Silver4





ある日、母の付き合いで評議委員のひとりが主催する晩餐会なるものに出席した。

「よ、イザーク」

「ああ。やはりお前も居たんだな、ディアッカ」

「...相変わらずだな」

イザークの愛想の無い反応にディアッカは苦笑した。

こういう場は大抵、子供たちのパートナーを探す場となっている。

だから、評議会以外の財界や軍の高官が招待され、もれなくその子供も招待されるのだ。

そして、イザークはそういうのが大嫌いだ。

いつかは仕方ないと思っているし、そうあるものだと思っているが、取り敢えず、さっさと政略結婚のようなことはしたくない。

今のところ自分に見合うステキな女性がいないと母が厳しいことを言っていた。

大変助かる。

その点、

「お前は楽しそうだな...」

ディアッカを見てイザークは溜息を吐く。

「そうかぁ?」

何だかんだ言っても、ディアッカは愛想が良いからこういう場ではかなり好感を持たれる。

決して自分が好感を持たれたいなんて思っていないが、自分の評価は親の評価へと繋がる。

それなら、好感をもたれた方がいいとイザークは思っている。

が、それと同時にやはりこういう場で愛想を振りまくなんてイヤで仕方が無い。

だから、一通りの挨拶が済んだらこうして会場の端っこで時間をつぶしている。

「そういえば、イザーク」

同じく会場の隅に避難しているディアッカが思い出したように声を掛けてきた。

「何だ?」

「あそこの氏。令嬢が居るらしいけど、凄く綺麗な人らしいぜ」

「...ほお」

大して興味も無い話題である。

ディアッカの目線を辿り氏を探す。

彼は財界トップクラスの人間だ。プラント経済の一端を担っている。

何度か挨拶をしたことがあるし、お互い面識がある。

ふと、氏を見て既視感を覚えた。

それが何か明確に思い出せない。

思い出そうと悩んでいるイザークの隣でディアッカが噂で聞いた氏に関することを話す。

「何か、深窓の令嬢らしく、こういう公の場に出てきたことが無いらしいって。まあ、それは大抵の公の場に出てる俺たちが知らないんだからそれは当たり前で大した情報じゃないけど。でも、凄く綺麗な人らしいぜ」

「公の場に出たことが無いのに何でそんな噂が立つんだ?」

当然の疑問を口にするイザークにディアッカが肩を竦ませながら「さあ?」と答えた。

「何でも、氏の家に招待されたやつがたまたま見かけてそれを言いふらしてるとか。髪は赤みがかった茶色でストレート。瞳の色は鳶色で手足が長く体も細身で、深窓の令嬢に相応しいくらい儚げだったそうだぜ」

一瞬の姿が浮かんだイザークだったが、最後の『深窓の令嬢に相応しいくらい儚げ』という表現でその案は却下した。

どう考えても儚げではない。寧ろしぶとく生きていけるタイプだ。

しかも、彼女は家族はもう居ないと初めて会ったとき言っていたのだ。だから、生活をしていくのに絵を描いている、と。

もし、本当に氏の令嬢ならあんな苦労をしなくても済むのだ。

しかし、気になったイザークはディアッカに聞いてみた。

「その、氏の令嬢の名前をお前は知っているのか?」

「いーや、知らない。何、イザーク興味持ったの?何なら協力してやるぜ?」

「要らない。知らないのなら、それでいい」

どの道きっとではない。

もし、の令嬢なら、あんな自由に生きることなんて叶わない夢のはずだ。


帰るとき、イザークは空を見上げた。

星が瞬いている。

まがい物の星空と言っても、どこか心が落ち着く。

不思議とを思い出していた。

何となく、今日は逢いたかったな、とぼんやり思ってイザークは苦笑をし、家に帰る道を進んだ。






噂に疎い王子と、それに敏感なディアッカ。
そして、イザ王子の令嬢の判断基準。
間違っていないけど、微妙に失礼じゃないかい?(笑)

桜風
06.9.3


ブラウザバックでお戻りください