Seriously 9





今日の父はどうにもご機嫌だ。

ディアッカのことを話題に上げては、何だか満更でもない口ぶりである。

(どうしたの、一体...)

少し不気味なくらいである。

食事を終えて部屋に戻るとディアッカの留守録が残されていた。

内容は時間があったらデートしないかという誘いだった。

が基本仕事優先なのはディアッカも知っているので、その点に遠慮がある。

にとってそれは有難いような申し訳ないようなそんな気分だ。

『もしもし』

「ごめんなさい、さっき部屋に戻ったの」

『ああ、うん。良いって。てか、今日は帰宅が早いのな』

苦笑してディアッカが返す。

「まあ、たまにはね」

最近、運転免許を取るために仕事の上がりが早いのだ。それはディアッカには話していない。からかわれそうだし、やはり免許を取った後に驚かせたいのだ。

父親にもこのことは話していない。また口うるさく言われるだろうから。

『で、どう?予定としては』

「いいわよ、今度の休日でも」

『マジ?んじゃ、何処行く?』

「じゃあ、ディアッカの学校があるコロニーは?ご案内してくださるのでしょう?」

そう言うと

『お任せくださいませ』

とディアッカが返す。

改まったディアッカの声には噴出す。

ディアッカが迎えに来るといったが、それは時間ロスだとが言って止めた。

って、合理主義だよな』

「あら、いけない?」

内心、心配しながらも何でもないように返す。

『いや。いけないことないけど、やっぱ理系だからかな?』

「関係あるの、それって」

『ない?情緒的なものよりも、結果を重視するって言うか...俺の理系に対するイメージだけど』

「ふーん、そ?」

思わず素っ気無く返してしまったは少し慌てたが

『んじゃ、ウチのコロニーのステーションに迎えに行くから』

とディアッカは特に気にした様子はない。

通話を切っては溜息を吐く。

先日の出来事、ディアッカにキスされてから何とも自分は必要以上に彼を意識しているような気がする。

(子供じゃないのに...)

そうは言っても、圧倒的にそういう経験が不足している自分はその点は子供と言われても否定出来ないのではないだろうか。

その点、ディアッカは経験豊富そうだ。

「何よ...」

思わず拗ねたような声が漏れた。



!」

シャトルでコロニーに着き、到着ゲートをくぐるとディアッカが手を振っている。

「お待たせ」

ふと、ディアッカの唇に自分の視線が行き、慌てて俯く。

「どうした?シャトルに酔った..とか?少し休む??」

心配そうにを覗き込むディアッカに「何でもないわ」とやはり素っ気無く返す。

自己嫌悪に陥りながらも、そんなに気にしてない様子のディアッカの態度には救われる。

「今日はたっぷり時間あるしな。色んなところ行くのと、のんびりするのとどっちが良い?」

「のんびり、かしら?」

「畏まりました」

そう言って駐車場に案内する。

「あ、でも。ディアッカの家はパスね?」

「ああ、うん。今日はお袋いないし。病院に行くっていってたから」

「どこか具合がお悪いの?」

心配そうにが問うとディアッカは首を横に振った。

「知り合いの見舞い。お袋は元気だよ。ピンピンしてる」

ディアッカの言葉には安堵の息を吐いた。

彼の母親と話をしたのは一度だけ。しかし、凄く気の良い人で彼女の作る空間はなんだかホッとすることができた。

「てなわけで、気合の入ってるところ申し訳ないけど、今回はうちには案内できないかな?」

イタズラっぽくそういわれてドキリとした。

気合、は確かに入っていた。避けたい事態だが、強引にそのようにことを運ばれても大丈夫なように、昨晩爪の手入れやいつもより念入りに髪の手入れはしている。

そんな自分を見透かされたみたいで、は凄く居心地が悪かった。


「そういえば、ディアッカ最近何かした?」

「何、って何?」

ディアッカのいうのんびり出来ると言う場所にエレカで向かいながらが問う。

「この間、お父様がディアッカのことを妙に褒めてたのよ。前まで『エルスマンの息子』って言ってたのに、この間は『ディアッカ・エルスマン』って名前を言ってたのよ?」

「へえ」とディアッカは満更でもない相槌を打つ。

「ね、何かあったの?」

「前に言ったじゃん」

(前に言った?何だろう...?)

何を言ったのか心当たりがない。

信号が赤になった。

ブレーキを掛けたディアッカは助手席に体を乗り出しての顔を覗き込む。

「本気になった、って」

挑むようなディアッカの眸にの喉がコクリと鳴る。

そんなの反応にディアッカは愉快そうに笑う。

「な、何よ!」

ムキになるにディアッカは目を細めた。

「言い忘れてたけど。覚悟しとけよ」

自信に満ちた表情のディアッカには思わす視線を逸らした。

クラクションが鳴り、「わっと」とディアッカは慌てて車を走らせる。

目的地に着くまでは窓の外を眺めるフリをして窓に映るディアッカを眺めていた。









桜風
12.7.16


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