| ラスティの体が回復した頃、丁度ザフトも地球への降下が本格的に作戦として上げられてきた。 「ギリギリだったわね」とが呟いたのを聞いてラスティは肩を竦める。 それ以上遅かったらザフトにも地球軍にも警戒されただろう。ついでに、落とされたかもしれない。 初めての本物の地球の重力は何だか不思議だった。 ずっと寝ていたせいもあるのだろうが、何だかずっと体が重い。 「もいつもこんな重いの?」 シャトルから降りて歩きながらラスティが声を掛ける。 先を歩いていたは振り返り「失礼な物言いね」と口元を僅かに綻ばせて彼女は応えた。 やはり、故郷に帰ると心が落ち着くんだな、と何となくラスティは安心した。 足を引きずりながら彼女の後を歩き、案内されたのはマンションだ。 意外だな、と思った。 先ほどまでずっと乗っていたシャトルは彼女の家が所有しているものだと聞いていたから、どれだけ凄い邸に案内されるのかと少しだけ期待していたのだ。 「部屋はもうひとつ余ってるか貸してあげる」 はそう言いながら鍵を開けた。 部屋の中はしん、と静まり返っている。 「家族は?オレが居ても大丈夫なの?」 はオーブの成人年齢にはまだ達していない。 たぶん... 名前以外、何を聞いても教えてくれない。 別に困らないけど、知りたいとは思う。 「...親なら、オノゴロから離れた島で悠々自適に暮らしてる。彼らの子供も一緒にね」 少し突き放したような言い様だ。 「仲、悪いの?」 思わず口に出して慌てた。 彼女はついと目を眇めて何も言わず部屋の中に入っていった。 ラスティも慌てて玄関に足を踏み入れる。 「あっちが空いてる部屋。バスルームと、トイレはそこ。で、キッチンね」 軽く彼女は案内して「じゃ、」と自室に入っていった。 「あーあ」とラスティは呟く。 あまり立ち入ったことは聞かないほうがいい。彼女と話をしていたら何となくそう思う。 何と言うか、もの凄く高くて厚い壁で自分を囲っているんだ、彼女は。それで一生懸命自分を守っている。あの辛辣な言葉は誰にも自分に近づけないためのものだ。一生懸命背伸びをしている。そんな感覚だ。 彼女の作った壁を越えようとしたり、壊そうとしたら途端に警戒し始める。 「でも、知りたいって思うのは人の性だしねぇ」 ラスティは呟きながら宛がわれた部屋のドアを開けた。 何もない、がらんとしたその空間は彼女のようだと思った。 このマンションに来る前に服など色々と購入してきたため、それなりに荷物は出来た。 「これから、どうしよう」 流石に、自分と年の変わらない彼女に養ってもらうなんてことだけは避けたい。 「仕事..か」 でも、友達も売りたくない。もの凄い我侭だ。 そういえば、はどうやって生計を立てているのだろう。 彼女のあの言い様だと、親は頼っていないようだ。 だったら、仕事を持っている。 そういえば、彼女が自分を拾ったと言うことは、きっとモルゲンレーテの関係者だ。 そこなら、多少なりとも自分は役に立つかもしれない。 あとで聞いてみよう。 翌日、部屋のドアを止め処なくノックされて仕方なくラスティは起きた。 ドアを開けると出かける様子のが立っている。 「どしたの?」 「仕事に行くから。鍵だけでも渡しておこうと思って」 そう言って寝ぼけたままのラスティの手をとり、ひんやりとした無機質のそれを渡してきた。 「仕事?モルゲンレーテ?」 「そ」とは短く応えた。 「オレも行っていい?」 段々覚醒してきたラスティはそういう。 この言葉には驚いたように眉を上げた。 「行って、何するの?」 「オレも仕事がほしい。に家賃払わないと...」 ラスティが言うと彼女は溜息を吐き 「気にしなくていいよ。第一、ダルいんでしょ?」 昨日、ラスティは重力についてブツブツ文句を垂れていた。 そこを突かれて言葉に詰まったけど、 「オレ、優秀なコーディネーターだから重力にももう慣れたし」 と言った。 「優秀、ね...」とは呟いたが、 「早く準備して。時間がないの」 彼のモルゲンレーテ行きを了承した。 「待ってて」と言ってドアを閉めて着替える。 体が不自由になったから服を着替えるのに少し時間は掛かるけど、は急かさないで待ってくれる。 本当は、凄く優しくて思いやりのある子なんだ。 それを知っている人はどれくらい居るだろう。 少ないといいな、とシャツを羽織ながらほんの少しだけそう思った。 |
桜風
08.9.22
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