| キラたちは無事にオーブを後にした。 彼がある程度雛形を作ってくれていたため、後はとラスティだけでも計画したものが作れそうだった。 「ねえ、は?」 作業に没頭しているとの姿が見えない。 周囲のスタッフたちはの所在を聞いて回るラスティに皆首を横に振った。知らないと言う。 別にこれと言って用事があるわけでもないが、そのまま気になって捜し歩くことにした。 「を探しているのか」 ふいに声を掛けられて振り返るとオーブの姫が立っていた。おてんばと言うか、無鉄砲と言うか。 カガリの行動と言動を聞いたとき思わず、「お姫様ってこんなのじゃない!」と心の中で抗議の声を上げた。 「そう。知らないですか?」 一応、雇い主ってことかな?と思いながら丁寧語で応じる。 「たぶん、外だ。第2工場の屋根の上に行ってみろ。足は..大丈夫か?」 「飛んだり跳ねたりしないでいいなら、大丈夫ですよ。ありがとう」 そう言ってラスティはそのまま言われたとおり第2工場へと向かった。 カガリの言ったとおり屋根の上に腰を下ろしたが西の空を見ていた。 「」 声を掛けると彼女は驚いたように振り返った。いつも掛けている色眼鏡を外しており、金色の右目に吸い込まれそうだ。 夜が明けるときの海の色に似ている。 「何で此処に居るの」 「カガリちゃんに聞いた」 本人がいないところではラスティはカガリには『ちゃん』をつける。彼女は『様』っていう感じではない。オーブに来てまだそんなに時間が経っていないからアスハの素晴らしさなんてよく分からないし、それについてはは何も言わないからそのまま好きにしている。 「何であの人が知ってるんだろう」 呟くように言うの隣に座る。左側に。 「ラスティって、何でいつも私の左側?」 「...イヤ?」 彼女が嫌がるなら今度から右側にしようと思っていたら「別に」と返された。 「でも、キラも大変よね。コーディネーターは何でも出来るって勘違いされてさ。実際、優秀だけど、気の毒ね」 不意に彼女が言った。 それについては、ラスティも頷く。出来るから全て背負い込んでいた様子だ。 「...って、コーディネーターだよね?」 今まで何回か聞いたけど、イエスかノーかで返されたことはない。何となく、コーディネーターだろうと言う発言で終わらされている。 「そうよ。一応ね」 「でも。コーディネーターは嫌い..だよね?」 「特別好きというわけではないわね」 彼女はコーディネーターに対して結構皮肉を言う。 「何で?」 これも何度も聞いた。 そのたびに適当に返されていた。が、今回は違った。 「私さ、夕焼けが好きなの」 「うん。だから、オレは助けてもらえたんでしょ?」 ラスティは頷く。 「夕焼けって、昼の時間の最後のあがきなんだよね」 ラスティは首を傾げる。どう返して良いか分からないから彼女の言葉の続きを待った。 「花は散る間際。果物は、腐る前が一番甘くて美味しいっていうじゃない?私はあまり好きじゃないけど。あと、星は最後を迎える前に一層輝くと何かで読んだわ。最期って、本当に綺麗なのかな?凄いのかなって考えるの。でも、ひとつだけ。昼の最後の足掻きはやっぱり綺麗だし、納得できるのよね。たぶん、それって一生懸命だからそう見えるのよ。それであり続けようと一生懸命足掻いているから」 やはりイマイチ分からない。 彼女は徐に自分の顔の半分を隠している前髪を上げた。 その下には光のない瞳が嵌っている。 ラスティは驚いて声が出なかった。 「両親は、ナチュラル。コーディネーターに憧れて私をコーディネーターに。でも、遺伝子操作なんて高いでしょ?だから、それをケチってどこかよく分からない病院で遺伝子を弄ったら、あら不思議。片方ずつ瞳の色が違う子が生まれました。しかも、左目は生まれたときから視力がないときた。 ...見えないの。 親は私の事を見なかった。一度も、私の顔を見て話をしなかった。彼らにとって私は失敗作なのよ。彼らは言ったわ。『あんなに金を掛けて生まれてきたのがコレか。だったら、金を掛けずに自然に丈夫に生まれるナチュラルの方がよほどいい』って」 ラスティの眉間に皺が寄る。 そんなの、のせいじゃない。遺伝子操作をしたドクターの腕もさることながら、コーディネーターの子を望んで思い通りにいかなかったと自分の都合しか考えない親が悪いだろう。 人の親の事を悪く言うのは流石に憚れて、取り敢えず黙っていたが、隣のは苦笑している。 「...は足掻いてるんだ」 ラスティの言葉を彼女は肯定しなかった。が、否定もしない。 「夕焼けって素敵じゃない?」 ああ、は一生懸命足掻いて生きているんだ。 「かっこいいね」 ラスティは頷く。 は満足そうに微笑んだ。 |
桜風
08.10.20
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