Silver2





家に帰ってイザークは改めて今日街頭でという画家に掴まり、突然モデルをさせられた自画像を見た。

モノクロの鏡に映った自分を見ているようだった。

「いや、少し違うか?」

の絵の中の自分は少し表情が柔らかい。

きっとの鉛筆の運びが優しいのだろう。

絵を描いていたときの彼女の表情を思い出してそう思った。

「そういえば...俺は名前を言わなかったな」

自分が名乗っていないことに今更ながら気がつく。

初めは腹立たしかったが、でも、に絵を描かれていた時間もそれなりに心地よかった。

「不思議なやつだったな」

そう呟いたイザークの表情はとても優しかった。


数日後、何となく気になってに会った通りに向かった。

「もし、俺と会った時のように他の奴らからも代金を受け取ってなかったら流石にまずいだろう。俺はそれだけが気になっているんだ。別にまた会いたいとかの描いた絵を見たいとか思っているわけでは...」

何に対しての言い訳か分からない言い訳をしながらイザークは目的地に向かう。

途中、軽く食べられるものを買った。

「客が居なくて腹が空いているかも知れないからな」

誰も聞いていないことをブツブツと呟きながら向かった。

しかし、イザークの想像とは逆で、に絵を描いてもらっている青年がいたし、彼からは料金を貰っていて、そこそこ評判がいい。

何だか、つまらない気分となり、イザークは踵を返した。

自分が勝手に想像して勝手に心配して、そして、勝手に落胆した。

それだけのことだ。


「あ、やっぱり!」

突然腕を掴まれたかと思うと後ろからそんな声がした。

「やっぱりキミか。どうしたの?まあ、ここまで来たんなら寄ってけ!」

そう言ってイザークの都合は一切お構いなしといった風に強引に腕を引く。

イザークも何だか相反するふたつの感情がせめぎあっていたため、結局に引かれるまま足を進めた。

「おいしそうね。いい匂い」

イザークの持っている袋を凝視しながらがそう言った。

図々しいヤツだと思いながらもイザークはそれを少し掲げて

「...食べるか?」

と聞くと

「わぁお!太っ腹じゃない!いいの?遠慮なくお相伴に預かるわよ」

は胸の前に手を組んで喜んだ。

「ああ、好きなだけ食べろ」

そう言って袋ごとに渡した。

「あれ?銀の少年は?要らないの??」

「...誰のことだ?」

「キミのこと」

「俺にも名前がある。イザーク・ジュールだ」

「あら、いい名前ね。ステキよ。でも、私は『銀の少年』って呼ばせてもらうわ」

とあっさり言われてイザークも大仰な溜息を吐きながら

「好きにしろ」

と言った。


が食べている間、イザークはその様子を眺めていた。

彼女はとても表情が豊かだ。

美味しそうにご飯を食べ、楽しそうに道行く人を見ている。

正直、羨ましくもあった。

何せ、自分は幼馴染から

「その眉間の皺、どうにかしたらぁ?」

と言われることもしばしばある。

好きで眉間の皺を作っているわけではない。

勝手に出来るんだ。

しかめっ面と言われようが、出来てしまうものは仕方が無いではないか。

そんなことを考えていると

「ふに〜」

と言いながらが人差し指でイザークの眉間をグリグリと押した。

「何をする!」

「難しいことを考えてないで、イザークにとって楽しいことを見つけなよ。きっと、今よりももっと楽しい毎日を送れるんだから」

そう言って笑うが本当に楽しそうだからきっとそうなのかもしれない。

そう思ったイザークは

「まあ、その忠告。覚えておくさ」

と答えた。






ああ、私もイザ王子の眉間の皺を押してみたい!!
(危険です(笑)

桜風
06.8.13


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