The orange sky 7





アークエンジェルがオーブを後にした数日後、とんでもないニュースが飛び込んできた。

地球軍がアラスカの基地を放棄した。

方法は、サイクロプスによる基地の破壊、と同時にそれにより攻め込んできたザフト軍への反撃。

このサイクロプスの爆発によってザフトの主力部隊の大半が消えた。

きっと地球軍の多くの兵たちは、この“作戦”と呼ぶには酷い予定を知らされていない。

知らされずに自分のたちの本拠地を守って、守っているはずの者に殺された。

「やることがえげつないわね」

ソファに座ってテレビを見ていたラスティはの言葉に反応できずに呆然とその映像を眺めていた。

シャコシャコと歯を磨きながらはそんなラスティを少し眺めたが、ペシッと彼の頭を叩いた。

「痛いよ」

頭を押さえながらラスティは見上げてくる。

は無言で部屋の中に掛けている時計を指差した。

もう出勤しなくてはいけない。

ラスティは深く溜息を吐いてテレビを消し、服を着替えるために自室に向かった。

そんな彼の背中を見送っては溜息を吐く。



「でもさ、これ。造ってどうすんの?」

新しく造っている、MSを見上げてラスティが呟く。いや、造っていると言うよりも修理していると言う表現の方が正しい気もする。

「さあ?使うんじゃないの?次はきっと...」

「オーブ、だよね」

が伏せた単語をラスティが口にする。

「ま、そういうこと」

「アスランの親父さんも強硬姿勢に一層磨きがかかってるしね」

昼間のニュースで見た。

今度は報復としてザフトがパナマの地球軍、マスドライバーを破壊したらしい。

「...戦争って、いつまで続けたら気が済むの?」

隣に立つ元軍人に問うてみた。

「上が『やめろ』って言ったら、やめるよ」

さらりと言う。

「上..ねぇ」

が呟く。

、ラスティ」

エリカ・シモンズ主任に名を呼ばれる。

返事をして彼女の元へと向かった。

彼女の口から聞いた言葉にとラスティは顔を見合わせる。

「何で...」

の呟きにエリカは肩を竦めてたちの後方にある機体を見上げた。

「でも、パイロットはやって来たわよ」

まさか、キラの事か?

この機体を修理していたのだからどれだけの損傷があったかなんてのは把握しているつもりだし、機体がそれだけ損傷していると言うことは、中のパイロットだって無事ではすまないはずだ。

「ちゃんとお金を掛けたコーディネーターって、そんなに凄いものなの?」

呟くようにが言う。

「オレ、一応お金を掛けたコーディネーター」

ラスティはそう返した。

まあ、何はともあれ。知っている人物が死んだというのよりはよっぽど嬉しいことだ。

たった数日言葉を交わしただけの少年だが、生きていたと聞けば嬉しくなるものだな、とは自分の気持ちに少しだけ戸惑いを覚えた。


再会したキラはたちを見て少しだけ口元を緩めて「久しぶり..かな?」と言った。

が、たちはそれに応えられなかった。

キラの纏う雰囲気が以前のものと全く違うものになっていたのだ。

「ストライク、直してくれてたんだね」

呆然としていたたちを気にすることなくキラが話を続ける。

「あ、うん。主任が、ね。元々、ウチで造ったものだし...」

「そうだったね」とキラは苦笑して応えた。

「ねえ、キラ」とラスティが声を掛ける。

キラは「ん?」と言ってラスティに視線を向けた。

「何があったの?全然別人」

ラスティの言葉にキラは困ったような表情を浮かべて、

「ただ、決めただけだよ。迷わないって」

そう言ったキラの瞳は言葉の通り揺るぎないものだった。

思わずの頬が緩む。

「でも、も何だか変わったね」

ふいにそんな事を言われては驚いてラスティを見る。

「言ったらダメだって。もー!」

隣に居たラスティが抗議の声を上げる。

「ホント?」

が聞くと渋々と言った風にラスティは頷いた。

「僕、悪いこと言ったのかな?」

ラスティの拗ね具合が普通のそれと違ったため、キラは少し不安になった。

「だって、ほら。ってば素直じゃないから変わったとか言われたら前みたいになるじゃん?せっかく可愛くなってきたのに」

ラスティが言ってを見る。

彼女はいつものように目を眇め、

「ナマイキよ、ラスティ」

と言った。

「年下のクセに」という言葉も付け加える。

の言葉にラスティは目をぱちくりとした。もう結構長い間、一緒に居たのにその情報は初めて耳にする。

ラスティの表情を見てはニッと笑った。

とても楽しそうに、どこか勝ち誇ったように。









桜風
08.10.27


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