| 配属を知らされたのは比較的早いほうだと思う。 がそれを聞いたときには思わず持っていたスパナを自分の足の上に落としてしまい、悶絶した。 周りに呆れられても、彼女はそんなの気にならない。 だって、その船にはあの人が居るのだから... が配属されたのはボルテール。年若い隊長が率いるその隊の母艦だ。 新しく配属された兵士を前に隊長が士気を上げる。 この船には先の戦争を経験した人が結構乗っていた。 そうだと知ってる人もいれば、初めて知った人もいる。 兎にも角にも。 有名人が乗っているのだ。 この船の任務は基本的にはパトロールみたいなもの。 一応、地球とプラントには協定がある。だから、そう易々と戦争にはならない。 だから、正直たちの時代は就職難だったりする。 意外と世の中世知辛いのである。 世知辛いのだけれども、はやっぱりラッキーだと少し浮かれていた。 夜中、が目が覚まして時計を見るとそろそろ交代の時間だ。 もう寝れないと思って部屋を後にした。 そういえば、この船の中探検した事ないや... そう思って船の中をうろつくと、少し広い場所があって、そこは外を展望できるようになっている。 船の構造って何処も似てるのか、大抵こんなスペースは必ずあるものだ。 がそこに足を運ぶと先客が居た。 あまり見ない動きをしている。 それでも、凛としたそれはとても美しく、外の明かりのみの空間がさらにそれを引き立たせていた。 スッ、と動きが止まった。 は思わず拍手をする。 先ほどまで舞っていたディアッカは突然の拍手にビクリと体を震わせた。 「何だよ、か。驚かせんなよな」 気恥ずかしそうにディアッカが乱暴に言う。 はこの船に配属されてからディアッカによく話しかけていた。 何せ、ディアッカこそがの憧れの人だったのだから。 がディアッカのことを知ったのはあの戦争の後。 アカデミーの先輩として1回だけ授業というか、講義というか。戦争体験談というか。そういうのをしに来た。 他にも候補が居たらしいが、面倒くさいことを理由に押し付けられて仕方なくディアッカがやって来たらしいと同期のルナマリアが言っていた。 何処から仕入れた情報か少々気になるが、それ以上にディアッカのことが気になった。 こう言っては失礼なのかもしれないが、そういう面倒ごとを押し付けられるタイプなのかもしれない。 凄く世渡りが上手そうなのに... 従兄弟がディアッカの同期で、その貧乏くじを引くのはアカデミーの頃からのことらしい。 益々気になって従兄弟に話を聞いているうちに、別の意味でも気になり始めた。 我ながら単純だと苦笑が漏れる。 「あの、さっきの何ですか!?」 がトン、と床を蹴ってディアッカの元へと移動する。 「日舞」 と素っ気なく一言返ってきた。 日舞...?何だそれは?? 聞いてみるとディアッカの趣味だそうだ。ダンスの一種らしいが、一人で『舞う』ものらしい。 「ホントは扇を持ってやるんだけどな」 ディアッカが言う。 「扇って何ですか?」 「こんな感じで...」 ときちんと説明をしてくれる。 ディアッカの説明を首をかしげながら聞いていたは 「それって、折りたためるんですよね?!」 と興奮したように手でその動作を再現してみる。 「ん?まあ、な。つか、知ってんじゃん」 呆れたようにディアッカが言う。 が、そんな言葉はの耳には届かない。 「ちょ、待っててください。すぐに戻るんで。まだ部屋に帰ったらダメですよ。良いですね!!」 遠ざかりながら叫ぶ。 寝てる人間に迷惑だろう、と思いながらディアッカは溜息を吐いた。 自分はどうやらあの変わった子に懐かれてしまったらしい。 どういう気持ちを向けているのか、気付かないわけでもない。可愛いと思うし、面白いとも思う。 が、今はそれどころじゃないってのがディアッカの正直なところだ。 今抱えているこの問題について一度イザークに相談したら 「それはただのお前の我侭だろう。自分は今何処で何をしている?それを棚に上げて彼女に危険だからやめろと言うのは筋が通らないだろうし、彼女も納得するはずがないだろう。 彼女だって先の戦争を経験して、その上で選んだ道だ。お前とどれだけ違いがあるんだ?」 と全く呆れたモード全開でそう言われた。 ディアッカだって分かってる。分かってるけど、納得できない。 だって、心配じゃないか... けど、もうダメかも。 色々とそっち方面の経験も豊富なディアッカはそれなりに感じ取るものがあった。 「ディアッカさん!」 名前を呼ばれて振り返ると息が上がって頬を紅潮させたが立っていた。 その右手には間違いなく扇が有る。 「何だ、持ってんじゃん」 そう言いながら受け取った。広げたり閉じたりを数回繰り替えす。選んだ柄も結構センスがいいと思う。 「あの、さっきのもう1回お願いします」 『さっきの』が何を指しているのか分かったディアッカは 「んじゃ、ちょっとだけな」 と了承して構えた。 途端に場の空気が引き締まり、静謐さを持つ。 音のないその空間で、ただディアッカの衣擦れの音だけがそこに響いた。 ピタリと動きが止まり舞いの終わりを告げる。 「やっぱ、船ん中だと難しいな。体のバランスとか取りづらいったらないわ」 顔を顰めてディアッカが言う。狂ったように拍手をしているに扇を返そうとすると断られた。 「ディアッカさんが持っててください」 「はあ?!なんで?」 「だって、あたしが持ってても宝の持ち腐れとやらです。だから、時々それを使って舞ってください。運が良かったら、それを使ったディアッカさんの舞い、あたしが見れます」 の言葉にディアッカは少し悩んだが 「んじゃ、借りとくわ」 そう言ってディアッカはを置いてその場を去る。 が、 「うわ〜!」 と叫ぶに追い越された。 時計を見て納得する。 交代の時刻はとっくに過ぎていた。 ものすごいスピードで遠ざかるにディアッカの口から思わず笑いが漏れた。 「何やってんだか。お前、新人だろうが」 小さく呟いた。 |
10万打リクエストで種運命時間でディアッカ夢。
実際、この話は種運命に突入したかどうかの時間軸と思われます...
桜風
07.8.29
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