた。

「イザークみたいに、お人よしがそう居るとも思えないし。変なのに掴まっちゃったらあーんなことやこーんなことになるかもしれないじゃん」

“お人よし”という単語に引っかかったがそれ以上に“あーんなことやこーんなこと”の具体例を自分なりに想像してイザークは息を吐く。

「今の世の中、世知辛いしさ」

畳み掛けるようにディアッカが続ける。

「貴様はさっきから何が言いたいんだ...」

呆れたように溜息交じりに問い返した。

「連れてきたら?って言ってるじゃん、さっきから」

何言ってんの?と言った感じにディアッカが返す。

「決めるのは、だ」

「でも、話を出してあげないと。自分からプラントに連れてってって言いづらいもんじゃない?『来ないか?』くらい言えば?少なくとも、はイザークのこと好きでしょ?“Like”か“Love”かはわかんないけど」

「...根拠は?」と返してみたら「恋愛百戦錬磨のオレの勘」と胸を張って言ったディアッカにちょっとだけムカついたので「数年前に振られたと落ち込んでいたのはどこのどいつだったかな」と厭味を返しておいた。

それは触れてほしくない古傷だったらしく、ディアッカは半眼になってイザークを見る。

勝手に人を煽る奴が悪い。

そんな事を思いながらディアッカの無言の抗議は黙殺した。

第一、そんな気軽に言えるか。

ずっと言えずにいた言葉を言えと気軽に言うディアッカだったから余計にムカついたのだろう。

簡単に言えば、八つ当たり。

チラリとディアッカを見れば何だかまだ落ち込んでいる。

ああ、鬱陶しいな...

もの凄く酷いことを思いながらイザークは残り少ないオーブでの生活を送る間に何とかにプラント行きの話をしておかないと、と自分にプレッシャーをかけていた。









桜風
09.6.12


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