Polaris 1





C.E.70

遺伝子操作を行った人類であるコーディネーターの住むプラントと遺伝子操作を行わない人類であるナチュラルの住む地球との間で戦争が行われている。

お互いがお互いを認めず、武器を取り、排除しようとする世界。

地球の国家の中にはコーディネーター、ナチュラルの両方を認め受け入れているところもあり、プラントの中でもナチュラルとの共存を謳うもの達もいるが、それは本当にごく僅かで、世界は二分されていた。


そんな中、プラントには姫と呼ばれる人物が2人いた。

一方は笑顔が優しい、ピンク色の髪をしたラクス・クライン。

そして、もう一方は燃えるような紅い瞳が印象的な・クライン。

彼女たちは仲の良い姉妹であり、対照的な象徴となっていた。

人々の心を癒し、戦場にすら安らぎを与える平和の歌姫、ラクス。

自ら兵士たちの士気を上げるべく戦場へ赴き、舞を舞う戦姫、

彼女たちは供に、プラントになくてはならない存在だった。



「お姉さま」

玄関ホールで名を呼ばれて振り返る。

心配顔の妹が胸の前で手を組んで自分を見上げている。

「どうしたの?」

「また、戦場へ...」

誰が言ったのだろう。

心配を掛けるといけないから言わないように口止めしていたというのに...

「すぐに戻るわよ。心配しないで。今回は月基地だし」

が笑顔でそういうが、ラクスの表情は冴えない。

「そういえば、午後からアスランが来るんでしょう?何か、別任務でプラントに帰ってきてついでに休暇って。イザークたちが聞いたら五月蝿そうね」

笑いながら言うに「ええ...」と未だ笑顔を見せずラクスは頷いた。

「あなたは希望の象徴よ。沈んだ顔をしていたら皆が不安になるわ。あなたは、笑顔でいることもお仕事なんだから。因みに、『皆』てのにわたしも入っているんだけど?」

顔を覗きこんでが言う。

「はい。...いってらっしゃいませ」

ラクスは笑顔を浮かべてを送り出した。

ラクスの少し後ろには父のシーゲルがいる。

「行って参ります」

必要のない、ザフトの敬礼をしては邸を後にした。



は戦争に賛成をしているわけではない。

ナチュラルを憎いと思う気持ちはあるが、ナチュラル全てを憎いかと聞かれたら『NO』だ。

憎いのは引き金を引いている兵士。

いや、それすら憎いのか分からない。

ただ、死んでほしくない人物がいる。だから、自分は舞い続ける。

それが、父親..シーゲル・クラインに対する恩返しだと思っているから。




様」

名前を呼ばれて我に返った。

「ええ、そうね」

シャトルが月基地に着陸した。

月は、プラントを守る要だ。

シャトルから降りるとザフトの兵士たちが敬礼してで迎えてくれている。

も敬礼を返しながら兵士たちが両脇に並ぶ廊下を歩いた。

ふと、視界に知った人物が入る。

彼らもが気づいたことに気づいたようだ。

ひとりは手をヒラヒラと振っており、ひとりは人差し指と中指を立てて前方に動かす。

律儀に敬礼をしたままニコリと微笑む彼は少し背が低く、人垣の隙間から少し顔が見えるだけだ。そして、相変わらず不機嫌な表情を浮かべている彼は敬礼をしたまま、ずっとの姿を目で追っていた。

手を振り返したい衝動に駆られつつ、それでもいつものように凛とした表情を浮かべて敬礼を返しながら彼らの前を通過した。


まず通されたのは司令室だ。

司令室で、この月基地の司令官と面会する。

「ゆっくりしていってください、戦姫殿」

「ええ、ありがとうございます」

を見る司令官の目は侮蔑の感情を孕んでいる。

それは、ザフト内で流れる噂のお陰だろう。これは、軍の中でも上級の、艦長や隊長くらいしかしらないことだ。

勿論、司令官だったら耳にしたことがあるのだろう。

しかし、この司令官はまともなのだな...

はそんな事を思いながら司令室を後にした。









桜風
09.11.23


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