| ディアッカに案内されたそこの門の前では口を開いた。 「ねえ、ディアッカ」 「んー?」 愉快そうにディアッカが返事をする。 「嫌な予感しかしないわ」 「やだなー、俺んちを見上げてそんなこと言うなよ」 笑ってディアッカが返した。 「ちょ、聞いてないわよ!」 「聞かれてないし」 「聞いたじゃない!けど、ディアッカが誤魔化したんじゃない!!」 そう言うは彼の腕をつかんで見上げている。 「ははは。楽しそうだって思ったし。何より、」 そう言ってディアッカは彼女の顔を覗きこむ。 「な、何...」 「さっき、大抵のところではビビらないって言わなかった?」 「全てにおいてビビらないなんて言ってないじゃない!」 「ははっ、大丈夫だって。ウチのお袋の飯は美味い方だと思うし」 「だって、わたしこんな普通の格好で。爪なんてこんな...」 さっき気にしたのですぐに気になってしまった。 「ドレス着てウチに来られたらお袋がビビる。ああいうの逆に苦手なんだよ、あの人。爪は..仕事してるんだから普通じゃん。研究者だし」 彼女の爪を見てディアッカは何でもないことのようにいう。 ガチャリと家のドアが開いた。 「おや、帰ってきてたのかい」 「あ、うん」 声をかけてきたのがおそらく、ディアッカの母親。 「ほら、腹括って」 「ばかぁー」 の反応にディアッカは喉の奥でクツクツと笑う。 しかし、さすがの『』の令嬢だ。 家に上がれば全く卒なくこなしている。 ディアッカの母親の話に表情豊かに受け答えしている。 「すげぇ...」 ポツリと呟いたディアッカは心底感心した。 数々の戦場を潜り抜けただけある。 政治の場は『戦場』だ。そして、『』はそういう場所を好んでいる。 ――娘を餌に。 は食事だけ済ませてすぐに帰宅の途についた。明日も仕事があるし、あまり遅くまで引き止めるのは良くないだろう。 何より、付き合い始めたらディアッカの母親は長いのだ。 だから食事だけで、翌日の仕事を理由に帰らせたほうが賢明だとしてディアッカが無理矢理帰した。 彼女がステーションまでで良いというので、ステーションまで車を走らせる。 「さすがだなー」 ディアッカが呟いた。 「何が?というか、ディアッカのお母様の料理、ホント美味しかったわ」 「言っとく。絶対に天狗になるけどな」 そう言ってディアッカは笑う。大喜びをするに決まっている。 「で、何がさすがなの?」 が先ほどのディアッカの言葉に戻した。 「ん?ああ、」 「わたし?」 「あんだけビビってたのに、家に入った途端そんな様子おくびにも出さない」 「出してたまるかってんですよ」 苦笑してが言う。 「何で?」 「クセ、かしらね。弱みは人に見せるな、という我が家の家訓?」 自嘲気味に笑いながらはそういった。 「家訓か...けど。ひとんちの家訓にどうこういうのはどうかとは思うんだけど。それって、寂しいな」 「寂しい?」 そんなことを思ったことはなかった。 はきょとんとした。 「知ってるか?人と言う字は人と人が支えあって出来てるんだって」 「何、それ...」 呆れたようには問い返す。 「ま、これから俺は沢山の弱みを暴いてやるから」 「何が目的...?」 半眼になってが言う。 「んー、人生の楽しみってのを教えてあげるってことかな?」 「ディアッカ。忘れてると思うけど、あなたわたしよりも年下よ?何だって、年下に人生の楽しみなんて教えてもらわなきゃいけないの」 溜息交じりにが言う。 「よりも俺のほうが知ってることは沢山あるんだし、この場合年は関係ないってね」 そんな会話をしているとステーションに着いた。 シャトルの手続きはディアッカが済ませてくれた。待っているの元に戻ってきたディアッカからシャトルの搭乗券を受け取った。 「今度来るときは、前もって連絡してよ」 「学生に学校サボらせられない」 「授業終わったらソッコー教室出るから」 「掃除は?」 「ササッと済ませる」 ディアッカの言葉には笑った。 の乗るシャトルの搭乗がアナウンスされた。 「あ、それじゃあ」 ゲートに向かって歩くの後ろをディアッカがついて歩く。 「じゃあ、またね」 そう言って歩き出したに「」とディアッカが声をかける。 振り返った彼女の唇に別の体温が触れた。 「じゃ、また」 間近なところにディアッカの顔がある。 「う..うん」 何とか頷いたはそのまま搭乗ゲートをくぐった。 胸を叩く心臓の鼓動がやけに耳に響いていた。 |
桜風
12.7.9
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