Polaris 47





メンデルの入り口で作業をしているとコックピットに通信が入った。

「何だ?」

『お姉さまはどこに行かれたのでしょうか?』

ラクスからだった。

「ポラリスに居るんじゃないか?」

『いいえ、ポラリスの皆様に聞いても何も知らないと。でも、その様子ですと、イザークも知らないみたいですわね』

そう言ってラクスは通信をきった。


ラクスの通信を受けてから何かずっと落ち着かなかったため、作業を変わってもらってポラリスに足を向けた。

、入るぞ」

声をかけて部屋に入る。

しかし、誰も居なかった。

イザークは首を傾げながらブリッジに向かった。

その途中でクルーが騒いでいたため、何があったのかと声をかける。

・ラ・クルーゼが逃亡しました」

「逃亡だと!?どうやって!!」

イザークが問い詰めるとクルーが経緯を話す。

食事を持っていった。

最近は食事を持っていく人物が同じで彼女とも打ち解けていたらしい。

しかし、逃亡を図られると面倒だから、コロニーに停泊していることは口にしてはいけないと言っていたのに、今コロニーに居ると話してしまったそうだ。しかも、そのコロニーがメンデルであることも。

イザークは怒鳴りたい気持ちをため息を吐くことで何とか逃した。

「艦内に居ないのか?」

「今、捜索中です」

ノーマルスーツを着ればこの艦から外に出られる。

今、この艦のクルーは他艦のクルー全員の顔を知っているわけではないし、IDだってないのだ。

イザークはブリッジへと向かった。

各艦にの逃亡の話をして彼女を見つけたら連れ戻すように頼んだ。

「アイシャ」

丁度ブリッジに戻ってきた彼女にの行方を聞いてみた。

仲がいいし、女性同士で話すことだってあるだろうと思って声をかけた。

?居ないの??」

「ラクスも探したんだが...居ないみたいなんだ」

イザークの言葉を聞いてアイシャが顔色を変える。

「何か知ってるのか?!」

「コロニーの中の施設...がここは出生地だって。単独行動をしたいって話をしていたの。護衛を連れて行くのよって言ったのに...!」

アイシャの言葉を最後まで聞かずにイザークは駆け出した。

そのままMSに乗ってメンデルの中心部を目指す。

「あんの馬鹿が!!」

コックピット内で盛大に文句を口にしながら速度を上げてが向かったであろう施設を目指した。




クルーゼと話すのに集中していたらしく、人の気配に気づけなかった。

足音が聞こえて振り返る前に背中に衝撃がある。

前のめりに倒れるのを何とか踏ん張ったが振り返るとの姿があった。

「お父様、わたくしを褒めて!見て!!お父様の憎んだジョージ・グレンを殺したわ!!」

の血で手を真っ赤に染めたが満面の笑みを浮かべてクルーゼに訴える。

子供が親に褒めてもらいたいときのその純粋な表情だ。

ああ、そうなんだ...

は納得した。

にとっては、やはりクルーゼは父親なのだ。自分を殺そうとしたが、それでも彼を慕う気持ちは消えなかった。

やっぱりイザークに怒られるよなー...

そう思いながら前のめりに倒れた。

カチャリと銃を構える音がした。

顔を上げるとクルーゼがに向かって銃を構えている。

「お父..さ、ま?」

は一歩後ずさった。

。私の可愛い娘。よくやったな」

優しく声をかけるが銃口はやはりに向いたままだ。

「しかし、人とはよくよく愚かなものだ。自分を助けたものの命をこうもあっさり奪うのだから」

引き金に当てられている指に力がこもる。

「お父様?!」

「さようなら、愚かな私の人形」


パンッと音がした。

は天井を見ている。

自分の上に乗っているのは何だ...?

何か、重いものが乗っている。

ドロリとした感触が少し気持ち悪い。

何も考えられない。何も見たくない。何も聞きたくない...!

「ふふふふ..はは..あはははは...!」

の下敷きになったが声を上げて笑いだした。心が壊れてしまったのかもしれない。

大好きで、大好きで。何をしても褒めてもらいたくて、力になりたくて慕っていた父親に簡単に切り捨てられた。

2回も。

心が耐えられなくなったのだろう。

を抱きしめる。

「自分を殺そうとした者の命までも守るのか?その娘は一度ならず二度もキミを殺そうとしたのだよ?」

カチャリ、とまた銃を構える。

「う、る..さい、黙れ。ヘン..タ、イ...仮面野郎」

はか細い声でそう返す。

「全く...しかし、私の復讐の成就の役には立ったようだな」

ちらりとのほうを見てそして再びクルーゼが引き金を引く指に力をこめた。

は入らない力を振り絞ってに自分の体を被せる。銃弾がに届く前に自分の体で防げるように。

先ほどと同じように銃を撃つ音がした。

カランと何か金属のようなものが床に落ちる音がした。

何が起こったのかわからない。

でも、まだ生きているようだ。

!!」

重い瞼を閉じるのを我慢しては視線を彷徨わせた。

!!」

血溜まりに膝をついてイザークがの顔を覗く。これだけの出血だ。ゆっくりしていられない。

の目の前にアイスブルーの瞳が現れた。

「イザー、ク?」

「そうだ。何で声をかけなかった!!」

ああ、やっぱり怒られた...

「ごめん」と呟いた言葉はちゃんと声になっていただろうか...









桜風
10.10.11


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