The orange sky 5





「...何、これ」

「MS。見たら分かるでしょ?分かりなさい」

緩慢な動きを見せるMSらしきものが動いている。

はこのMSを『M1』と言った。

「でも、これで戦えっていうのは死ねって言うのと同義語でしょ」

「なので、プラントコーディネーターの知識を貸して頂戴って話になるのよ」

察しろと言わんばかりの盛大な溜息を貰った。

「まあ、そういうことなの。OSの開発に時間がかかってね。装備の開発はが色々とやってくれているんだけど。MSのOSは何とも言いがたいのよね。MAとはやはり違うものだから...」

まあ、そうだよなとラスティは納得した。

「機械工学は、得意かしら?」

「中の上くらい、ですかね」

ラスティの言葉にエリカは頷いた。

「じゃあ、OSの開発をお願いするわね。案内するわ」

そう言ってエリカが言い、ラスティは彼女についていった。


数日、モルゲンレーテに通っているとオーブ近海で戦闘が行われているとのニュースが飛び込んできた。

地球軍とザフトだ。

食事中、モニタを見てラスティは思わず声を洩らす。

あれは、モルゲンレーテにあった機体だ。つまり、あれはクルーゼ隊の同期の仲間たちが乗っている。

ラスティの隣で食事を取っていたはチラリとラスティを見た。彼が僅かだが反応した。

勿論、MSを見てもあれがヘリオポリスで強奪されたそれだと気づいている。

「ごちそうさま」と呟いてトレイを所定の場所に返却してはそのまま食堂を後にした。


暫くしては呼び出しを受けた。ラスティも一緒だ。

どうやら、あの戦闘の最中に地球軍艦を回収と言うか、匿うことにしたらしい。

勿論、その艦の中にカガリがいたということもそれなりの要因だが、一番の要因はストライクのパイロットが居るという事だ。

彼はこちらの開発したMSのOSを再構築して動くものにした。『動く』ではなく『戦闘ができる』の方がより正しい。

被弾してボロボロになった艦の修復と物資の補給を条件にそのパイロットにM1のOSの改良を依頼すると言うことだ。

そして、たちはそのサポートをしてくれと言う。

「分かりました」

「...はい」

少し、全く抵抗がないかといえば嘘になる。それでもラスティは頷いた。自分も少しは興味があった。

だって、あのストライクは自分が乗るはずのものだったのだから。

紹介されたMSパイロットを見て驚く。

少年だ。

自分と年の変わらない少年を見てラスティは驚き、少年もまた、少し驚いたようだ。

です」

は短く自己紹介をした。

「あ、キラ・ヤマトです」

「オレは、ラスティ・マッケンジー。よろしく」

お互い自己紹介をし、OSについて話をする。

ストライクのOSは戦闘のたびに色々弄ったため、あまり参考にはならないだろうと言う。

何より、今回の依頼はナチュラルでもスムースに動かして戦闘を展開できるものであることが条件となっている。

キラの提案を聞きながらは唸る。

「得意なのね、プログラミング」

「まあ、少し」

謙遜していう彼に「ふーん」と相槌を打ち、役割分担を決めた。

物資の補給等による滞在であるため、キラたちはそんなに長居が出来ない。だから、分担して時間を短縮した方がいいと言うことだ。

それに、分担していれば引継ぎもしやすい。

エリカがこの3人にチームを組ませたのは年齢が近いからだろうと何となく思った。



モルゲンレーテの敷地内でなら、運転させてあげるとが言ったので、ラスティは敷地内の移動で車を利用するときはハンドルを握っている。

「乗せて」と偶然が声を掛けてきた。

「いいよ」と言って彼女を助手席へ案内する。

「変に慣れてるよね、ラスティって」と呆れたようにがいい、ラスティはニコリと微笑んだ。

車を運転していると視界の端に人影が見えた。

視線を向けて驚き、思わず強くブレーキを踏む。

慣性の法則のお陰でダッシュボードに額を打ち付けそうになったが抗議をしようと顔を上げてラスティを見ると彼は遠くを見ていた。

懐かしそうな、悲しそうな表情だ。

その視線を辿ると数人のモルゲンレーテの作業着を着た少年たちが居た。

何となく、分かった。

「今なら、仲間が連れて帰ってくれるんじゃない?」

の言葉にハッと我に返ったようにラスティが表情を作る。

「何の話?」

「あっさり諦めるお利口さんたちじゃなかったのね。友達?少なくとも、仲間でしょ?」

の言葉にラスティは睫を伏せて微笑む。

「あそこにオレの居場所はないから。置いてよ、こっちに」

きっと、あの柵を超えることは出来ない。

理由は分からない。

もしかしたら今の自分を見られたくないから。

けれども、手放したくないものもこちら側にある。

いつの間にか自分の中で存在が大きくなった。

「出発しまーす」

そう明るく言ってアクセルをゆっくりと踏む。

ふと、を見ると彼女は夕焼けに顔を向けていた。

先ほどよりも速度を落として車を走らせる。

一度、振り返った。

先ほどまで少年たちが居た場所にはもうその姿はなかった。









桜風
08.10.6


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