Liar 27





イザークはプラントに戻り、そして評議会の議員となった。

政敵はいるが、それと同じくらいに味方もいる。

何より、右腕が戻ってきた。

「ザフトは?!」

彼が自分の下につくと聞いたときにすぐに聞いた。

「ああ、ザフトのほうが考え方自体まとも、痛い目見たのは現場だしね。議員は戦後の議会は解散してるからあの苦労知らない奴が多いだろう?で、そいつらがまた余計な種をまいている状況なワケ。それに、ザフトには他にも伝手はあるだろう?ていうか。お前がキレたとき、宥められるのはオレしかいないっていう大抜擢よ」

笑いながらディアッカが答えた。

...まあ、そうかもしれない。

最後の言葉については聞かなかったことにして納得した。

あの戦争直後の一番混乱していた時期を経験していない議員が変な工作をするのだ。しかも、自分の利益ばかりを追求するから尚性質が悪い。

不穏に出る杭を打ち、妙な芽は摘んでイザークは奔走していた。



「でさ、何人目?」

イザークがオーブから戻ってきて1年ちょっと過ぎた頃、ディアッカが聞いた。

「何がだ?」

書類に目を通しながらイザークが聞き返す。

「ハウスキーパーをクビにしたんだろう?お前、それで何人目よ」

「ああ、そのことか」とイザークは軽く返す。

プラントに上がり、アプリリウスに部屋を借りて生活をしていた。しかし、忙しいため家にはあまり帰らないものの家に誰も居ないと不便なためハウスキーパーを雇っているのだが、家に帰るたびに解雇していると聞いている。

「お前さ、理想高すぎ」

「それが出来る人間が居たんだ。出来ないことではないだろう?」

が凄かっただけっていい加減気づいたら?実家のメイドの腕に引けを取らなかったんだろう?ジュールのメイドってもの凄く条件厳しいって有名なのにな」

最近は彼女の名前を出してもイザークは動じなくなった。

プラントに上がってきたときなんか、彼女の名前を出すだけではなく、父親の名前を出しただけでも苛立ったり、沈んだりと情緒不安定になっていた。

落ち着いてくれてよかった。

の事はイザークが仕事に奔走するその原因にもなっていたかもしれない。

「それはそうと。オーブの駐留大使の交代があるそうだな」

どうでもいい話題に時間は取りたくない。イザークは仕事の話題を振った。

「ああ、そうそう。えーと、書類が...」

そう言いながら手元に置いている書類の束から目的のものを見つけてイザークに渡す。

「ったく。オーブは何を考えていたんだ。あんな耄碌ジジイを大使だなんて...!」

「オイオイ、友好国の外交官を“耄碌ジジイ”って...」

イザークの暴言にディアッカは苦笑する。

実際、ディアッカもそうと思ってはいるが口にはしない。

「あんなやつ、耄碌ジジイで十分だ。あいつのお陰で俺の仕事は確実に増えていただろう!?」

否定出来ない。というか、ディアッカの仕事も結構増やされた。

「まあ、オーブも軽く地球の他国との緊張状態に陥ったからな。プラントはまだある程度背中を向けても大丈夫だって思ったんだよ。外交の担当はお前だしさ」

ディアッカの言葉にイザークは鼻を鳴らす。とんだ貧乏くじを引かされたものだ。

イザークは今回着任予定の駐留大使の外交官の資料に目を通す。

「名前は?」

「は?書いてないの?記入漏れかよ...」

ディアッカはイザークの書類を覗き込んでぼやいた。これは本部から受け取った書類だ。

「でも、経歴も..ないな?」

チッとイザークは舌打ちをする。また碌でもないのが来るのか...

当分この貧乏くじは続きそうだ。

「まあ、来てしまうものは仕方ない。一応、歓迎という形を取ってやろう」

イザークの言い様に肩を竦めてディアッカは自分の席に戻った。



オーブの新しい駐留大使が着任する日はそのセレモニーが開かれ、夜には歓迎の晩餐会を開くようにしている。

こういうことは総務が仕切るため、イザークはその新しい大使とにこやかに、友好的に親交を深めればいい。

「面倒くさいな」

「いやいや。仕事、仕事」

笑顔を振りまくのは正直好きではない。だから、こういうセレモニーやその後の晩餐会はもの凄く避けたい。というか、そんなのに時間を割くくらいなら家に帰って寝た方がよっぽど有意義だと思う。

「オーブからはカガリもアスランも上がってくるって」

「まあ、責任者だからな。碌なの送ってきてなかったら文句でも言ってやろう」

そんな会話をしていると「すみません」と声を掛けられる。

議会の中のセレモニー会場に向かう途中だ。

振り返るとまだスーツ姿が新鮮な印象の女性が立っていた。

イザークは固まり、ディアッカも同じく動けなくなる。

「あの、議長室はどこでしょうか?」

彼女は構わずに続けた。

...?」

名を呼ばれて彼女はにこりと微笑む。

「初めまして、イザーク・ジュール議員。そして、ディアッカ・エルスマン..秘書?さん?」

首を傾げながらが問う。

「あ、うん。今回オレは秘書。っつうか、..だよな?」

それ以外考えられないけど、それ以上にがここに居る現実がどうにも受け入れられない。

。このたび、オーブのプラント駐留大使の任を拝命してこちらにご挨拶に来ております。というか、本当に議長室はどこ?化粧室に行ったら道が変わっててさ」

「素直に迷子とか言ったら?」

ディアッカは笑いながら隣で依然固まっているイザークを肘で小突いた。

「あ、ああ。議長室か」

我に返ったイザークはそれを説明しようとしたが「大使」と第三者の登場によりそれは阻まれる。

「あ、ごめんなさい。ちょっと広すぎて迷っちゃいました」

秘書だろうか。

父親くらいの年齢と思われる細身の男が彼女を迎えに来た。

「では、また後でお目にかかりましょう」

は2人にそう声を掛けて男についていく。

「イザーク」

ディアッカが名を呼ぶ。

「ああ、」とイザークは返事をしながら遠ざかるの背中を見送った。

どうにもこうにも現在の状況が把握しきれない。

だが、このあとのセレモニーでもまた彼女に会えるということだ。

「行くぞ」

イザークはディアッカに声を掛け、先ほどとは比べ物にならないくらい軽い足取りでセレモニー会場へと向かった。










桜風
09.6.19


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