Special happiness 7





休んだを見舞いにイザークは彼女の家を訪ねた。

さすがに家だからラスティは見舞いには行かないことにしたらしい。イザークに彼女への見舞いを預けるにとどまった。

「向日葵、ねぇ」

しかも、大きなやつだ。

花屋に売ってある花束に出来る手ごろな大きさのものではなく、庭や校庭に植える背の高いそれだった。

「どこから取ってきた」

呆れてイザークが問うと

「そこらへん」

とグラウンドを指差した。

ああ、確かに乱暴に刈られたのが1本あるなと納得した。

というか、自分に泥棒の濡れ衣を着せられたら溜まったものではないな...

ディアッカは暇だからという理由でついてきた。


彼女の家のベルを鳴らすと昨日と同様に彼女の母親が出てきた。

イザークが抱えている大きな向日葵を見て言葉を失っている。

「見舞いに、と預かってきました」

「ラスティくんかしら?」

イザークとディアッカは顔を見合わせそして頷いた。

「前にね、あったのよ。あの子がこれくらい大きな向日葵を持って帰ったことが。どうしたの、って聞いたらラスティくんに貰ったって笑いながら言っていたわ」

どうやらラスティの花泥棒は初犯ではなかったらしい。

呆れたイザークたちにくすくすと笑いながら彼女の母親は部屋へと案内してくれた。

「どうだ、知恵熱は」

イザークの言葉にはぷくぅと頬を膨らませた。

「知恵熱って...子供じゃないんだから」

「ほう、そいつは初耳だ」

イザークの言葉にはさらにへそを曲げた。

2人の会話を聞きながらディアッカは肩を竦めて苦笑した。

「で、どうなの?」

ディアッカが聞く。

「ええ、大丈夫だと思います。疲れが出たんじゃないかってお医者様はそういいました。ほら、わたしって結構頑張り屋さんですから」

自分に敬語が返ってくるのは未だにむずがゆいな、と思いながら「そうだよね」と話をあわせる。

「見舞いだ」

そう言ってイザークはラスティから預かった向日葵をずい、と差し出した。

彼女は目を丸くしてそして笑う。

「どうしたの、これ」

「まあ..聞くな」

「って、何で知ってるの?向日葵ならこれくらい大きいのじゃないとっていっつも思ってるのよね。ほら、お花屋さんにある控えめなのってなんか向日葵じゃないって感じしない?あれくらいなら別の花でも良いのにって思うの。うわぁ、ありがとう」

きっと記憶を無くす前にラスティにそんな話をしたんだろうな。だから、彼はこれをに、と渡してきたのだろう。グラウンドに咲いている向日葵を失敬して。

の母親がアイスコーヒーを持ってきた。にはオレンジジュースだ。

イザークとディアッカはそれを受け取り、彼女に礼を言う。

「ごゆっくりね」

の母はそう言って部屋を後にした。


「ねえ、イザーク」

「なんだ」

イザークがそっけなく返す。でも、いつものことだ。

「わたし、もしかして好きだった人居たの?」

「え、ちゃん。思い出したの?!」

ディアッカが聞く。

「ん、いえ。オトメの勘ってやつなんだですけど...」

でも、かなり核心に近づいた。

よし、良いぞ!!

そう思いながらストローに口をつける。

「イザーク、とか」

ゲホゲホとディアッカは盛大にむせた。

何か一気に遠くなった。

イザークはむせ続けているディアッカをちらりと見て溜息を吐く。

「なぜそんなことを思う?」

「わたし、たぶん前にもこうやって大きな向日葵を貰ったと思うの。それになんて言うか...イザークの周りの人と一緒に居ても違和感がないって言うか。記憶をなくす前もああやって一緒に居たんじゃないかな?」

何か、ニアミスな発言のはずなのに、中身を考えたら全くニアじゃない。

一通り咳き込んで取り敢えず落ち着いたディアッカはイザークを見た。

イザークの視線は少し、珍しく動揺したように忙しなく動いている。

ここで真実を話すべきか。

しかし、ドクターの指示では彼女の記憶を訂正しないように、との話だったし。勿論、彼女の両親にもそのように頼まれている。

イザークは深く息を吐いた。

「......そうだ」

イザークの意外な一言にディアッカは思わず叫びそうになった。自分の手で口をふさいでそれは何とか防ぐことが出来たが。

一体何を考えてイザークはそんなことを言い出したのだろう...?

イザークを見ても彼は表情を変えずにの言葉を待っているようだ。

「...やっぱり」

安心したように微笑むを見て、ディアッカはもう何と言うか、自分の胃が痛くなりそうな展開を前に逃げ出したくなった。









桜風
09.10.26


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