| 「あれ、今日はいないの?」 構内を一人で歩いている友人を見つけてディアッカがそう声を掛けた。 今は昼時間だからどの学年も授業はないはずだ。 昼はいつも恋人である・と一緒にいるはずなのに... 「ああ、うん。今日は家の用事があるとかで学校自体休んでるんだ、は」 そう返したのはディアッカに恋人の所在を聞かれたラスティだ。 彼女はラスティやディアッカよりもひとつ下だ。 「ああ、そういえばそんなコト言ってたな」 納得したように呟いたのはイザークで、ラスティの恋人であるとは一番付き合いが古い。 彼の母親と彼女の母親が学生時代からの友人で、そのお陰もあってイザークとは幼いときからの友人だ。 そんなことから、家とは交流が今でもあり、母を通しての予定が時々耳に入る。 今朝、母ががどうのこうの言っていたな、と思い出した。 具体的に何の用事とかはもしかしたら母は言っていたかもしれないが、そこまで興味がなかったので覚えていない。 「えー...、何の用?」 「興味ないから覚えていない」 興味があるラスティが聞くとイザークはつれなく返す。 機嫌が悪いとかではなく、彼は大抵つれない。 2人のやり取りはえてして温度差がある。 ディアッカは肩を竦めて食堂に行くよう2人に声を掛けた。 「あっれ。ニコル珍しいな」 ラスティよりも2つ下のニコルが食堂にいた。食堂にいること自体は珍しくないが、目の前に食堂の定食が並んでいる。 彼は大抵母親が作った弁当を持ってきている。 「そうですね。母が、ちょっと最近疲れているみたいなので」 優しい性格のニコルは疲れ気味の母に気を遣って弁当は要らないと言ったのだろう。 彼の母親の作る弁当は中々手が凝っていて美味だ。 時々摘まませてもらっているラスティは少し残念そうな表情になりながらも「大丈夫なの?」と気遣っている。 「夏場は毎年ですから。所謂夏バテです」 なるほど、と納得する。 彼らの住んでいるプラントは複数のコロニーから成り立っている宇宙に浮かぶ人口的な生活場所だ。 全てを機械制御で行っている。天気も気温も風や人工的に作っている海の波も。 だが、それでもずっと快適と言うことにはしていない。一応、多少の不便などは地球にいたときと同様に残している。 『夏』という季節も残しており、短いとはいえ、その時期は暑い。そのため、ニコルの母親のように体調を崩す人も少なくない。 「は?」 ニコルと共に昼食を摂っていたアスランがラスティの隣にいるはずの自分と同じ年の少女がいないため声を掛けた。 ラスティは苦笑して「今日はお休み」と返す。 「何か用事があるんだってさ」 そう言いながらディアッカが椅子に座り、その隣にイザークも腰を下ろした。 彼らは親の職業が同じであるため、学校に入る以前からの知り合いだ。ディアッカとイザークはこの学校に入る前の初等教育の学校が同じで、他の3人はそれぞれ学校が重なった時期はなかったそうだ。 「そういや、には言ったのか?」 ディアッカの言葉にサンドイッチを口に入れたままラスティは首を横に振る。 「レタスが口からはみ出てるぞ」 呆れたようにイザークが注意した。行儀が悪い。 もぐもぐと口の中のサンドイッチを咀嚼して飲み込み「ううん、まだ」とラスティは改めて声を出す。 彼らコーディネーターの成人年齢は13歳だ。なので、この学校にいる彼らは大抵成人している。 しかし、一応初等教育などなど順序を追って学校に通っていたらやはりこの年まで学校に通うようになるのは仕方のないことだ。 ラスティたちは来年卒業で高等教育の過程が終了する。勿論、研究などを続けたかったらまた上の機関があるので学生を続けるものも多い。 「まだ言っていないのか」 呆れた口調のイザークに眉を顰めて「そーだよー」と拗ねたように返す。 「案外オクテなんですね」 定食を綺麗に食べ終わったニコルがコーヒーを飲みながら呟いた。 その呟きにぐっと詰まりながらも「でも、もうちゃんと準備してるんだもん」と返す。 「だもん」て... 可愛くないが、でも、ちょっとだけ可愛かったのが何とも複雑で友人たちは全員彼の言葉を黙殺することにした。 複雑な雰囲気になったにもかかわらず、気づいてか気づかないでかラスティは「あー、早く明日になんないかなー」などと暢気に呟いていた。 |
桜風
09.9.14
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