The orange sky 9





コロニーメンデルに潜伏していると、父と話をしてくると言って出て行ったアスランがピンクの戦艦に乗って戻ってきた。

彼がプラントに一度帰国すると言ったとき、ディアッカもラスティも「そうか」と反応は薄かった。

しかし、彼が戻ってきたことを喜んでいるのは目に見えて分かった。

べたべた仲良しではなく、それでも彼らは友達だと言うのがよく分かる。客観的に見て何となく微笑ましいと思いながらは3人が一緒に居る様子を目にしていた。


メンデルに潜伏中に一応地球に居たときにOSの仕様は宇宙用に変えたものの、その確認作業を進めていた。

いつ戦闘になるか分からない。

オーブは地球軍と敵対しているし、ザフトの側についたわけでもない。援軍は全くない、そんな状況だ。

とラスティはそれぞれ分担して作業に当たっていた。

「あんま無茶すんなよ」

ラスティが食事をしているとディアッカに声を掛けられた。ディアッカはアークエンジェルに詰めているが、時々クサナギにやってくるときもある。

「はは、大丈夫だよ。オレってゴキブリ並みの生命力だから」

ガチャン、と誰かがフォークを取り落とした。

何となく食堂内の空気が悪くなった気がしてラスティは周囲を見渡す。

目の前に座ったディアッカも何だか物言いたそうな表情だ。

「え、何?ダメなの??」

「や。つうか...ラスティ、食事中にそれはないかなって...」

「え、何で?ゴキブリってそんなにダメなの?」

「言うなって!...というか、ソレ並みの生命力って自分で言うなよ」

呆れたようにディアッカが言った。

「いや、最初に言われたんだけど」

、とラスティが言い、ディアッカは彼女を思い出して「ああー...」と頷いた。

何か、言いそう...

「で、はソレを何て言ったんだ?」

投げやりにディアッカが問うと「ゴキブリ?」とラスティが返す。

だから、口に出すな...!

「えーと、確か。もの凄くすばやくて飛べて。ソレを見たらみんな騒ぐって。『ラスティの好きなMSみたいね』って。速くて飛べてみんな騒ぐから。え、何?そんな格好の悪い虫なの??」

「後で辞書引いとけよ。取り敢えず、その認識なんだか間違ってるから。つうか、見たこと無いのか?ラスティは」

ディアッカが話し掛けている最中だというのにも拘らず、ラスティは持っていた電子辞書を引いた。

そして、固まる。

「コレって、『タローさん』じゃん!!」

「だから..!...え?タローさん?」

ディアッカが聞き返すと

「そう。ウチではコレが出てきたら『タローさん』って呼んでる。え、『タローさん』って学名じゃなかったんだ?え、ちょ...!!!」

トレイを置き去りにしてラスティは立ち上がり、食堂を後にした。

きっとに文句でも言いに行ったのだろう。

ディアッカは溜息を吐きながらラスティが置き去りにしていったトレイを返却口に置いて食堂を後にした。


ドックに向かったラスティは周囲を見渡す。

だが、此処にはの姿がない。

「ねえ、は?」

メカニックに聞くとエターナルの方に居ると言う。ラスティは許可を得てそちらに向かった。



エターナルのドックにはザフトの最新鋭の機体が並んでおり、その足元にとアスラン、そしてキラが居た。

!」

名前を呼ばれて振り返るとラスティが突進してくる。無重力とは何とも便利だな、と思いながらそれを避けた。

慌ててアスランが手を伸ばして行き過ぎそうになったラスティを捕まえる。

「避けんなよー」

「面倒くさいことになりそうだったから」

一言そう言ってはキラと今話していた続きを話す。

キラは、いいのかな、という表情を浮かべたがの話に付き合った。

「無視しないでくださーい」

と言いながらラスティが2人の間に割り込み、は大仰に溜息を吐いた。

「何」と一応義理で聞いてみると

「ゴキブリってタローさんじゃないか!」

と怒られた。

「誰、タローさんって...」

呆れながらが聞くと先ほど辞書で引いたそれと自分の家でのその対応を口にして説明する。

「ああ、そうよ。プラントにはいないんじゃないの?知らないようだったから、さすが、プラント純粋培養って思ったんだけど...」

「いるよ!てか、全然MSじゃないじゃん!!」

何でアレがMSって話になっているんだろう...?

アスランとキラは顔見合わせて首を傾げた。

ちょっとムキになって抗議をするラスティに対して冷静に突っ込みを入れながらのらりくらりと話を逸らす

その様子をアスランとキラは苦笑しながら眺めていた。何だか、姉弟みたいだ。


そんなひと時の休息とも言える時間はやがてかつて経験したことのないくらい壮絶な戦争の終結に向かった。

友が傷つき、沢山の人が宇宙に散っていく。

ラスティの知っている人物も沢山居たようで、時々彼はこっそりとザフトの敬礼を宇宙に向けていたし、はそれを目にしたときは見ない振りをしてその場を去るようにしていた。



やがて、長くて不実とも思われる戦争も終わる。

は遠くに見える地球を目にして溜息を吐いた。

―――近々、別れが待っている。









桜風
08.11.10


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