| が地球に降りてから数日というもの、イザークは家に篭っていた。 見送りに行こうしたが、結局ステーションへは行けなかった。 ラスティが言った言葉を思い出したのだ。 その通りだと思った。 けど、彼女に言った言葉も心からの言葉だ。 奇跡的に、大切にしてくれる相手かもしれない。 「...奇跡的に、って何だよ」 自嘲の笑みを浮かべて呟いた。 イザークだって、の向かう場所がどういうところかくらいは想像できる。 だが、自分ではどうしようもないことなのだ。 そう思ってずっと押さえてきていた。 いい加減、家で腐っていると家のものが心配するから少し散歩に出かけた。 久しぶりの外の空気は、やはり何だか味気ない。 家に帰ると客があった。 「様がいらっしゃっています」 ああ、そうか。約束..してたか? あれ以来、彼女と会うのすら億劫だった。 ただ、母が彼女のとの婚約を喜んでいる手前、それなりでなくてはならないのだろうと諦めている。 彼女は母と話をしているらしい。 部屋に向かった。 ドアをノックしようとしたところで、その手が止まる。 部屋の中から「」という名前が聞こえたのだ。 「でも、には少し気の毒だったわ...」 母がそう言った。 「いいえ、そんなことありませんわよ。あの女ならきっとナチュラル相手でも男を誑かすことができますわ。わたくし、イザーク様がその毒牙に掛かるんじゃないかって冷や冷やしておりましたもの」 の言葉にギリと奥歯を噛んだ。 誑かすとは何だ!毒牙って何だ...! 「パトリックの説得には、少し骨が折れたけど。でも、最終的には彼も納得して議題に上げてくれたし。パトリックの発言にはかなり説得力があるものね。カリスマかしらね」 議題、とは何だろう。 「戦姫なんて戦争の象徴ですからこのプラントに置いておく必要はありません。それに、あの女がいなくなってもラクス・クラインがいればまた戦争は出来ますわ」 「最初、あなたにその話を持ち出されたときには驚いたけど、地球軍もすっかり騙されてくれて...ホント、あなたのお陰よ。この戦争に勝つのは我々コーディネーターよ」 つまり、どういうことだ? を売ったのは..母だというのか。 あの女に唆されて、最高評議会の議題に上げ、プラントの意志としてを地球軍に放り込んだ。 を、スケープゴートにしたということか。 「母上」とイザークが扉を開ける。 「イザーク様!」とは立ち上がって、イザークの表情を見た途端短い悲鳴を上げる。 「あなたが、を売ったのですか。母上」 低く、温度のない声にエザリアも言葉を失う。 「イザーク、あなたのために...」 「俺は、一度もそんなことを頼んだ覚えはありません」 「でも、戦争が長引けばあなただって危険な目に遭うでしょう?下手をすれば、命だって...」 「それも全て覚悟の上です!俺は、俺は..いつまでもあなたに守ってもらわなくてはいけない子供ではありません。俺は、故郷を...プラントを守るために志願したんです」 ふと記憶が甦る。 ザフトに入るのを躊躇っていたときに会いに行った。 「話がある」と言ったら「海に行こう」といわれてそのまま2人で海に行った。 パシャパシャと水を足で蹴りながらは笑っていた。 彼女は笑顔で「イザークはいつの間にかたくさんのものを守れるようになったのね」と言った。 ああ、そうか。守れるようになった。守りたいと思っているんだ。 だから、ザフトに入った。 それなのに...結局守れなかったじゃないか。 「イザーク...」 少し怯えたような声で母が声を掛けてくる。 イザークはそれに応えず背を向けて部屋を後にした。 残されたエザリアは呆然とイザークが出て行ったドアを眺めていた。 そして、。 もう、どうしようもない。何もできることはないというのに... 彼女は薄く笑みを浮かべてイザークの出て行ったドアを見詰めていた。 |
桜風
10.2.22
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