| 暫くバルトフェルドの話に付き合い、彼が満足したころ、やっと解放された。 廊下を歩いていると「あ」とラスティが声を上げる。 「どうしたんだ」 と苛立たしげにカガリが振り返る。 「ごめん、さっきの部屋に忘れ物」 「はあ?!」 「どうせカガリは着替えなきゃでしょ?レセップス入り口で待たせてもらって」 そういいながらラスティは先ほど通った廊下を戻っていった。 ノックをすると「入りたまえ」と返事がある。 「おや、どうしたんだい。ラスティ・マッケンジー」 愉快そうに室内のバルトフェルドが応じた。 「忘れ物。一応、念のためね」 ドアを閉めてからラスティがバルトフェルドを見た。 「俺が生きてるの、内緒で」 「それは僕が聞かなきゃならない約束じゃない」 「けど、俺が生きているって情報をザフトに流してもあんたに利がない」 「確かに」 「あと、空の状況、教えてくれない?」 こんな図々しいことも言ってのけるラスティに少なからず感心しつつ、バルトフェルドは口を開いた。 「クルーゼ隊ラスティ・マッケンジーはMIAとなっている。脱走云々は秘匿事項だ。その代わり、同隊・は見つけ次第、本国に連れて行って処罰することになっている。ま、極刑のようだよ。脱走兵だし、服務規程通りにってなるんじゃないのかな?」 “極刑”という言葉に、ラスティの目が暗く濁った。 「君は、どうして彼女にそこまで拘るんだい?君は曲がりなりにもザフトレッドだった。ある意味、出世が約束されていたんじゃないのか?」 「出世に興味はないよ。俺は、を守りたい。ただそれだけ。俺の優先順位の一番がなんだ。あの時、を守る方法はアレしかなかった。 例えば、さっきも。何かあったら即行キラとカガリを盾にしてを守りながら逃げる気満々だったし」 それはバルトフェルドも察していた。 「彼女に幻滅されるね」 そう言ってからかってみると 「それは、ちょっとツライね」 肩を竦めてラスティが応じる。 「ひとまず、君が言ったように君の生存をザフトに報告しても僕にとって利益はないし、面倒ごとに巻き込まれるだけのような気がするからこのことは部外秘という対応になるね。・もまた然り。 まあ、ヘリオポリスが崩壊して、そのときに一緒に宇宙の藻屑になったっていうほうがザフトにとっても都合がいいみたいだし」 「だろうね。それだけが確認したかったんだ、ありがとう。次に会ったときはお互い、気兼ねなく引き金を引こう」 「ああ、それがいいだろうね。そうそう」 ドアを開けようとしたラスティにバルトフェルドがまだ声をかける。 面倒くさそうに振り返ったラスティに向けられていたバルトフェルドの視線は鋭く、思わず一歩後ずさった。 「ガモフが落とされた。きみが一緒に行動しているあのアークエンジェルに落とされたと言っても過言じゃない」 その言葉にラスティは思わず息を飲む。 俯いてゆっくりと呼吸を整えるように深く息を吐き、動揺を押し殺して顔を上げた。 「あなたと話せてよかった」 そう言ってラスティは敬礼を向ける。 手を下ろして「失礼します」とラスティは部屋を出て行った。 閉まったドアにバルトフェルドもまた敬礼を向ける。 「君は、僕の思っていた少年とちょっと違ったね」 一緒に居たキラとは別のかなり危うい感じはしたが、嫌いではない。ただ、本当に危うい、脆さは抱えていると思う。 「お待たせー」 入り口で待っているとラスティが戻ってきた。 「遅いぞ!」 ラスティの戻りが遅いことを心配して苛立っていたカガリが怒鳴る。 「ドレス着てた方がまだ女の子っぽくてよかったんじゃない?あ、が一番なのは変わらないけどね」 ラスティの言葉に毒気を抜かれたようにカガリは肩を落とした。 「帰るぞ」 そう言って先を歩き始める。 「ラスティ。何か、あったの?」 顔を覗きこんで言うにラスティは少しだけ驚いた。 ガモフに居た仲間がどれだけ亡くなったかはわからないが、少なくとも艦長はなくなったはずだ。船が沈むときは一緒に沈むのが艦長だ。 バルトフェルドからガモフが落ちた話を聞いて、少なからずショックだった。 何も答えず、ラスティはの手を取ってぎゅっと握った。 驚いた様子のだったが、すぐにその手を握り返される。彼女の存在に酷く安心した。 |
桜風
12.3.5
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