Moonshine 9





朝、目が覚めるとそこは見慣れない天井だった。

が慌てて起きると部屋が違う。

ふと、自分が1週間ほどラクスの家で世話になることを思い出した。

そうは言っても何もしないで世話になるなんてできないと思ったは、服を着替えて食堂に降りた。

「おはようございます」

「あら、おはようございます。お早いですね」

厨房に居た女性に声を掛けると笑顔で挨拶を返された。

「あの、何かお手伝いさせてください」

そうが声を掛けると

「そんな!出来ませんよ。ラクスお嬢様とアスラン様のお友達にそのようなことをさせてしまったら私はなんとお詫びを申し上げて言いか分かりません!!」

そう強く断られてしまったはこれ以上自分の希望を通すのも悪い気がして庭に出てみた。

昨日は気疲れをしてしまい、早々に寝てしまったからこの広い庭に出ることがなかった。

その庭の広さに

(私の住んでたアパート、何軒入るんだろう?)

と自分の知っている単位に換算しようとして無駄なことだと悟り途中で諦め、そのまま庭の美しい薔薇のアーチの下をゆっくり歩いた。

目を輝かせて薔薇のアーチを見上げていると、

「ハロ、ハロ。!!」

後ろから声がして振り返るとピンクのハロが跳ねながらやって来ていた。その後ろにはゆっくりと他の色とりどりのハロを連れたラクスが歩いてきている。

「おはよう、ピンクちゃん。おはよう!ラクス!!」

手を振ってラクスに挨拶をするとラクスは笑顔で小さく手を振って応えた。

「おはようございます、

「おはよう、ラクス。凄いね、この薔薇」

「まあ!ありがとうございます、。わたくしもとても気に入ってますの」

そのまま朝の散歩を少しして

、そろそろ朝食の時刻ですわ。戻りましょう?」

そうラクスに促されてテラスに向かった。

テラスに並べれた朝食に圧倒されながらも、何とかは平静を装った。

(...先生。無理するなって言うほうが無理です)

自分に忠告をくれたラフを思い浮かべながらは心の中で呟いた。


それから数時間後。

アスランが(不本意にも)皆を引き連れてやってきた。

「お嬢様、アスラン様達がいらっしゃいました」

ドアを挟んで向こうから執事が声を掛けてきた。

「まあ、皆さんお入りになってください」

ラクスが声を掛け、外の執事がドアを開けて部屋の中へ皆を促す。

「やあ、ラクス。こんな大勢ですみません」

「いいえ、構いませんわ。大勢いらした方が楽しいですから。皆さんいらっしゃい」

柔らかく微笑むラクスに皆は少なからず顔を朱に染める。

そんな皆の様子をじぃっと見ていたの視線に気付き、ディアッカが手にしていたものをテーブルの上に置く。

「風呂敷!ディアッカこんなもの持ってったんだ?」

懐かしいものを目にしたは嬉しそうにそのテーブルに近づいた。

「ああ。やっぱりはこれが懐かしいか...」

そう言いながらディアッカは風呂敷を解き中のものを出す。

「...これってもしかして着物?振袖かなぁ。何でこんなもの持ってんの?」

「こんなものって言うなよ。師匠に借りてきたんだ。ほら、俺って日舞やってただろ?軍に入ってから全然練習とか出来ないけど折角帰ったから師匠に挨拶をしにに行って借りて来たんだ。はまっすぐな黒髪で長いから似合うんじゃないかなって思ってさ」

「そうだな。元々日本のものなんだし折角だから着てみたらどうだ?」

イザークに言われて少し悩んだ

「じゃあ、着てみる」

とはにかみながら答えた。

「ラクス嬢も如何です?一応、用意してありますが?」

ディアッカはの傍に立って着物に興味を示しているラクスに声を掛けた。

「まあ、嬉しいですわ。ありがとうございます」

そう言って柔らかく微笑む。

「じゃあ、男性陣は外に出てて」

「え?!、着付けできるのか?」

ディアッカが意外そうに聞くと

「そりゃそうよ。私の母はお茶教えてたから私も習ってたし、自分で着物きれなきゃ『着る』なんて言わないって。...私が着付けできなかったらディアッカ、どうするつもりだったの?」

半眼になってが聞くと

「そりゃ、勿論。俺が、ッ!!」

胸を張って答えている途中、ディアッカの頭にイザークの拳が振り下ろされ、ラスティの蹴りが入り、笑顔のニコルの肘鉄が脇にヒット。

「じゃあ、俺たちは出て行くからな。着替え終わったら呼んでくれよ」

ミゲルがディアッカの頬を引っ張りながら部屋から出て行き、皆もそれに続き最後に出て行くアスランが

「一応。ちゃんと鍵かけろよ」

と声を掛けてドアを閉めた。



それから1時間近くしての呼ぶ声がして皆は部屋に戻った。

「おお〜」

部屋に入った皆の声がどよめいた。

「髪もアップさせたんだ?」

「そ。その方が見てて綺麗でしょ?」

黒い髪を高いところで纏めたは笑顔で答えた。

「綺麗ですよ、さん」

「あ、ありがとう、ニコル」

さらりと褒められては赤くなりながらも礼を言った。

「ところで、いつまでこの恰好しておけばいいのかな?私はともかく、ラクスは着慣れてないから凄く歩きづらいと思うんだけど...」

そう言ってラクスの方を見ると

「わたくしは、まだもう少し着ていたいですわ」

ラクスの返答を聞いて「じゃあ、辛くなったら言ってね」と言ってそのままは難なく歩く。

それから部屋に運ばれて来た紅茶で皆は話に花を咲かせていたが、ラスティがチェス盤を発見してイザークを煽り、アスランとの勝負を持ちかける。

勿論イザークはその勝負をアスランに拒否権なく引き受けさせ、熱いバトルが始まった。


「あれ?何してるんだ?」

皆がアスランVSイザークのチェスの試合を観戦しているのに、一人離れたテーブルで何かをしているに気が付き、ミゲルが声を掛ける。

「んー、ちょっとねぇ」

そう言いながら手を止めないを怪訝に思ったミゲルが近づくと不思議なものがテーブルの上に並べられている。

「何だ、これ?」

その一つを手にとってに聞くと、

「うん...それはラクスの」

という見当違いな返答が返ってきた。

の作業が終わるまではまともな返答がかえって来ないと判断したミゲルはそのままの行動を見守った。

その中でふと、チェスバトルを繰り広げられているテーブルの方を見るとイザークが肩を震わせている。

どうやら試合は終わってアスランが勝ったらしい。さすがに人様の邸宅で騒ぐわけにはいかないイザークは必死に怒りを殺しているのだ。

その様子を見ていたミゲルが肩を竦ませたとき、

「出来た!!」

が作業の終了を告げた。

「お?終わったのか?で、これは一体何なんだ?」

先ほどと同じ質問を繰る返すと

「はい、これがミゲルの」

と言って黄色い紙で折った何かを渡してきた。

「ああ、ありがとう...」

よく分からないが受け取ったミゲルはとにかく礼を言った。

「何やってるんだよ、二人して」

そう言いながらラスティが近づき、その声に皆も近づいてきた。

「はい、ラスティはこれで、ニコルはこっち。ディアッカはこれね?」

そう言いながら皆にミゲルにあげたものと色違いの同じものを渡していく。

「で?結局これ何?」

3度目の正直というか、ミゲルが同じ質問をすると

「鶴」

と一言。

「鶴ぅ?」

ラスティがの言葉を繰り返すと

「そ。私のいた国では平和を願って鶴を折ったの。だから、皆に、って思ってね。丁度鞄に折り紙入ってたから」

「ありがとうございます!僕、大切にします」

ニコルは大事そうに鶴をそっと両手で包んだ。

「ありがとう」

そう言っては微笑む。

「でさぁ、これの色、どうやって決めたんだよ?」

「秘密。ラクス以外は法則があるよ。ちょっと微妙な人もいるけど」

そう言って悪戯っぽく笑う。

「俺が、紫。イザークが水色?ラスティが青。ニコルが橙でアスランは緑...ミゲルは黄色。ラクス嬢は、白?」

皆の鶴を見ながらディアッカがそう纏めていると、

「あ、なるほどな」

イザークが呟く。

「何だ?分かったのか?」

ディアッカが聞くと

「瞳の色だ。そうだろ、

「正解。ちなみにラクスは何となくイメージ。皆に渡した色も違うなぁって思うのあるけど他がないし、ごめんね?」

申し訳なさそうに皆に手を合わせる

「気にすんなよ。俺ら嬉しいし」

と言ってラスティがウィンクをした。


「そういえば、話が変わって悪いんだが。は明後日のパーティには何を着て行くんだ?」

突然のイザークの爆弾発言には固まってしまった。

「それでしたら、明日買いに行く予定ですわ」

更にはラクスが追い討ちを掛けられ、ミゲルに視線を送ると目を逸らされてこれは逃れられないことだと悟った。




彼らに折鶴を渡すというシチュエーションは絶対に入れたかったんです。
ヒロインにとって皆は家族同然の身内のようなものだと思うんです。
そんな彼らの無事を祈りながら彼女は鶴を折りました。

桜風
05.1.2


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