| ジュール邸でイブニングドレスに着替えたをイザークが玄関で待っていた。 「ありがとう」 「いつも思うが、本当に化けるな」 「失礼ね!」 が言うと「そうよ、イザーク」とこれまたイブニングドレスのエザリアが同意する。 女性の人数が多いのでこれは黙った方が良いだろうと思ったイザークは「すみません」とエザリアに謝った。 「エザリア様、いつもありがとうございます」 が頭を下げる。 「いいのよ。あなたがつまらなくなったら遠慮なく切り捨てさせらもらうつもりだし」 笑顔でそう言う。 冗談ではなく本気だろう。プラントでのビジネス界での自分の立場は分かっている。そして、エザリアがどれだけ上に立っている人かも。 彼女に追いつきたい、そして、いつかは追い越してみたい。 はそう思いながらいつも仕事に打ち込んでいる。 そんな貪欲な彼女を気に入ったエザリアは目をかけている。しかし、彼女が気に入ったのはその貪欲なで、彼女が少しでも日和ったら言葉の通り切って捨てるだろう。 しかし、にとっては凄く分かりやすいことなのでありがたい。 ビジネスに手を抜けば、切り捨てられるが、全力で突っ走っていれば希望はある。 どの道、エザリアを追い越そうと思うならこちらは全力で走らなきゃ追いつくことすら出来ないのだ。 「最近、の会社の話は良く耳にするわよ。順調のようね」 車の中でエザリアにそういわれて「ありがとうございます」とは返す。 は地球とプラントの交易を生業としている。 元々オーブの出身でコーディネーターに抵抗は無かった。 ちなみに、自分はナチュラルだ。だから、余計に全力を出さなきゃ軽くひねり潰されてしまいそうに思える。 会社の社員にもコーディネーターがいるし、その人たちの才覚には時々鳥肌が立つ。 凄く良い刺激になる。 「しかし、パートナーが未だにイザークってのは...」 「申し訳ありません、いつもご子息にお願いしてしまって」 恐縮するにエザリアは笑って「イザークならいくらでも使っていいのよ」と言う。 「母上...」と運転中のイザークが抗議の声を漏らすが気にしない様子で「そうじゃなくてね」とに微笑む。 「ビジネスで登り詰めるのも大切。でもね、それだけだとつまらない女になっちゃうわ。もっと視野を広げなさい。そのためにも、恋は必要よ」 パチンとウィンクをされては赤くなる。 そんなの反応にエザリアは「ふふふ」と愉快そうに笑った。 エザリアがを気に入っているもうひとつの理由はこれだ。 意外と反応が可愛いのだ。 本人はそのことに気付いていないらしく、それまた楽しい。 イザークはそんな母親の心境は手に取るように分かるようで、そっと溜息を吐いた。 パーティの会場に着き、エザリアはビジネスパートナーと共にとっとと会場に入っていく。 「よろしくお願いします」 が言うとイザークは肩を竦めて腕をそっと差し出した。 その腕を軽く掴んでそのまま会場に入る。 中にいる人物たちを素早くチェックする。どういう系統の企業のどのレベルの人が来ているか... イザークはのこういうところは凄いな、と心から感心していた。 貪欲なところ。 ハングリー精神というのは簡単に身につかないものだと思う。結局人は自分には甘いものだろうし、気を抜くとそうなるものだと思っている。 だから、こうして貪欲なまでにビジネスチャンスを逃さないようにしているは少なからず尊敬をしている。 おそらく、彼女の会社の従業員達も同じようなことを思っているのだろうな、と何となく思っている。 「物色は終わったか?」 「人聞きの悪い。けど、うん...何となく傾向が分かった」 「一緒に行くか?」 「そこまでは甘えらんない。ありがとう、壁の花にでもなってて。あ、ナンパしてても良いかも」 「するか!」と返したイザークは途中でボーイに声をかけてドリンクを受け取り、の提案どおり壁の花になるべくその場から離れた。 |
桜風
11.9.26
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