dawning 2





毎日モニタを見ていて、目がどんどん悪くなっているような気がしてならない。

同僚に視力回復のツボなるものを教えてもらったので、そこを押しながら屋上に向かう。

外の空気を吸いたい。

元々インドアというよりもアウトドアの人間だったのだ。

よくも大人しくデスクに着いてちまちまとした作業をしているものだと自分で自分に感心する。

(これもひとえにが大好きな気持ちのお陰だねー)

うんうんと自分で納得しながら歩いていると、ふと、地上にの姿を見つけた。

他の誰よりも彼女を見つけ出す速さに自信がある。

これは絶対に負けない。

しかし、「あれ...」とラスティは声を零した。

の隣に立っている人がいる。しかも、男。

確か、別の開発チームの班長だ。

よりも少し年上で..結構人気が高いと小耳に挟んだことがある。

「そっちはダメだ」

むっとしたようにラスティは呟いた。

彼が立っているのは、の右側。つまり、視力のある方だ。

いつも、ラスティがそちらに立つと

「視界が塞がれちゃうから、そっちには立たないで」

と嫌がられる。

だから、ラスティはいつも彼女の左側に立つのだ。

たぶん、見えないのは不安になる。そこは分かるから、彼女の希望通りにそうしていた。

それなのに...



久方ぶりの休みに家に帰ってみた。

(泥のように眠りたい...)

仮眠は充分取れているけど、やっぱり自宅のベッドで寝るのとは全然違う。

ドアを開けると「あら」とエプロン姿のがひょっこりと顔を出す。

!」

嬉しくて駆け寄り、ハタと我に返る。

「ねえ、

「なに?」

首を傾げてが返事する。

の右側、ダメじゃないの?」

「右側?」

そう言っては右側を向いた。

「ダメって?」

首を傾げる。

ラスティは、少し苛立たしく感じながらも彼女の右隣に立つ。

「あ、なるほど。うん、視界がなくなるから好きじゃない」

「じゃあ、なんであいつ...」

そこまで言って俯いた。

何だか段々自分が小さく思えてきた。

「あいつ?」

「いい!何でもない!!」

そう言ってラスティは慌てて自室に戻っていく。

ばたんとドアが閉まり、は苦笑した。見られていたらしい。

エリカから指示されて動いている。

あまり公に出来る内容のことではない。

「もうちょっと気をつけなきゃ...」

ポツリと呟き、ラスティの部屋をノックする。

「私、夕方には出勤だから」

「え!?」

勢い良くドアが開いた。

「今日、一緒じゃないの?」

「え、うん...」

目の前でガッカリされては苦笑を零す。

「洗い物を出して。洗濯するから。あと、コーヒー飲む?」

「飲む」

頷いたラスティはに言われたとおり洗い物を出して洗濯する。

リビングのテーブルに着いて彼女の淹れてくれるコーヒーを待った。

「ラスティの班、忙しそうね。今、一番忙しいんじゃないかしら?」

お湯を沸かしながらが声を掛ける。

はそうでもないの?」

「ラスティよりは家に帰れる回数が多いかな?」

ケトルが鳴り、火を止める。

「そうなの?」

「たぶん、今ウチで一番忙しいのってラスティのトコでしょ」

「えー!」

の言葉にラスティが非難がましい声を上げた。

は笑う。

「主任もさー、気が利かないと思わない?」

「エリカ主任?」

が問い返すとラスティが頷く。

マグカップをもってがテーブルにやってきた。

ラスティの前に置くと「ありがとう」と彼は礼を言う。

「で、エリカ主任の何処が気が利かないの?」

「オレ、と同じ班にしてもらいたかった」

「仕事しないって思われたんじゃないのかしらー?」

の指摘にラスティはグッと言葉に詰まった。

まあ、の周りにまとわりつく自信はある。

「けど、ラスティのその忙しさもあと、2〜3週間で落ち着くらしいよ」

「ホント?」

弾んだ声でラスティが言う。

「うん、班長が言ってたし。ひと段落したら、今度は共同作業になるって」

「共同作業?のところと?!」

ラスティの声が弾むが「ぶー」と彼女に否定された。

「え、違うの。わー、もうどうでもいいー」

心からの言葉を口に出す。

は苦笑して

「確か、F棟の2階の一番西側」

と言う。

研究室の所在だ。

それを聞いてラスティは眉間に皺を寄せる。

「それって...」

(この間、が一緒に歩いてたあいつのチームじゃん)

ラスティが黙り込んだのを見てはやっと気付いた。

(そういえば、そうね...エリカ主任...)

ここにはいない上司を頭に思い浮かべる。

色々と暗躍されているようだ。

はそっと溜息を吐いた。









桜風
12.9.24


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