Polaris 10





は後ろ手に手を組んで空を見上げた。

今日は快晴の日だ。青い空がとても気持ちがいい。

「ねえ、まだー?待ちくたびれましたー」

声を掛ける。

「ちょっと待ってろって。だから、オレ!な?お前この間もエスコートしただろうが!!」

「この間っていつさ!そんな昔は時効だって!!」

「ばっか!この間って、前の休暇んときだって。お前バカじゃないんだから」

「オレ、バカでいいから今回ものエスコートはオレ!」

「お前、今『も』って言ったぞ。覚えてんじゃねぇか!!」

さっきからエンドレスでこんな会話が続いている。

もう聞き飽きた。

「じゃあ、もうさ。じゃんけんにしたら?」

の言葉にピタリと口論が収まった。

「よし、それにしよう。ナイス、!」

「運も実力のうち。それに、洞察力だもんな、じゃんけんって」

...確率だよ。

心の中でそう思いながらはもう一度空を見上げた。

あー、高いところで鳥が飛んでいる。いいなー...


「何してるんだ?」

不意に声を掛けられて振り返る。

婚約者の・ラ・クルーゼと供にイザークがいた。

「エスコート、どちらがしてくださるかという話です。正直、どちらでも良いのですが...ごきげんよう、様」

苦笑しながらが言い、イザークの婚約者に挨拶をした。余所行きの顔だ。

イザークの婚約者は少し不機嫌に「ごきげんよう」と返したが、と目を合わせない。

「で、じゃんけんか」

イザークは深く溜息を吐いた。

ふと、の耳のピアスが目に入って自然と口元が綻ぶ。

「イザーク様?」

すぐ横の婚約者に名前を呼ばれてイザークはハッとなる。

「え?ああ、そうですね。先に入っているぞ」

「わたくし、いつ入れるんでしょうね」

少し遠い目をしてが言う。

「じゃあ、私と入ろうか?」

声を掛けてきたのは父だった。

「あら、お父様。今日はご用事があると...」

「早くに終わってね。ユーリにも是非にといわれていたし、来てみたら...」

そう言って奇跡的なあいこを繰り返しているディアッカたちに呆れながら目を遣る。

「では、お父様。よろしいですか?」

そういうとシーゲルは腕を出す。

はその腕にそっと手を添えて会場へと入っていった。


「おい」とイザークが声を掛ける。

「何だよ、邪魔すんな!」

ラスティが鬼気迫る表情でイザークを邪険に扱う。

はもういないぞ」

「「へ!?」」

2人の声が重なった。

「シーゲル殿がいらっしゃって2人で会場に入った。全く、貴様らはアホか」

「うるさいなー!イザークは早く嬢と一緒に会場に入れよ!!」

子供のようにそう言うラスティに肩を竦めて「貴様に言われんでもそうする」と返して彼女と供に会場へと入っていった。

「何でこうなっちゃうんだろうねー」

余りに熱戦を繰り返していたので、ちょっと暑い。パタパタと手で扇ぎながらラスティが零す。

「まあ、なー」

会場に入っていくイザークの背を見送りながらディアッカが同意した。

何をやってるんだろう、自分たちは。

「何で『遺伝子による婚姻統制』なんだろう」

「言うなって」

「オレ、には幸せになってもらいたいよ」

ポツリと言うラスティにディアッカは溜息をつく。

「オレもだよ。だから、オレは引き金引いてるんだ。のいるこのプラントを守りたくて。そのつもりで...ニコルだって、には幸せになってほしいって言ってた。同じだよ」

ディアッカはそう返した。

「イザークだって、の事好きじゃん」

「言うなよ、あいつには」

周りが見たらそうだと分かる。それでも、イザークにそれは許されない。

だって」

「言うなって!それ以上は...」

ディアッカが苛立たしげに止めた。

「ディアッカだって、そうだろう?」

言われてディアッカは眉を顰めた。他人に指摘されたくない事実だ。

「人の事言えないだろう、ラスティは」

「オレたち、バカだよね」

「否定しないけどな。でも、いちばんのバカは...」

暑かったため緩めたネクタイを締めなおしてディアッカは会場へと足を向けた。

同じくラスティも会場へ足を向けながらネクタイを締めなおす。

「イザークのバーカ」

ラスティが呟いた。

悔しいなーという気持ちを込めてそう呟いた。









桜風
10.1.25


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