Polaris 32





やっぱりな、とは思った。

先ほどアスランと出会った。偶然だが、それは自分にとっては幸運だ。

カフェに入って落ち着いて話ができる体勢をとった。

丁度定時連絡の少し前だったのが本当に幸運だと思う。

イザークがアイシャとの定時連絡を入れるために席を立った。

「正直に答えて」

今話していたことを無理やり遮ってが言う。

「監禁されているのはエザリアおば様だけね?」

アスランは驚いて目を見開いた。

「マクスウェル議員も、タッドおじ様もユーリおじ様も自由なのよね?」

の言葉にアスランは頷いた。

そのとおりだ。

息子たちが同じように裏切ったのになぜかイザークの母だけが拘束されている。

「なぜ?」

「タッドおじ様は、遺伝子学の権威だからね。現場を離れられても困るんでしょう?ユーリおじ様はテロの被害を最小限にしたから拘束したらどうしたって国民やザフトの反感を買う可能性が否定できない。マクスウェル議員は、急進派だもの。でも、エザリアおば様はイザークに甘いから。イザークが関わってくると話が別だから」

イザークがかかわってくるなら急進派としての立場を取り続けられなくなるかもしれない。

そうなると、少し邪魔だ。役に立たないなら拘束しておいたほういいだろう。

そんなところじゃないかと思っている。

「まあ、詳しい理由までは分からないが。確かに、ジュール議員はの婚姻破棄の後すぐに監禁されたらしい」

それだけが聞きたかった。

しかも、イザークの聞いていないところで。

「ありがとう。イザークには内緒で」

の言葉にアスランは頷いた。

ここでイザークに暴走されたら困ると思っているのかもしれない。

アスランはそう思ったが、はそうじゃない。

いや、暴走されても困るとは思うけど、相手の次の手が知りたかった。自分の予想通りに来るかな、と。

彼女は自分の予想通りの行動に出る。

確信できた。

ただ、それがいつになるかが問題だ。

ファクトリーで落ち着けてからがいいなと思っているのだが、そこまで都合よく話は進まないだろう。


ヘリオポリスでの滞在中はホテルでの生活だった。

部屋はアイシャと同室で、隣室にイザークとなっている。

アイシャよりも一足先にたちはホテルに戻った。

隣室、となっているがイザークはアイシャが戻るまでと同じ部屋にいる。

は端末で何か作業をしていた。

「何をしているんだ?」

「んー、ちょっとね」

「聞いておいた方が対処しやすいこともあるんだが...」

濁すにイザークはそう声を掛けた。

「ウズミ様からいただいたディスクを開けてるところ」

ああ、あれか。

そう思ってイザークはモニタを覗き込んだ。

厳重にロックが掛けてある。

「これを、アスハ代表が?」

「ロックは別の人でしょうね。このディスクを残した人じゃないの?」

そういいながらは手を止めずにロックをひとつひとつ解除していった。

そろそろ解除できるというところでアイシャが戻ってきた。

イザークは自室へと引き上げた。


「何してるの?」

ひょいと覗き込んで言うアイシャには「わたしの出生の秘密がたぶんこの中にあるんですよー」と笑って言う。

「『出生の秘密』?」

アイシャはそう聞き返したが

「いつか自然と分かることだと思うし、そうでなくとも話すつもりだから今は待ってくれる?」

に言われて頷いた。

ロックを何とか解除した先にあったのは複数のフォルダに入った実験データだった。

あれ?とはひとつのフォルダを見て興味を持った。

『アル・ダ・フラガ関連』と書いてあったのだ。

『フラガ』といえば先日会った元地球軍の人物もそうだった。何か関係があるのだろうかと思ってファイルを見たは「なるほどね」と呟いた。

彼女だけだったらどうにも納得いかなかったことだったが、今やっとパズルのピースがひとつ嵌った気がした。

「命は造るものではないと思うんだけどなー...」

作られた命。生まれてきた命。

生まれてきてしまった以上、生き続けなければいけない。そこはどの命も変わらない。

そして、奪われていい命も、奪っていい命もこの世に存在しない。

はため息を吐いてディスクにロックを掛けた。厳重に。

端末の電源を落としてベッドに入った。









桜風
10.6.28


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