| の父親に勧められてお茶をご馳走になった。 食事の時間には半端だったのだ。 それはそれで丁度良かったが... 先ほどからディアッカはの父親の発言に苛立たしさを募らせていた。 自分も調べてこの家の、の格式を知っている。 だから、から見たエルスマンは格下で、何より自分自身が持っているものがない。 すべて父親の名前、父親の地位から来るものばかりだ。 父親の隣に座って人形のように大人しくしていたが突然 「あーあー、つまんない!」 と伸びをする。 ディアッカは驚いた。 先ほどまで本当に『令嬢』だったのに、この変貌振り。 「これ、」 父親に窘められる。 「お父様、話が長いわー。わたくし、疲れましたから部屋に帰ります」 場の空気が悪くなる。 (何言ってんだ、?) 「ディアッカ、もう良いわよ。帰って」 少し高飛車に彼女が言う。今の今まで彼女の父親が彼に対して取っていた態度に近い。 困惑しながら彼女を見れば彼女はパチンとウィンクをして応接室を後にする。 「どうやら、娘を甘やかしてしまって...遺伝子研究などに興味を持って。躾のし直しが必要だと此処最近痛感しているのだよ。ディアッカ君、今日はお引取り頂こう」 そう言っての父親は彼女が出て行ったドアを厳しい眼差しで射抜く。 「では、今日はご苦労だったね」 そう言ってディアッカを口先だけで労った後、「!」と声を荒げて彼女の部屋に向かっていった。 メイドに見送られてディアッカは邸を後にした。 夜になり、ディアッカのモバイルにメールが入る。 からだ。 内容は、今日の無礼を詫びるものだった。 (時間は遅いけど、今メールが来たなら起きてるよな) ディアッカはにダイヤルしてみた。 『はい』 「...何か、声が変じゃない?」 少し鼻にかかっていて沈んだ声だ。 『そう?』 素っ気無いの声にやっぱり違和感を持つ。 「あ、夜遅くにごめん」 『今更』と彼女は笑った。 「あー、うん。、あの後大丈夫だった?」 『慣れてるから大丈夫よ。ウチの父、手は上げないの。その分、まあ、ネチネチと..ね』 困ったように彼女が返す。 『今日はごめんなさいね。せっかく、楽しかったのに』 がそう言う。 (余所行きの声だ...) 大衆食堂で、何でもない話をしているときのの声はもっと弾んでいた。 今は、父親の前で令嬢をしていた彼女の声だ。コロコロと笑い、微笑を浮かべ... 「俺さ」 『なに?』 「浮気オッケーなとの婚約って結構楽だな、って思ってた」 『いい物件見つけたわね』 揶揄する彼女の言葉はひとまず置いておくことにした。 「浮気って、本気があってこそなんだよな」 軽口が返ってくるかと思ったが、意外なことに返ってきたのは沈黙だ。 「、俺に本気になってみない?」 『は?』 即聞き返された。 「俺、今ちょっと本気になったかも」 『何よ、突然...』 困惑気味のの言葉にディアッカは喉の奥で笑う。たぶん、今自分は凄く『悪い顔』をしているのだろう。 「本当のは、鈴が転がるように笑わないんだ。『あっはっは!』って本当に愉快そうに笑う。嫌なときは嫌だとわかる顔だってするんだ」 『何が言いたいの?』 「ちょっと、ね。、仕事辞めろとか言われなかった?」 『いつも言われてる。けど、ほら。こっちはエルスマン家の坊ちゃんとの婚約を飲んだんだし。父は父でこの婚約から派生する美味しい汁を啜るつもりみたいだから、今のところ見守ってくれるわよ。利用価値アリだからね』 投げやりに言う彼女に 「それって、たぶん期間限定でしょ?の読みではどれくらい?」 とディアッカが問う。 『変なこと聞くのねぇ...』 感心したように、呆れたようにが呟いた。 『確実、あと3ヶ月。それ以降は、読めない。というか、読む気がない』 「え、3ヵ月後に俺婚約破棄されるの?」 『可能性は否定できないわ。ウチの父は、プラントの政策なんて興味なさそうだもの』 の言葉にディアッカは少し考えた。 「、遺伝子だけじゃわかんないこと見せてやるよ」 『何、あと3ヶ月で禿げるの?』 からかうようにが言う。 「それは、遺伝子どおりで...」 ガクリと肩を落としたディアッカの耳に『あっはっは!』と愉快そうに笑うの声が届いた。 |
桜風
12.6.18
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