| 終わる間際というものはとても美しいと評価される。 花は散る間際。 果物は、腐る前が一番甘くて美味しいとも言う。 星は、最後を迎える前に一層輝くと聞く。 ―――では、人は? 人が一層輝くことが出来るのはいつだろうか。 |
| 彼女は夕焼けが好きだった。 夕焼けというものは、夜を迎える前に昼の時間が見せる最後の足掻きだ。だから、美しい。 銃弾が飛び交う中で彼女の目に夕焼けが映る。 でも、特に美しいとは思わない。 人は別なのだ、と納得しつつもその人物に近づいた。とめどなく血が流れているが、まだ息がある。 彼女は嘆息してそのままずるずるとその人を引きずりながらその場を離れ、いつでも避難できる準備に入った。 酷い痛みに目を開ける。 此処がどこか分からない。 「ああ、生きてる?」 なんでもないことのように声を掛けられた。 首を動かすにも体が重い上に激痛が走る。 仕方なく、視線だけを向けてみた。 足が見える。スカート?じゃあ、女性か。 ふっと影が差したかと思うと目の前に整った顔が現れた。 勿体無い、と思う。 彼女の顔の左半分は髪で隠れている。それさえなければ振り向かないものがいないというくらいの美貌を拝むことが出来たかもしれない。少なくとも美人に分類されるはずだ。 どの道、色が薄いとはいえサングラスも掛けているからそれを取ってもらわないと素顔は見れないが... 「生きてる?」 もう一度言われた。 「オレ、死んだんでしょ?此処が天国ってやつ?」 彼は軽くそう言葉を返した。 彼女は深く息を吐き、 「戦争やってる奴が天国にいけるわけないでしょ?図々しいのね」 と呆れたように言い放った。 「ああ、じゃあ地獄か。で、キミが地獄の門番?こんな美人に会えるなら天国でも地獄でもどっちでも良いや」 彼は軽い口調を崩さずにそう言った。 彼女は目を眇め、やがて深い溜息を吐く。私は呆れてますよーと言わんばかりのそれだ。 「名前は、ラスティ・マッケンジーで間違いないわね?17歳?」 彼女がそう言った。 「え。キミってエスパー?あ、あとついでに17歳の前に“ピッチピチの”ってのも付けといて」 否定をせずにラスティはそう答えた。 「ID、見せてもらった。コーディネーターにとって17歳がピッチピチかは甚だ疑問だから付けない」 彼女は律儀にそう返しながらラスティのIDを軽く掲げた。 「で、此処はどこ?」 部屋の中では全く外の様子が分からない。 「キミたちザフトの勢力圏内。一応、宇宙だからね」 「ヘリオポリスは?」 「どっかのゼット・エイ・エフ・ティな組織が地球軍とコロニー内でドンパチしてくれたお陰でヘリオポリスは崩壊。追い出されちゃったわよ」 オレに言われてもなー、と思う半面ラスティはちょっと驚いた。 流石にそれはマズイっしょ... 「で、オーブは何て?」 「ま、『怒ってますよー。何て酷いことしたんですか、ザフトも地球軍も!』って言ってる」 「自分たちが地球軍に加担したのに?」 ラスティの言葉に彼女は苦笑した。 「ま、それは非公式だから。だけどヘリオポリスが崩壊したのは、隠しようのない事実でしょ?やっぱ、此処で騒いでおかないと。コロニーを壊された独立国家としてはね」 そう言って彼女はラスティから離れた。 部屋を出て行こうとしているようだ。 「ね、名前は?教えてくれないと、かわい子ちゃんって呼ぶよ」 「宇宙の藻屑になりたければどうぞ?」 彼女はそう言ってドアを開ける。 「あ、あ!じゃあ、もう1個。何でオレを助けたの?ヘリオポリスを突然襲ったザフトだよ?」 「夕焼け色だったから」 彼女は短く答えて部屋を出て行った。 夕焼け色、と言われて暫く悩んだがいつも鏡で見ていた自分を思い出す。 「うわぁ。親に感謝だな」 ラスティは心底親に感謝しながら呟いた。 |
桜風
08.9.1
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