| デートから帰ってきたディアッカがふと窓際に置いてある新しいものを見て「あれ」と呟く。 「どうしたんだよ、あれ」 「今日買ったんだ」 「へえ?イザーク、外に出たんだ?あ、で。それ...」 イザークが視線を落としている書籍を見てディアッカは肩を竦める。 これまた分厚い本を... そして、その傍らにイザークの趣味の範疇外のものが置いてあった。 「園芸?」 ディアッカのつぶやきが耳に入ったイザークは視線をずらして傍に置いている書籍に向ける。 「ああ、少し興味があるからな」 イザークが頷くとディアッカがニヤニヤする。 「何だ」 「の趣味って園芸じゃなかった?」 「そうだな」 素直に頷くイザークにディアッカが眉を上げる。 「どうでもいいが、香水臭いぞ」 「へいへい。今日の子はちょっと派手だったからなー」 そう言いながらディアッカはシャワーを浴びるべくバスルームに向かった。 あれから、食事を終えた後、イザークは彼女と一緒に買い物をした。 彼女が新しい苗を探しに行くと言ったのだ。 せっかく園芸の本を購入したのだから自分も挑戦しようと思った。 種苗店にはたくさんの種類の苗や植木があった。 「何を買うんだ?」 「うーん、どれにしよう...」 今が植替え時期のものが並べてある苗の前に座り込んで真剣な眼差しで彼女は花々を眺めていた。 その視線は、前と変わらず優しく、繊細な指先で花弁に触れている。 変わらない光景にほっとしている自分に気づいたイザークは少しだけ彼女から離れた。 店内を見渡し、ふと視線が止まった。 「仙人掌」 「ああ、いいかもね」 不意に声をかけられてイザークは驚き、振り返った。 「うん、良いと思うよ」 が頷く。 「私もこれ買おうっと」 「苗は良いのか?」 「苗も買う。イザークがいなくなったからちょっと探しただけ。長くなるよ、って断ろうと思って」 「わかった。店内を適当にふらついている」 「了解」 はZAFTの敬礼をしてまた先ほどの場所に戻るべく回れ右をして、また回れ右をした。 「これにしようよ」 「苗は」 苗を見に行ったのだろうと思っていたのに、まだここにいる。 「すぐに行くって。これにしよう。お揃い」 「は?」 「よし、もうちょっと待ってね」 そう言ってイザークの疑問に全く答える気のないは今度こそ先ほどの苗の前に戻って行った。 「まあ、いいか」 仙人掌なら少々水遣りを忘れても構わないのだろう。 暫く待たされ、ようやく彼女の眼鏡にかなった苗が選び出されたのは日が傾き始めた頃だった。 2人で買い物を済ませ、そして帰路に就く。 イザークはアカデミーの敷地内の寮に住んでいるが、は職員寮ではなく、一人暮らしをしているという。 「送るか?」 「いいわよー。イザークよりも強いもん」 は笑ってそう言った。 まあ、入隊式の時にひっくり返された身としてはあまり強く言えない。 それが油断していたからと言っても。 「仙人掌って、花は綺麗なんだよな」 シャワーを終えたディアッカが髪を拭きながら言う。 「そうなのか?」 「結構はっきりとした色の花が咲くって。赤とか..黄色とか?」 「詳しいな」 「ま、いろんな人と話してるからな」 (いろんな『女の子』と話をしている、の間違いだろう) イザークはそう思ったが「そうか」と返し、就寝の準備に入った。 もうちょっと読書の時間を確保したかった。 が種苗店で思いのほか粘ったから仕方ないか。彼女は満足そうにしていたし... 休暇の翌日に登校するとふと花壇に花が植えてあった。 それは昨日が種苗店で購入したそれと同じもので、イザークは思わず足を止めた。 「イザーク?」 数歩後ろにイザークがいるとこに気づいたディアッカは振り返る。 「あ、いや。なんでもない」 そう言って少し早足となり、ディアッカに追いついてそのまま足を進める。 (プランターに植えるんじゃなかったのか?) そう思ってもう一度振り返る。 苗はプランターに植えてあった。どうやら、彼女は静かにアカデミー内に花を植える気になったらしい。 こういうのはきっと許可がいるだろうに... しかし、今の状況では気に留める者もいないのかもしれない。 ふと気づいた時に花が目に入れば心は和む。 少なくとも、自分はそうだ。 (今度指摘してみようか) 気づかれていると知ったら彼女はどんな反応をするだろうか、イザークは少し楽しくなった。 |
桜風
14.7.31
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