| イザークが出て行った部屋の中はとウズミだけになった。 「彼は、あなたのことを知っているのですか?」 は首を振る。 「そうですか...しかし、今回のを知ったときには私が君を引き取ればよかったと思ったよ」 ウズミはそう言って寂しそうな笑顔を浮かべた。 「何をおっしゃるんですか。ウズミ様はわたしから『シーゲル・クライン』という父を奪うおつもりですか?」 少しおどけたようにが言う。 「いやいや、そう言うつもりはないのだがね」 「選べるものはすべて自分で選んだつもりですし、後悔していませんよ。『戦姫』も、今回の政略結婚も」 の言葉にウズミは目を細める。 「先ほどの少年は、『イザーク・ジュール』と言ったかね」 「言いましたねぇ」 ウズミが言いたいことを察したは笑いながら頷いた。 「では、彼が...君のパートナーか」 「でも、恋は遺伝子でするものではないと思うんですけどね」 の言葉にウズミは同意する。 「しかし、種の存続だろう?コーディネーターの婚姻統制というものは」 「ロマンがないですよねぇ」 「遺伝子が、所謂運命の赤い糸だろう?ロマンじゃないか」 「科学的根拠がある時点でロマンじゃないと思うんですけど...」 の言葉に確かに、とウズミは頷いた。 「しかし、」と言って笑う。 は不思議そうにウズミを見た。 「半年以上は前だったとは思うが...『は双子だったか?』とシーゲルから連絡が来たときには驚いたな。久方の連絡でそれだけはないだろう?とな」 「あー...申し訳ありませんでした」とは恐縮する。 イザークが婚約をすると聞いてシーゲルは首を傾げたのだ。 以前、調べたところによるとの遺伝子はイザークのそれと対になっていた。 はそれを知らされたが、時期が少し悪かった。 が『戦姫』となった時期と重なっていたし、イザークもザフトに入ろうとしていた。 だから、情勢が落ち着いてからでも良いのではないかと父に話して父も納得した。『対』というのだから、組み合わせはひとつしかないのだから。 それなのに、イザークは対になる遺伝子を持つ女の子と婚約した。 父は驚いた。 は一卵性双生児ではなかったはずだ、と。 しかし、一応のことをよく知る別の人物に聞いてみるといって確認してくれたのだが、確認してもやはり、は双子ではなかった。 では、なぜだろう... 父はそれを調べようとしてくれたがが止めた。 遺伝子が対であっても、子供ができるとは限らない。イザークが彼女と婚約して、そして幸せならそれで良いではないか、と。 少し納得いかないような表情を浮かべた父は最後には納得してくれた。 「明日の定期便の空き状況はどうなっていますか?」 「今は、空きは多いだろう。あとで調べておくように言っておこう。世界情勢がいまいち見えていない国民が多いだろうからそんなに利用は集中していないと思うが...」 「見せていないのでしょう?余計な心配になるかもしれない、空は逆に危ないかもしれない。混乱を招くようなことは得策ではないですからね」 の言葉にウズミは頷き、 「しかし、最終的にはプラントにも難民として受け入れてもらうように要請することになるだろうがね」 と続けた。 戦争が始まったときの話をしている自分が不思議だった。 「ヘリオポリスに移住するよりも、たぶんプラントのほうが安全でしょうね。ただ、オーブの技術の流出は覚悟する必要はありますけど...」 の言葉にウズミは頷いた。 そうならないようにするのがこれからの自分の大仕事だ。 「ああ、そうそう。私にも娘が居るのだよ」 「カガリさん、ですよね?」 「時間があったら話をしてほしい。あの子はどうも世界が分かっていない」 「わたしもあまり分かっているとは思えませんが...」 が言うとウズミは首を横に振る。 「あの子は、本当に視野が狭い。少し別の考えを持つ同年代と話をしたほうがいいだろう」 ウズミの言葉に、は頷いた。自分も少し話しをしてみたい。 同年代の女の子といえば、普段話す機会があるのはかなり浮世離れした印象のある妹くらいだ。 少し、浮世離れしていない人物との会話も刺激があっていいだろう。 |
桜風
10.5.17
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