| 月に何度か家族ぐるみで外食に出たり、お互いの家を訪問したりと友好な関係を築いている。 それに関しては全く疑いようのない事実だ。 少なくともイザークはそう思っていた。 だが、 「...殿にお願いがあります」 必ずこの話を切り出すと邪魔が入る。 続ける言葉を頭の中で一度繰り返して口を開くと 「あら、お茶が冷めましたね。温かい紅茶をお持ちしますわ」 自分の彼女である・の母親がそう言って席を立った。 イザークは項垂れたい気持ちを必死に堪えて「ありがとうございます」と大人受けする笑顔を浮かべてそう応えた。 「って、それって反対されてんじゃないの?」 思わず愚痴ってしまった相手がディアッカで 「そうですね。これだけ長い間恋人という関係なのに、いざ話を切り出すとそういう反応になるって事は...」 何故かニコルもいた。 「何々、何の話?」 意外と、でもないかもしれないが野次馬根性を見せる機会の多いラスティが面白そうな雰囲気を察して話に入ってきた。 面白いのは他人だけで、当事者のイザークは全く面白くない。 「イザークとちゃんの話」 「ああ、またしくったの?もうさ、既成事実作っちゃえば?」 さらりとそんな事を言うラスティにニコルは眉を顰める。品がない話題の振り方だ。 イザークもイザークで「そんなことできるか!」と忌々しげにそういう。 ラスティの言うとおり、それが一番の近道にも思えなくもないが、それでも深窓の令嬢で通っている彼女にそういうことを求められない。 そりゃ、自分だって彼女と...とか思ってないわけではないが。彼女を大切に思う気持ちの方が勝っているのだ。 せめて婚約が先だろう... 「で?これで何回目の失敗?てか、どれくらい邪魔されてんの?」 イザークがの父親に婚約を申し込もうと話を切り出すたびに誰かに邪魔された。 の両親はもとより、自分の親にまで邪魔をされたことがある。 どういうつもりだ!? 少なくとも、自分の親は彼女との交際を応援してくれているし、彼女を自分の娘のように可愛がっている。 それなのに、婚約の話となったら邪魔をする。 何がいけないんだ? 何が足りないんだ?? 真剣にそれを悩んで寝不足に陥った朝が何度あったことか。 「んじゃ、ちゃんはもう諦めたら?彼女可愛いけど、あれくらいならまだ沢山居るって」 ディアッカが何の気なしに言うとイザークに胸倉を掴まれた。 「貴様、今何と言ったァーーー!!」 「や、ごめん。冗談...」 乱暴にイザークがディアッカを離して怒りを鎮めるように溜息をつき、それでも払えなかった苛立ちに舌打ちをした。 「まあ、気長に行くしかないでしょうね。もしかしたら、まだ早いって思っているだけかもしれませんし。ほら、さんは家唯一の姫ですからね。まだ手放したくないっていう親心があるんじゃないんですか?イザークのお母さんだってそれを察してちょっと延ばそうとしているとか...」 ニコルの言葉に「そうだな」と呟いてイザークは気持ちを新たにする。 諦めるつもりがないのだから、気長に、辛抱強く彼女との婚約を認めてもらうように接しよう。 そんな決意をした翌週の休日、彼女の家に招待されたので親と共に家へと向かった。 前回邪魔をされたのだから今回は様子を見たほうが良いのだろうか。 あまりにもしつこいのは良くないかもしれない。自分に足りないものがあるのかもしれないからそれを考えて補って彼女に相応しいと彼女の両親に認めてもらうようにしよう。 そんな事を思って臨んだ食事会。 一通り食事を済ませて、いつもだったらイザークが話を切り出すタイミングだ。 「お父様、お母様。そして、エザリア様」 今回は何故かが口を開いた。 イザークは驚いて彼女を見る。 イザークと目が合ったは穏やかに微笑んだ。 その表情に思わず見惚れたイザークは次の瞬間頓狂な声を上げた。 「は?」 はイザークに穏やかな笑みを向けた後 「イザーク様との結婚をお許しください」 と澄んだ声で宣言したのだ。 言葉を聞く限りは許しを請うているが、その声音は宣言のような印象を受ける。実際、彼女はそのつもりだろう。 「その手があったか!!」 「我が娘ながら、考えたわね」 「負けましたわ、さん」 の両親と自分の母が口々にそう言う。 イザークはポカンとその光景を見ていたが、慌ててに目を向けた。 「あの、イザーク様。よろしいでしょうか」 「あ、いえ。はい。勿論」 しどろもどろに応えながらイザークは今の状況の把握に努めている。 が、全く分からない。 「イザーク様、席を外しませんか?」 そう言っては立ち上がり、部屋を後にする。 イザークもそれに倣った。 「さっきの。すまなかった、オレから言わずに...」 邸自慢の庭園を歩きながらイザークはすぐに謝罪した。 しかし 「仕方ないです。イザーク様からの婚約の申し込みは通りにくいですから」 とコロコロと笑いながらが言う。 どういうことだ? イザークが話を促すと 「実は、賭けをしていました」 「賭け..だと?」 「はい。エザリア様は、1ヶ月以内。母は1ヶ月より後で3ヶ月以内。父は3ヶ月より後で半年以内。そして、私は半年より後」 「それって、まさか...」 イザークは嫌な予感がした。 と正式に付き合い始めて親に紹介して1ヶ月の間はやたら母は家を訪ねるように促していた。 しかし、1ヶ月過ぎたらそこまで促されず、寧ろの母親からの招待が増えていた。 そして、勿論3ヶ月を過ぎたらの父からの誘い。 トドメは今日だ。 今日はからの招待だったのだ。 「賭けは、私の勝ちです」 は嬉しそうに声を弾ませてそう宣言した。 「だから、邪魔されていたのか...」 反対されていたのではなく、遊ばれていたようだ。 「でも、ルールはあったんですよ?イザーク様が話を切り出して沈黙したら3秒は待つ。それを超えたら、お好きに..っていうのですけど...」 肩を竦めながらが言った。 なるほど、確かに話を切り出した後、自分はいつも頭の中で婚約の申し込み言葉を復習していた。 その間に3秒経っていたのだな... 「それで、オレの申し込みは通りにくいということか」 「ええ。ごめんなさい。止めようと思ったのですけど、思わず乗ってしまいました」 ペロリと小さく舌を出して肩を竦めたに溜息を吐いた。 「全く。オレは反対されているのかと心配したんだぞ」 そう言いながらの髪をひと房手にして口付ける。 「イザーク様との婚約を反対するなんてありえません!寧ろ、イザーク様はこれでよかったんでしょうか。あの、いつも私イザーク様が隣に立っているのが夢だったらどうしようって思ってるんです...夢じゃないんですよね?」 がまっすぐ自分の目を見てそういうものだから、イザークは嬉しくてそのまま彼女にキスをした。 「あんまりかわいい事を言うな」 耳元で囁かれての顔は一気に真っ赤に染まる。 そんな彼女にまたキスをした。 あー、良かった... 心の中ではそんな事を素直に思っていたイザークだった。 |
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桜風
08.8.17
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