Seriously 3





週末にクラスメイトに誘われて所謂合コンで楽しみ、そのまま女の子のひとりと一緒に帰っているところでディアッカは足を止めた。

バッチリ目があってしまった。

「拙い...」

「なあに?」

鼻にかかった甘えた声でディアッカの腕に自分の腕を絡ませて少し体重をかけている女が上目遣いで見つめてくる。

見え透いた計算をしている女は嫌いではない。

相手が何を求めているか手に取るようにわかるから、こちらもそんなに苦労する必要がないのだ。相手に適当に合わせておけば良い。

しかし、はその点難しそうだなと思っていた矢先のコレで、ディアッカはどうしたものかと逡巡したが、やはり目先の楽しみを取ることにした。



「あっはっはー!修羅場?修羅場った?!」

週明けにに目撃されたことを幹事だったクラスメイトに言うと彼は心から愉快そうに笑った。

「お前、他人事だと思って...!」

「実際他人事。で、どうだった?の姫さん」

「や...」

ディアッカは言葉に詰まった。

目があった。間違いない。

(俺がってわかったんだから、だって、俺の事分かったハズだよなぁ?)

彼女は何も言わなかった。

父親に対して抗議なり何なりがあるかと思ったが、全くそういう行動を起こしていなかったらしい。

「まさか、無反応?」

「そのまさか」

「何だ。やっぱり俺達のような婚約って愛がないんだねぇ。政略結婚の要素もかなり大きいもんね」

すっかり興味を失ったらしく、彼はそういった。そして、次なる彼の興味はお持ち帰りした女の子との具合の方だった。


その日、ディアッカは学校が終わるとの勤務する研究施設に向かった。

何らかのアフターケアなり何なりしなくては、と思ったのだ。

その施設ではディアッカは親の威光により、立ち入りは顔パスだった。

警備員に自分の名前を言うとすぐに通してくれた。

これも少し腹立たしいところではある。

総合受付での所属を確認して研究棟に向かう。

研究棟の受付で話をすると、の詰めている研究室に案内してもらえた。

ガラスの向こうにが見えた。

先日、ホテルで会ったときと全く印象が違う。

あの時は、着ている服や、化粧。それらがすべて華やかだった。

今のは、殆どスッピンで白衣を着ている。『華やか』という言葉からは遠いところにある姿だったが、ディアッカはその姿に少しの間見蕩れていた。

仲間の研究員の男が彼女に声をかける。

彼女は少し表情を緩めて彼の話を聞いて相槌を打っていた。

別の研究者がガラスの向こう、つまり、ディアッカを指差す。

彼女は振り返って驚いた表情を見せた。

少ししてディアッカの立つ部屋に彼女が姿を見せた。

「どうしたの?」

「あ、いや...」

「週末のことだったら別に気にしなくて良いわよ?」

(何だ、気にしてんじゃん...)

どこかホッとした自分がいて困惑する。

の方こそ気にしてんじゃん」

ディアッカが指摘すると彼女はきょとんとした。

「そんなことないわよ。わたし的に、この婚約はあなたの遺伝子さえもらえれば良いものだから、あなたがどこに遺伝子をばら撒こうと気にしないんだけど...」

彼女はあくまでディアッカの『遺伝子』に興味があるのだ。

「遺伝子って...」

思わず絶句する。

「あ、そうそう。解析の結果、確かにハゲの遺伝子はなかったわよ。突然変異を起こさなければね」

「...それはどーも」

何だか面白くない。

(...くそっ!)

ディアッカの様子がおかしいことには気付いた。

気付いたが、何が原因でそうなったのかはわからない。

「どうしたの?」

「別に」

ディアッカの素っ気無い言葉にも彼女は特に感情を刺激されることがなかったらしく、「そ?」と返しただけだった。

!」

研究者が声をかけてきた。

「あ、今行くわ。じゃあね、ディアッカ。お父様には内緒にしておくから安心して」

そう言っては研究に戻っていった。

彼女はディアッカが先日のことを口止めに来た、若しくは誤魔化しに来たのだと思ったらしい。

実際、こちらに足を運んだ理由として間違っていないが、それでもあんなにも平然とされていると腹が立つ。

そして、腹が立っている自分にさらに腹が立つ。

「くそっ...!」

毒づいてディアッカはその部屋を後にした。

部屋を出る際に一度だけを振り返った。

彼女は研究仲間と楽しげに話をしている。

ガラス1枚の隔たりがとても遠く感じられた。









桜風
12.6.4


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