Seriously 6





モバイルを切っては溜息を吐いた。

「何なのよ...」

本気だとか、愉快そうに笑うだとか。

ただ、初めて言われた。

『本当の』、と。

自分には必ず『』の名前が付く。

だから、本当の自分と言うものを見られたことはない。

自分ですら思ったことがない。

現に、自分は家を意識して今の仕事を選んだようなものだ。

父親がバカにしている遺伝子研究。

元々『研究者』というものに価値を全く見出していない。だから、その道を選んだ。

結局、自分こそ家を、父を意識しているのだ。



「あー、暇」

街の中を歩きながら思わずの独り言。

家の用事以外で仕事の休みを取っていなかったに上司が休暇命令を出したのだ。家の用事がある日も時間ギリギリまで仕事をしている。

基本、仕事漬けで過ごしていたので休みを貰っても何をしていいか分からない。

とりあえず、ウィンドウショッピングをしながら店を冷やかすまでは考え付いたが、時間が余る。

家は..あまり好きではない。窮屈なのだ。

時計を見る。

まだまだ時間がある。

「あ、そうだ」

今からシャトルに乗れば、間に合うかもしれない。

はニッと笑ってステーションに向かった。

シャトルに乗り、隣のコロニーにやってきた。

タクシーに乗ってそこへと向かった。

まだ少し時間が早かったらしい。

「いやぁ、懐かしいわ」

見上げた先は学校の校舎だ。

自分の出身校ではない。自分が通っていたのは、良家の子息や令嬢を集めたそういう学校だった。

しかし、目の前の学校はそんなでもない。

確かに良家の子息令嬢は通っているが、そういう人ばかりではないらしい。

正門前のガードレールに浅く腰掛けて空を見上げる。

青い空。ゆっくり流れる白い雲。

のんびりした時間、確かに久しぶりだと思った。

ざわざわと正門あたりがにぎやかになってきた。先ほどチャイムが鳴っていたので学校が終わったのだろう。

正門から出て行く生徒達に少し好奇の眼差しを向けられながらは出てくる生徒達を眺めていた。

しかし...

(やっぱ、若いわ)

溜息を呑む。

何もしていない筈なのに肌に張りがある。化粧を施している生徒もいるようだが、その姿に初々しさを感じてしまう。

「まずい...」

それに対して、自分は、と思ってしまった。

服は、勿論家が購入している仕立てのいいものを着ているが、それを着ている自分は全く磨いていない。

仕事を理由に、ということになるのかもしれない。

研究に邪魔なものはすべて避けている。だから、親に連れていかれるパーティだとかそう言うのがなければ華美な服も着ないし、化粧も薄っすら乗せるだけだ。

何より、爪の手入れが...

深爪の、機能重視の自分の爪を眺めた。磨くくらいすれば良いのに、それも全くしていない。

磨いても傷が付くので、結局そういうことをしなくなったのだ。

「ディアッカ」

ふと、待ち人の名を呼ぶ声が聞こえて顔を上げた。

正門から出てきたのは確かにディアッカ・エルスマンで。

しかし、彼の脇には女の子がくっついている。

ズキンと胸が痛んだ。

「何だ...?」

は胸の辺りを押さえる。

思わず回れ右をしてその場を去っていった。


ふと、視界に入ったその風景にディアッカは足を止める。

...?」

まさかな、と自分の口から零れた彼女の名を否定しようとしたが、見つけた後姿はだった。

「ごめん、ちょっと今日はパス」

友人達と遊ぶ約束をしていたディアッカはそう言って彼女の背を追いかけた。









桜風
12.6.25


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