| パーティから家に帰ってディアッカはの会社を調べてみた。 資本金を見て「え...」と呟いた。 そこから此処まで登り詰めたのか... しかし、おそらく彼女はこれで満足していないだろう。 名誉欲は大して強くないのだろうが、起業者としてのプライドと理想は高そうだ。 翌朝、食卓についたディアッカが「なあ」と父親に声を掛ける。 「どうした?」 「・って知ってる?」 「ああ、オーブ出身の女性起業家だろう?今プラントの経済界で一番勢いがある。どうした?ああ、そういえば、昨日のパーティにも来ていたな。私はタイミングが合わずに話ができなかったが」 やっぱり有名なのか... 「そういえば、エザリアのお気に入りらしいな。そのことについてやっかみもそれなりに受けてるだろうが...」 それはどの社会でもあることだ。珍しいことではない。 「親父は話したことあるの?」 「まだないな。凄く頭の回転が速いってのと、性格がさっぱりしていて好感が持てるだろうってエザリアからは聞いているが」 「ふーん」と適当な相槌を打ってディアッカは食事を始めた。 そんな息子の様子を不思議そうに眺めていたタッドだったが、妻に促されて出勤していった。 まだ学生のディアッカは学校に通うのが仕事だ。 掲示板の前に佇んでその一角を見上げる。 「何をしている?」 声をかけてきた友人に軽く手を上げて応えたが、視線は掲示板から離れない。 「『アルバイト斡旋』...始めるのか?」 「考え中」 「気候制御システムが壊れるんじゃないか...?」 プラントはシステムで気候が制御されているのでその日の天気は外れることは無い。 しかし、そのシステムが壊れたら天気は不安定になる。 からかうイザークの言葉にディアッカは「ほっとけ」という。 やはり、こう..ピンと来るものが無い。 「良いのか?」 掲示板の傍から離れていくディアッカにイザークが声を掛ける。 「もうちょい考えてみることにする」 そう言いながら遠ざかるディアッカにイザークは首を傾げた。 「親父さんに頼めば?いっちゃん早いでしょ」 昼食時、食堂で鉢合わせたラスティに相談してみるとそういわれた。 実際、いちばん最初に自分が思いついたのもそれだった。 しかし、やっぱりできることなら自分で何とかしたかった。 「てか、何でまたバイト?困ってないんでしょ、色々と」 ラスティの言葉に「一応ね」と応えてディアッカは溜息を吐く。 「お礼をしたい人がいてさ。奢るって話をしたら親の金でそういうことを言うなって言われたの。正論だと思ったからさ」 「ああ、女の子」 「性別までオレ言った?」 ディアッカが首を傾げるとラスティはカラカラと笑う。 「ディアッカが男に誠実になるなんて考えらんない。女の子に誠実になるのだって気候制御システムのトラブルを招きそうだからやめてほしいくらいなのに」 そういわれて憮然とする。 今朝も似たようなことをイザークに言われたばかりだ。 「で、ディアッカは何がしたいの?ピンと来るものがなかったんでしょ?」 「具体的に何、というのは...」 「選り好みしてたら結局何もなくなると思うよ。やっぱりさ、親の金で、とか言われてもおれ達は親の金でこれまで生活してたんだし。簡単に変われないよね。それこそ、就職とかしたら話は別だろうけど」 『生きる糧』と言うほどのものではないのが選り好みする原因かもしれないな、と思った。 結局父親に頼むことにした。詮索されそう、というのも彼に頼むのを躊躇した原因のひとつではあるのだが、もう手っ取り早い方がいいと思ったのだ。 「お前がアルバイト...気候制御システムのメンテを」 「もう良いって!で、どうかな?」 ここでも言われた。 そんなに壊しそうなのか?良いだろう。そんなに言うなら一生懸命働いて壊してやろう。 「いやいや、何にしても労働意欲があるのは良いことだ。そうだな、知り合いがバイトを探していると言っていたからそちらに聞いてみよう」 「その人の連絡先を教えてよ。オレから頼んでみるから」 おんぶにだっこでは格好がつかない。誰にって、それはまあ... 教えてもらったら連絡先に連絡を入れるとバイトはまだ決まっていないと聞いた。 面接をするので来て欲しいといわれて面接を受けて採用となる。 たぶん、自分の後ろの父親の存在を意識しての採用なのだろうが、それでも今は文句は言えない。 実際、彼を頼ったのは自分で、自分の価値なんてその程度なのだから。 |
桜風
11.10.17
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