| そういえば、とイザークは思い出す。 彼女からZAFTに入った経緯は聞いたが、なぜ教官をしているのかは聞いていなかった。 休日に街に出てみた。 ディアッカは入学してから休みのたびに出かけている。 そして、その相手は毎回違う異性だというのだから、イザークは呆れていた。 どちらかと言えばインドア派のイザークは書籍を購入しようと思い、書店に向かった。 「」 不意に見つけた背中に思わず声をかけた。 そしてハタと気づく。 「教官」 取り敢えず、付け足すと彼女は困ったように笑った。 「いいよ、休みの日だし」 と言われてほっと胸をなでおろす。 「何をしているんだ?」 彼女の手元を覗き込むと園芸に関する書籍を開いていた。 顔を上げての表情を見ると、少しだけ視線が泳ぐ。 「園芸をしているのか?」 「プランター栽培でね。ちょこっとだけしか育てられないけど」 そう言ってはぱたんと本を閉じた。 「買わないのか?」 「こういうの、部屋にいっぱいあるから」 肩を竦めて彼女は書架にそれを返した。 「イザークは?うわぁ...」 「何だ、その『うわぁ...』というのは」 不機嫌に問うイザークに「そちらも相変わらずのようで」とは苦笑する。 イザークが手にしているのは民俗学の書籍だ。 ハードカバーの厚いそれにはげんなりとした。 「よくそんな厚い、重そうな本に手が伸びるね」 「趣味に口を出すな」 そう言ってイザークは先ほどが見ていた書籍にも手を伸ばした。 「どうしたの?」 首を傾げる彼女に「これも買うんだ」とイザークが言う。 「プランター栽培するの?」 「そこまで趣味を広げるのは難しいだろうな。まあ、興味が無くもない。昔、いろんな花を教えてもらったからな」 そう言ってイザークはレジに向かった。 会計を済ませて振り返るとの姿がまだあった。 「まだ何か買い物か?」 「いや、何だろう。待っておかなきゃいけないのかな、って思って」 の言葉にイザークは片眉を上げ、「そうか」と言う。 「休みの日はよく出るのか?」 「まさか。休みの日が少ないよ」 の言葉にイザークは驚く。アカデミーは定期的に休みがある。ディアッカがデートに興じられる程度には。 「教官はやっぱりそう言うわけにはいかないのよ」 の言葉に「そういうもんか」とイザークは呟き、彼女を見た。 「なに?」 「食事をしようと思う」 「奢らないわよ」 が返すと「そう言わんが、付き合わないか」と言った。 「ま、良いわ。付き合いましょ」 は頷く。 適当なカフェに入って注文を済ませた。 店員は恐縮したような様子を見せる。 「ジュール家御用達?」 「さあ?俺は知らんが向こうが知っているということは多々あったからそれじゃないのか?」 イザークは興味なさげにに返す。 「良家のご子息殿も面倒なのね」 「お陰様でな」 感心したようなの感想にイザークは投げやりに返した。 食事が運ばれ、ふとイザークが食事の手を止めた。 「目が、ね」 問うまでもなくが言う。 自身のディープブルーの瞳を指差している彼女に 「目?」 とイザークは問い返した。 「戦闘中に、船が被弾して。計器がいくつか飛んだの。その時に目に傷が入って。 もちろん、我々の技術なら何とかできるけど、難しいものだからお金が凄くかかっちゃうわけ」 プラントの、コーディネーターの技術を持ってすれば大抵の外科的な処置は何とかなる。 だが、技術力が高ければ高いほどその治療費は高額になる。理不尽な話ではないが、難しい話でもある。 「だから、全線復帰はもう無理。長時間、モニタを見続けられないの。でも、優秀な成績を収めてアカデミーを卒業した私にはアカデミーへの赴任の声がかかったの。ま、恩師が凄く頑張ってくれたみたいだけどね」 肩を竦めてが続けていった。 「だから、か」 「そうよ。こんなぴっちぴちで教官なのはそれが理由」 「ぴっちぴちかはともかくとして...」 イザークの返しにはむくれた表情を浮かべ、笑った。 「まあ、何にしても。に会えてよかった」 「イザークの事だから凄く気にしてくれたんだろうね。ありがと」 笑ったの笑顔は昔と変わらず、イザークの胸がツキンと痛んだ。 |
桜風
14.7.24
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