Polaris 22





「さて、」と言いながらソファに腰掛けたバルトフェルドが話を切り出す。

「今の報告なのだが...先ほど君たちの乗っていた艦が揺れたといっていたね」

たちはそれぞれ頷いた。

「アラスカを放棄したそうだ、地球軍が」

「アラスカだと!?」

イザークが声を上げる。

「確か、地球軍本部ですか。ジョシュア」

「ああ、そうだ。放棄、といっても普通に捨てたのではなく..サイクロプスは、知っているかね?」

が考える。聞いたことがあるような気がする。

何だったか...

「原理としては電子レンジだよ」

ディアッカが教えてくれた。

「まあ、そういう感じだな。順に話そう」

バルトフェルドはコーヒーを一口飲んで口を開いた。


プラントでテロがあった。

それは、小規模のもので抑えた。

テロリストは全員自害。誰が手引きして、どうやって潜り込んだのかわからないままこの件はひとまず置かれた。

そして、終戦と称して一度銃を収めたあとに極秘で進めていた作戦。それが、地球軍本部への総攻撃。

これは、隊長でも知るものは少なかったはずだ。

実際、地球駐留軍であった自分も知らなかった情報だという。

しかし、地球軍にはその情報が漏れていたらしい。漏れていたと考えるべきだろう。これは憶測だが、おそらく間違いない。

地球軍側は、およそ4割程度の兵士をアラスカに残して主力部隊は月とパナマへと避難させた。

残された兵たちは、現上層部にとっては役に立たない者や邪魔になりそうな者たちばかりだったのだろう。

守れと命じられ、誰も居ない本部を守り通した結果捨てられた。

「では、ザフトは...」

「まあ、こちらも主戦力が8割がたやられたらしいね。うちは、運がよかった..というべきか。少し前からこちらで別のテロ..ではないな。レジスタンスの動きが活発になったからね。それを警戒して残らざるを得なかったという状況だったから、今回の作戦部隊に組み込まれなかったのだろうね」

まだ、地球をあきらめたわけではないということだったのだ。

「ところで、。君はどうやったら戦争は終わると思うかね?」

「今の方法では終わらないでしょう。でも、別の方法をとったとして..再び開戦した現時点では難しいでしょうね。それに、戦争を煽ってる人が居ますから。スポーツみたいに制限時間があれば強制的にでも終わるでしょうけど...」

「ルールはあってないようなものだがね、戦争は」

そういえばそうだ、とは納得した。

宣戦布告をせずにアラスカ総攻撃。

まったく、プラントは荒れる一方だな...

「次はパナマだ。プラントのほうも躍起になっている」

「だろうねー」

口調は軽いが、ラスティの瞳は怒りを表している。



「さて、もうひとつの悪い情報だ」

バルトフェルドが話を変えた。

話を変えても、悪い情報。皆の表情は暗くなる。

「シーゲル・クラインとラクス・クラインが行方不明だ」

「行方、不明ですか?」

が聞き返した。

この部屋にいる全員が気遣わしげな表情をに向ける。

「ああ、行方不明だ」

「それは、朗報でしょう」

「は!?」

の言葉にディアッカが声を上げた。

「何で?」

「だって、死んだという情報が来ていないんでしょう?」

そう言ってバルトフェルドを見た。彼は頷く。

「たぶん、今回の情報漏えいについて責任を擦り付けられるのは父です。娘の安全を保障させるために、プラントを売ったとか何とかで。一番楽でしょう?責任を取らせるのはその場に居なかった者で、殺してしまえばそれで解決するのだから」

「それは、そうだが...」

仲間意識の強いコーディネーターがそんなことを簡単に許すだろうか...

「今回、地球に降りてきていた議員たちを覚えている?」

がイザークたちを見た。

彼らは頷いた。

「穏健派..『クライン派』って呼ばれているみたいだけど。彼らばかり、って気がついた?中立でも穏健派よりの人とか」

ディアッカとイザークは顔を見合わせた。

「ニコルのお父さんは、国防委員会のほうで忙しかったか...」

「僕がテロの可能性を示していたから何か理由を作ってプラントに残ったのかもしれません」

なるほど、とは頷く。

「評議会の運営を滞りなく進めるのに、ちょっと邪魔な人たちだよね。勿論、穏健派全員を地球へってのはあからさま過ぎてまずいだろうから多少プラントに残ってるけど...シーゲル・クラインの行方を知っている者、スパイの手助けをした疑いみたいなので監禁されるのも時間の問題でしょうね」

「と、言うことは...」

ラスティが呟く。

「おそらく、近々プラント中に父が裏切りもだという演説がされるだろうと思います。最高評議会議長は空席にするわけにはいかないので、暫定的にパトリック・ザラが就くでしょう。何せ、残っている議員たちは彼を支持しているのですから」

突然、天秤が傾いた。

プラントの中で微妙なバランスをとっていたそれは、戦争という方に大きく。

「それに、お父様の潜伏先には少し思い当たるところがあります」

が言う。

全員が驚いてを見た。

「向こうが受け入れてくれるか分かりませんが、古い友人が地球にいると言っていましたから」

「...それは、どこかね?」

バルトフェルドが問う。

「オーブです」

の言葉に全員が息を呑んだ。









桜風
10.4.19


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