Polaris 4





は、ここの次は何処?」

話を逸らさんばかりに、いや、本当にそれが目的でラスティが話題を振った。

「今回は、此処だけ。皆と一緒に帰るんだって。で、帰ったら評議会関係とザフト関係のパーティがあるよ。それが終わったら、地球に降りるかもしれないって言ってたなー」

思い出すように言う

「地球、ですか?」

と驚いた声でニコルが返す。

「うん、そうみたい。でも、初めてじゃないからね」

軽く返すに彼らはそれぞれ心配そうな表情を浮かべている。

「あ、そうそう。イザークの婚約パーティもあるんだってね」

「...何だと?」

イザークが返す。

「聞いてないの?」

驚いたようには聞き返した。

「ああ、母上から連絡は来ていない。いつだ?」

「えーと、クルーゼ隊が戻って3日後とか何とか。ゴメン、しっかり記憶してない。けど、お父様がそう仰っていたわよ」

「何で主役のイザークが知らないんだろうねー」

への差し入れとして持ってこられたクッキーに手を伸ばしながらラスティが呟く。

「隊長に聞いてみたら?」

「貴様はアホか。聞けるわけないだろうが」

不機嫌に返すイザークにラスティは肩を竦め、ポリポリとクッキーを頬張る。

「紅茶のお替りいる?」と言うに「いるー」とラスティが紙コップを差し出す。

は、いつまでプラントに?」

ニコルが声を掛ける。

紅茶の準備をしながら振り返り、「えーと、2週間くらいだったかなー」と返した。

「じゃあ、コンサート開くので来てくださいね」

ニコルの言葉に「ぜひ!」とは笑いながら返す。


ラスティが2杯目の紅茶を飲み終わり、彼らはの部屋を後にした。

「まあ、そうだよな。噂、だよな」

しかし、何故そんな噂が広まるのだろうか。

考えても仕方のないことなのに、イザークの頭の中でその疑問符が消えない。

「イザーク?」

何だ、と返そうとしてごん、と素敵な音が鳴った。

「ぶつかるぞ?」

「そういうことは早く言え!」

額を押さえながらイザークは遅い忠告をくれたディアッカを怒鳴った。

ディアッカは肩を竦め、「はいはい、ゴメンなー」と返す。

ふと、ポケットに手が当たり、違和感を覚えた。

「先に戻ってろ」

「どーしたー?」

ラスティの言葉に「忘れ物だ」と返して駆けていった。

「忘れ物、ねぇ...」

遠ざかるイザークの背を暫く見送って彼らは自室へと戻っていった。


、入るぞ」

そう言って部屋に入ると何処かの隊の隊長がいた。

彼はを組み敷いていた。彼女の衣服も乱れている。

「何を、なさっておられるのでしょうか」

冷たい声でイザークが問う。

「気を利かせろ」

「何を、なさっているのですか」

もう一度問う。

今彼に銃を渡したら躊躇いもなく引き金を引きかねない、そんな雰囲気に隊長も多少なりともたじろぐ。

から離れろ」

イザークの声に隊長はゆっくりとから離れる。

イザークが一歩近づけば、隊長はイザークから距離を取りながらから離れる。

やがて、駆け出して部屋から出て行った。


「助かりましたよー」

のんびりと言うにイザークは一気にキレた。

「何をそんなのほほんとしている!俺が偶々戻ってきたから良かったものを、戻ってこなかったらどうなってたと思っているんだ!!」

そう言って上着を脱いで彼女に投げた。

「ありがと」と呟き、はそれに腕を通して着替えの入っているバッグに向かう。

「いつもなのか」

に背を向けてイザークが言う。

「いつも、じゃないけど。ああいうのは居るね。だから、噂が立つんだろうけど...」

の声が震えている。

「今まで、どうしてたんだ」

「追い返してた」

本当か、と聞きかけて口を噤む。

本当ではないといわれたら、自分はどうなるか分からない。

「コーディネーターは生殖能力が著しく低いからね」

「そういう問題ではないだろう!」

思わず振り返ってイザークが怒鳴りつける。

「うん、わたしもそう思う」

俯いたまま、自分の体を抱きしめてはそう言った。

ポタポタと床に雫が落ちる。

イザークは言葉を捜し、結局見つからず「すまない」と呟く。

「ううん、心配してくれてありがとう。そういえば、何で戻ってきたの?」

着替え終わったはイザークに上着を返す。

袖に腕を通しながら「忘れ物をしたんだ」と言い、先ほど自分が座っていた椅子の下を覗きこんだ。

「何?」と一緒に覗き込んだが聞き、「ああ、あった」とイザークは手を伸ばす。

「あれ、それって...」

驚いたようには呟く。

「時間があるときにでも、新しいの作ってくれ。流石に使い込んだ感が出てきてるだろう?」

それは刺繍の入ったハンカチだ。

イザークがザフトに入ると決めた頃、の家に遊びに来ていたとき、ちょうど彼女が刺繍をしており、イザークがそれを譲ってくれと言ったのだ。

その当時はまだ戦姫と呼ばれておらず、更に刺繍などに時間を割くことが出来たから結構凝ったものも作れた。

しかし、今は舞う時間ばかりで、それ以外は中々時間が割けない。

「いやぁ、もう最近全然してないから腕が鈍って鈍って...」

「駄目か?」

イザークにしては大変珍しく、遠慮がちにそういうものだから

「時間が掛かって良いなら。移動とかの時間でちびちびと」

と了承してしまった。

「それでいい。ありがとう」

素直に礼を言うイザークには苦笑した。さっき、もの凄く怒られたのになー...

「何が良いの?」と聞くに「星」とイザークが短く応える。

「メルヘンねー」

の言葉に「やかましい」と返してイザークはそっぽを向く。

星、か。

どんなデザインのものにしようか...

少しだけ、楽しみが出来た。










桜風
09.12.14


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