| 「イザークさん」 「気持ち悪い」 の家からの帰り道、ディアッカが勇気を振り絞ってイザークに声を掛けた。しかし、想像通りの冷たい反応。 「あの、さ。さっきの..何?イザークが何を考えてんのか分かんないんですけど」 「言ってもダメそうだったからな」 「主語、述語!文法の基本!!」 そう主張するディアッカに冷たい視線を向けてこれ見よがしに深い溜息を吐く。 「ラスティのことを話してもは納得しないだろうと思ったから、ああ言ったんだ」 「話こじれないのか?てか、はそれでちゃんと思い出すのか?」 「多少は、まあ。こじれるだろうな。だが、ラスティに関する記憶も断片的には残っている。だったら、その記憶と俺が関係なければまた別の発想に行くんじゃないかと思ったんだ。頭で理解は出来そうにないだろうから、頭の中ではなく、別のところにある記憶に頼るしかないだろう。と、いうわけで後は頼んだ」 ああ、貧乏くじ... ディアッカは遠い目をして夕日を見た。 とイザークが付き合いだしたと聞いたとき、ラスティの表情が消えた。 胃が痛い... そう思いながらもディアッカはイザークから聞いた話をした。 何となく理解できるような、もっと別の方法があったんじゃないかと思えるような... それでもニコルとアスランは納得できなくても別に良い。 だが、問題はラスティだ。 恐る恐るディアッカはラスティを見た。 泣きそうな顔をして「そっか」と言った。 ふと、彼の視線の先にはイザークとの姿があった。 「、何か雰囲気変わったし。良いんじゃないかな」 ディアッカがを見つけたことに気づいてラスティが言う。 どういうことだろう。 彼を見ると「退院して以来、どこか張り詰めている感じがしたからさ」と理由を教えてくれた。 ディアッカには良く分からなかった。混乱はしているだろう。それはそうだ。カレッジに入学している記憶がないのに、在籍していると聞いて授業を受けに来ていたのだから。 少しでも自分の思い出した記憶が間違い出なかったと思える何かがあったらそれは安心に繋がる。 この先も少しずつ思い出せるという自信に繋がる。 それは今の彼女にはきっと必要なことだ。 イザークとが付き合いだしたという話は彼女の両親にもしておいた。 彼らはラスティのことを気遣っていたが、それでもイザークの考えも一理あるのではないかと思い了解した。 彼女が問えば昔の話はするが、必要以上に勝手にラスティのした行動をイザークに置き換えて話すことはやめてほしいというイザークの話も了承した。 「夕日が見たい」 突然がそう言った。 「夕日?まあ、良いが...」 眉間に皺を寄せてイザークが言う。 何で突然そんなこと言い出したのだろう。夕日なんてどこからでも見れるだろう... そう思いながらも車を出した。 彼女が言うとおり車を走らせて着いたのは小高い丘だ。 「良くこんなところを知っていたな」 イザークが呟くと彼女は首を傾げた。 「前にも来たでしょう?教えてくれたのは、..イザークでしょう?」 あれ?何かちょっと違う気がする。別の..誰だろう...お父さんかな?? は少し混乱した。 イザークじゃなかった気がする。では、誰だろう? とても大切な人に..イザーク以外でそんな人がいるのか? 「どうした?」 俯いたまま動かなくなったにイザークが声を掛けた。 「ん?え、いや。なんでもないよ」 胸に何かが引っかかった。凄く気になる。思い出さなければならない何か。 焦るな、と言い聞かせるが、焦らなければいけないような気がしてくる。 誰かを傷つけているような気がしてならない。大切な、誰か。 「?」 「あ、うん」 展望台は駐車場から少し歩くことになる。 先を行くイザークが振り返ってを待った。 は駆け出し、イザークの腕に自分の腕を絡める。 イザークは手を繋ごうとしない。どうしてだろう。照れてるのかな? 仕方ないからはイザークの腕に自分の腕を絡めて歩くことが多い。 展望台まで歩いていくと丁度夕日が地平線に沈み始めるところだった。 「綺麗だね」 が呟くと「そうだな」とイザークも応える。 「わたし、夕日が好きなの」 「へえ?」と続きを促すようにイザークが相槌を打つ。 「だって、似てるでしょう?」 そう言ってイザークを見上げる。夕日を受けていつも銀色に輝いている彼の髪もオレンジ色がかっている。 ...あれ?何に似てるんだっけ?? 青空と、夕焼け。その2つが一緒になっていて、笑うと自分の好きな向日葵のような印象がある。 もう一度イザークを見上げた。 夕日は既に地平線に消えて辺りは薄暗くなっている。 そうだ、イザークは夜のイメージだ。夕焼けではなく、静かな夜。勿論、笑っても向日葵じゃない。 「ちがう」 ポツリとが呟く。 の呟きはイザークの耳にも届いた。視線だけに向ける。彼女は俯いているから表情は見えない。だが、先ほどのような笑顔は浮かべていないだろう。 頭が覚えていなくても心が覚えていることは沢山ある。 たぶん、彼女は頭の中で作り出した現実に考えうる記憶と心が大切に保管していた記憶の違いに混乱しているのだろう。 荒療治ともいえることを選択したのは間違いだっただろうか。 それでも、彼女は思い出さなければならない。彼の存在を思い出せなければ、彼女は幸せになれないとイザークは考えている。 彼女を想う気持ちは他の誰にも負けない、と彼は言っていた。胸を張って、誇らしげに。 それを聞いた友人たちはそうだな、と皆納得した。 イザークも納得している。面倒くさいとか、鬱陶しいとか色々思ったけどラスティとを引き合わせてよかったと思うくらい、2人は幸せそうに笑っていた。 人にはそれぞれ失くしてはいけない想いがあるはずだ。 が失くしてはいけない想い、それはラスティへのそれだ。 「、帰るか?」 あとちょっとだ。 そんなことを思いながら、イザークはを促し展望台を後にした。 |
桜風
09.11.2
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