| イザークから真実を聞いてからというもの、は元気がない。 そんな事情を知らないニコルたちは心配をしていた。 「...どうしたんでしょう、さん」 「あれじゃない?オンナノコの日」 「『オンナノコの日』?なんだ、それは?」 「アスラン、そんな言葉は流せよ。ラスティも変なことを言うなって...」 溜息交じりでミゲルが声を掛ける。 「でも、も変だけど、イザークとラフも変なんだよな」 ラスティの言葉に皆の足が止まる。 「イザークを巡る三角関係だったりして」 楽しそうに言うラスティに 「それは無いだろ。どう考えてもラフとイザークは合わない」 冷静にミゲルが言う。 「何にしても心配ですね、さん」 「先生、気分が悪い...」 同じ頃、は体調不良のため第二医務室を訪ねていた。 「ん。じゃあ、ベッドで寝てなさい」 そう言ってラフはをベッドに促し、自身の書類作成を続けた。 それから約1時間後。 爆発音と共に船が大きく揺れる。 「な、何だ??」 「爆発...ですか?」 「とにかく、ブリッジに行ってみよう」 アスランたちは突然の大きな揺れに驚き、部屋から出て状況を確認しようとブリッジに向かった。 「艦長!今の揺れは一体...?」 「ああ、第3エンジンで爆発が起こったらしい。詳しい原因は分からんが、負傷者がかなり出ているようだ」 「あ〜、もう!!こんなときに限って医療班がウチにいないんだから!!」 一方、第二医務室ではラフが大忙しだった。医療班が全て第一医務室で負傷者の対応をしているためこちらに運ばれてきた負傷者は全てラフが独りで診なければならなくなったのだ。 言ってもどうにもならないのは分かっているが、文句の一つも言いたくなる。 「先生!重体患者です!!」 そう言いながら慌しく兵士が入ってくる。見ると、右足が潰れて止め処なく流血している整備兵が担架に乗っている。 「...そこの診療台に!」 ラフはそう指示をして治療―つまり右足の切断―の準備を始めた。 「いてぇ!いてぇよ!!ラフ、俺を殺してくれ。このまま生きていくなんてできねぇよ。頼む。死にたいんだ」 その言葉にラフは躊躇する。医師としては殺すわけにはいかない。しかし、このまま右足を失って生きていくのは辛いことが多すぎる。 そんなことを考えているとが寝ているベッドの仕切りのカーテンが開いた。 はツカツカとその診療台に近づき 「甘えるな!!」 一喝した。 その声に治療を待っている整備兵は勿論、ラフやその手伝いにと今医務室のドアを開けたアスランたちも驚く。 「あなたが死んだらどれだけの人が悲しむと思ってるの?!」 「うるさい!俺にはもう家族はいないんだ。血のバレンタインで、皆死んだ!!」 の胸倉を掴んでそう言うが、は引くことなく、 「それなら尚更生きなきゃダメでしょ!?あなたが死んだら誰があなたの家族のことを覚えているの?誰があなたの家族のことを伝えるの? 生きて、ください。私の両親は私の小さいときに死にました。そして、先日、唯一の家族だった兄もある事故に巻き込まれて亡くなった..そうです。この目で確かめてはいませんけど、でも、たぶん本当です。私もその事故に一緒に遭遇しましたが、私が生きてるのは兄のお陰なんです。兄がクッションになって...兄の最期の言葉、覚えてます。 『生きろ。一緒にいられないけど、絶対に守ってやる』でした。この言葉は私が気を失っていく中で聞いたから、信じられなかったし、信じたくなかった。 でも、今は...今は生きるって決めました。絶対に、諦めないって」 廊下で立ち聞きする形となっていたアスランたちは黙ったままその光景を見つめていたが、遅れて医務室前に来ていたイザークはフッと微笑み、同じく遅れてきたディアッカはヒュ〜と口笛を吹いた。 静かにの言葉を聞いていた整備兵が呟く。 「なあ、この足を切り落とすまで、一緒にいてくれないか?あんたのその強さを貸してほしいんだ」 「はい。わかりました。頑張りましょう」 このの返事にラフは驚いた。しかし、の決心した瞳を見て 「分かった。泣くんじゃないよ、かっこ悪いところ女の子に見られたくないでしょ?」 そう言って治療を始めた。 は彼の手を握ってやり、出来るだけ笑顔を向けながら「頑張ってください」と声を掛けていた。 どれくらい時間が経ったのか分からないが、何とか治療も済んで、治療の初めに打った麻酔が利いてきたのか、その整備兵は静かに寝ていた。 「あれ?さんは?」 「ちょっと休憩してくるって言ってたわ。あ、ニコルそこのガーゼ取って」 「はぁ〜」 は廊下に出てうずくまって溜息をつく。やはり初めてのことが色々重なって疲れがどっと出た。 「血のにおいにでも酔ったのか?」 突然声を掛けられて顔を上げるとそこにはいつもよりはいくらか穏やかな顔のイザークが立っていた。 「飲め」 そう言ってドリンクを渡してくる。 「ありがとう、ございます。あの、イザークさん」 「イザーク、でいい。他の奴らは呼び捨てだろうが?」 「はい。えっと、ごめんなさい、イザーク」 「何がだ?」 「『大ッ嫌い』って言って。私、心のどこかでは兄が死んだこと分かってたんです。でも、認めたくなくて...。そして、ありがとう。イザークのお陰で私は現実を見ることが出来た」 「気にするな。正直、俺もに酷いことを言ったかと反省していたんだ、これでもな?...どうした?」 に顔を向けるとぽかんとイザークを見上げている。 「いま、『』って言った?私の名前、知ってたの?」 「当たり前だ。俺は記憶力がいいからな」 「私、いっつも『お前』とか『貴様』って言われてたから名前を覚えてもらえてないんだと思ってた...」 それを聞いたイザークは 「そんなわけ無いだろう」 と溜息を漏らした。 翌日。 が朝食時にいつものようにラフと自分のトレイを持って食堂を出ようとすると、 「どこ行くんだよ、」 ディアッカに呼び止められる。 「え?...先生のところで一緒にご飯を食べにって、ディアッカさんも私の名前を知ってたんですか?」 「『さん』って...ああ、知ってたよ。ただ、仲間と認めてないやつの名前を呼ぶ気にはならなかっただけ。ラフは今日はもうメシ食ったぜ?いいから、こっちでメシ食おうぜ。皆待ってる。あの短気なイザークでさえ、な?」 ディアッカに手を引かれながら皆の元へ行く。 「遅いぞ、どれだけアスランと一緒にいさせたら気が済むんだ?!」 「さん、ここに座ってください」 「んじゃ、揃ったことだし?食べようぜ?」 その光景を見ては突然泣き出した。 「オイオイ、なんで食事の前に泣くんだよ...」 苦笑しながらミゲルがの頭を撫でてやる。 「うん、何だか凄く嬉しい...」 「イザークとディアッカが散々苛めてたからなー」 「な?!ラスティ、貴様!!」 「本当のことでしょう?ねえ、ディアッカ?」 「まあ、な」 「なあ、早く食事を済ませないか?ミーティングが始まるぞ?」 その日から、ガモフではの笑顔が絶えなかった。 |
やっとこさ少年たちの一員(?)になれたヒロイン。
まあ、なんと言うか、現実を見ることが出来るきっかけをくれたのはイザークでした。
イザークもディアッカも結構頑固なところがあると思うんです。
ただ、仲間と認めたら言葉に出さないけど凄く大切にするというか...
桜風
04.11.7
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