Moonshine 10





翌日。

何故か再び皆がクライン邸にやって来た。

「何で、皆もいるの?」

「いや、今日のドレスを買いに行くだろ?見立ててやろうって思ってさ」

ディアッカがそう答えた。

「ところで、そのパーティって何?私も出なきゃいけないものなの?」

昨日からの疑問をやっと口にするとラスティが

「あ?知らないのか?評議会主催のZAFTの激励パーティだよ。はクライン家の遠縁って事になってて、更にはクルーゼ隊の一員だし」

「え?!私、ラクスの遠縁って事になってるの?」

「そうですわ。アスランから事情を聞いたときに、一応身元がしっかりしている方がいいと思いましてそういうことにさせて頂きましたの」

柔らかく微笑みながらそういうラクスに、は引き攣った笑顔を返すのがやっとだった。



街に降り立ち、は唖然とした。

何だかたくさん人がいて、あちこちに巨大モニタがあり、そこではラクスの映像が流れていた。

「ラ、ラクス?」

「はい?」

「いっぱいいるよ?」

「そうですわね」

モニタから目を離すことができずに呟いたにラクスはやはり笑顔で返した。

「当然だろ。ラクス嬢は俺たちコーディネーターのアイドルだからな」

「ほら、呆けてないで行くぞ」

この状況に慣れている皆はそう言っての先を歩きながら目的地を目指す。

「まあ、行こうぜ?」

庶民仲間のミゲルに声を掛けられ、は足を進めた。


ある店の前で皆が止まる。

やっと追いついたは思わず遠い目をしていた。

「さあ、参りましょう、

ラクスに引きずられながらはその店の中へ入ると

「いらっしゃいませ、ラクス様」

店の支配人らしい男性が恭しく頭を下げて挨拶をしてきた。

「こんにちは。今日はこの方のドレスを、と思いまして」

そう言ってを紹介する。

「畏まりました。どのようなものがお好みですか?」

物腰柔らかく声を掛けられたは困っていた。

(どのようなもの...どうしよう。ドレスなんて見た記憶すらないよ)

が途方に暮れているのをよそに

「そうだな、これなんてどうだ?」

「いいえ、さんにはその色よりも、これです!」

「まあ、色はいいとして、そのデザインはなぁ...」

勝手に周りが盛り上がっていた。

「皆さんは、ちょっと出ててくださいませんか?」

「え?何故です、ラクス」

突然ラクスに声を掛けられ、盛り上がっていた少年たちは驚く。

「明日の楽しみが減ってしまいませんか?今、ここでのドレスを知っていたのでは」

にっこりと微笑まれながらそう言われた彼らは反論することが出来ずに言われるままに店を出た。

「さあ、。素敵なドレスを選びましょうね?」

ラクスに微笑まれたもまた、何も言えずに引き攣った笑顔を返しただけだった。




1時間もしないうちにとラクスが店から出てきた。

「お?早いな」

そう言いながら少し離れたところで大人しく待っていた少年たちがたちの元へ向かう。

さすがに、女性向のブティックの前で待つのは恥ずかしかったらしい。

「お待たせいたしました」

「どういう感じのドレスにしたんですか?」

ニコルが聞くが

「それは、秘密です。明日のお楽しみですわ」

人差し指を立てて唇に当て、ラクスは微笑んでそう答えた。

「でさ、これからどうする?」

「このまま帰るってのも味気ないしなー。はどうしたい?」

ラスティにそう声を掛けられ、は少し悩んだ後

「もうちょっと街を見て回りたいかも。初めてだし」

「それもそうだな。じゃあ、もう少し歩いてみるか?よろしいですか、ラクス嬢?」

「ええ。勿論ですわ」

ラクスが快く了承したので皆でに街を案内することとなった。

しかし、

「おい、あれ。ラクスさまじゃないか?」

「本当!あ、評議会の議員のご子息たちもご一緒よ」

目立つ集団だったがために周囲が騒ぎ始めた。

「まずいな。...一度散るか?」

「ああ。この人数だと小回りが利かないしな」

「じゃあ、30分後に臨海の公園の時計塔の前に集合な?」

「了解」

「ラクス。ちょっと失礼」

そう言ってアスランがラクスを横抱きにして走り始めたのを合図に皆は散った。

その場には、が独り残されていた。



30分後に皆が時計塔の前に集まった。

「お疲れ」

「ああ。ラクス嬢も無事で何よりです」

「アスランと一緒でしたから。...ところで、どなたがを?」

「「「「「...」」」」」

皆は周りを見渡す。しかしながらの姿は無かった。

「...ラスティが一番近くにいたよな?」

「え?!いや、ニコルの方が近かったって」

「皆で散るというのを提案したのはディアッカですよ」

「ああ?!いつもと一緒にいるのはミゲルだろ?」

「それはそうだが、さっき俺はから離れてたんだ」

「...お静かになさい」

ラクスの冷たい声に皆は固まり、静かにラクスを見る。

いつものように笑顔でいるが、皆の背中に悪寒が走った。

「この際、誰が、を連れて行くはずだったかはもう宜しいのではありませんか?問題は、今、がどこにいるかということでしょう?」

「そう、ですね。皆で探しに行きましょう」

ニコルがそう提案したが、

「いや、全員で行くとまたさっきのようなことになる。あいつに任せようぜ」

既に走り出したイザークを眺めながらミゲルは微笑んだ。




そろそろイザークにも動いてもらわないと...。
このままだとミゲル夢になってしまいそうな勢いでしたので(苦笑)

桜風
05.1.16


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