| 取り敢えず主任に、と思って彼女の部屋を訪ねた。 ブザーを押すと「はい」と返事がある。 (ああ、中に誰かいるんだ...) 「ラスティ・マッケンジーです」 名乗ると「どうぞ」とドアが開いた。 入ってみるとがいた。 「久しぶりー」 ヒラヒラと手を振ってエリカを見た。 「最近、どう?」 「12日後に片付きます」 ラスティが言う。 「...え?」 が驚きの声を漏らした。 「俺が見て黒、若しくは黒に近い灰色をリストアップして上に送ってみたの。で、上で情報を集めてくれて、ビンゴ。けど、ちょっと大きいのが後ろにいるらしいからちょっと時間くれって」 ラスティが言うとエリカも驚いたように眉を上げている。 「ただ、こっちも時間がないからって急いでもらって12日時間が要るっていわれたんですよ」 エリカを見て言う。 「こっちも政府が動けるように準備しておいたほうがいいです」 ラスティがエリカに言う。 「けど、オーブの政治家も色々あるはずですよね」 がエリカを見て言う。 「そうね」 「時間はないですよ。俺はこの国で育ってないし、正直そんなに興味ないからどの人が信頼できるかは全然分かりません」 ラスティの言葉を受けてエリカは頷く。 その後、エリカに通信が入ったため、とラスティは部屋を出て行った。 「ラスティ、凄いね...」 は目を丸くしていた。 「惚れ直した?」 イタズラっぽく笑って言うと 「うん...」 と呆然と頷かれてラスティが固まる。 「え、どうかした?」 「う、ううん」 ラスティは首を横に振る。 「ねえ、」 「なに?」 「の瞳、見たい」 突然そんなことを言われては少し戸惑った。 しかし、ラスティはじっと見つめていて、はぐらかせそうにない。 仕方なく、いつも掛けている色眼鏡を外した。 「これでいいの?」 「こっちもいい?」 そう言っていつも瞳を隠している左側の前髪に手を伸ばす。 「...いいよ」 そっと前髪を上げる。 は居心地が悪そうに視線を逸らしている。 「オレ、の瞳の色、好きだよ」 「ん?」 思わずラスティを見上げてしまった。 彼の、空色の瞳吸い込まれそうになる。 「の瞳の色は、夜が明けるときの海の色なんだよ」 「右は、ね」 皮肉っぽく笑って言う。左は光が無い。 「左は夜の海の色。静かに朝が来るのをじっと待ってるんだ」 は困ったように笑った。 「どうしたの?」 「ううん。ちょっと確認したかったんだ」 ラスティがいう。 前髪も下ろしてもらったので、もういいのだろう。は眼鏡を掛けた。 「ねえ、」 「まだ何か?」 苦笑してが返す。 「これが終わったら、うちに来ない?」 「...は?」 が頓狂な声を漏らす。 「この間、イザークとディアッカと話をしたんだけど。長期休暇がもらえるならプラントに上がってこないかって。一緒にご飯しよーって」 「え、うん...」 「だから、さ」 「え、いや。わかんない」 が言うと 「オレは、の故郷を知ってるけど、はオレの故郷を知らないじゃん」 とラスティが言い、彼女は頷く。 「コーディネーターしかいない上に、空は作り物だけど。そこがオレの故郷だからさ」 そう言ってラスティが笑う。 「オレの故郷、案内させて」 「...無事に終わったらね」 「無事に終わるって。オレとイザークとディアッカが悪巧みしてんだよ」 ラスティは、悪い笑みを浮かべた。 は眉を上げて、そして苦笑する。 12日後、バタバタとあっという間に諸々が片付いた。 プラントは、戦争を目論んでいた評議会議員の逮捕。 オーブでは、その評議会議員と結託していたモルゲンレーテ社の上層部の摘発と、彼らの飼っていたスパイの逮捕。 本当にあっという間に、一晩のうちに全てが終わった。 そのばたばたの全容を知っていたたちは、事態の収束まで殆ど休みなしに会社の中を駆けずり回っていた。 終わったときには、空が夜から朝に変わり始めていた。 「あー、疲れた...」 屋上でごろんと寝転んでラスティがぼやく。作業着が汚れるが、知ったこっちゃない。 「そうねー。主任に盛大に文句を言って、休みをもぎ取らなきゃ!」 が苦笑した。 そして、彼女は短く息を吐く。気合を入れるように。 「ね、ラスティ」 「なに?」 寝転んだままに顔を向けると彼女が覆い被さるように体を傾けてきた。 柔らかな彼女の唇が自分のそれに触れてすぐに離れた。 「...」 呆然と彼女を見上げる。 「ご、ご褒美..に、ならなかった?」 朝陽を受けて輝く彼女の顔がほんのり赤く見える。 「ぜんぜん!全然!!」 ガバッと起き上がってラスティは首を横に振る。全力で。 「けど、」 「なに...?」 「オレからもしたい」 そう言って返事を聞かず、ラスティは彼女の体を抱き寄せて唇を塞いだ。 「、好きだよ」 唇が離れて自然とラスティの口から零れた言葉を耳にしたは目の前のラスティにしがみついた。 恥ずかしそうに抱きつく彼女を抱きしめ返すと「だいすき」とかすかに、しかし、しっかりと呟いた彼女の言葉が耳に届き、ラスティは破顔した。 |
桜風
12.10.29
ブラウザバックでお戻りください