Moonshine 12





「うへぇ...」

その建物を見上げては思わず間抜けな声を出す。

「どうかしましたか、?」

「いいえ。何でもあり..ございません、わ」

ギクシャクとしながらは引き攣った笑顔をラクスに返した。

実は昨日皆に送ってもらった後、にラクスがパーティでの最低限の礼節を指導した。その時のラクスがスパルタであったため、礼節も身についたが、少々ラクスへの恐怖も身についてしまったのだ。

「そうですか?では、参りましょう」

そう優雅に微笑んでラクスが足を進め、はそれに続いた。

「ラクス!」

「まあ、アスラン」

門の傍にいたアスランがラクスを見つけて走ってきた。

「すみません。急に出かけ際に用事が出来てしまって」

「いいえ、構いませんわ」

「へえ、。そのドレス、似合うじゃん?」

後ろから声を掛けられ驚いて振り返るとそこにはラスティ、ディアッカ、イザーク、ミゲルがいた。

「ありがとう...あれ?ニコルは?」

いつもいるはずの少年がいないことに気が付いたが聞いてみると、

「ああ。ニコルは今日演奏するから少し早めに来てるんだよ。音を聞きたいからって」

「そうなの?確かピアノをやってるんだよね。うわぁ、楽しみだな」

「良かったな」

ミゲルが、嬉しそうにしているの頭を軽く撫でてやる。

「おい、そろそろ行かないか?あまり遅いと周りがうるさいぞ?」

時計を見てイザークが皆に声を掛け、

「だな。んじゃ、、俺がエスコートしてやるよ」

と言ったディアッカに連れられては会場に入っていった。



「ふうん。やっぱ結構集まってるな」

「でも、今回のは少ない方じゃないか?」

ディアッカとイザークの会話を聞いてたは殆ど自棄になってその場に立っていた。どう考えても自分は場違いだが、クルーゼ隊の人間で、しかもラクスの家の遠縁に当たることになっているのならクライン家を立てなければならない。勿論、『立てる』って程の自分ではないと分かってはいるが。

とりあえず、親を評議会のメンバーに持つイザークとディアッカ、そしてやはり名家の出身のラスティは挨拶回りがあると言っての傍から離れて行った。

は壁際で溜息を一つ吐く。

向こうには婚約者のアスランと共に笑顔でどこかの偉い人と話をしているラクス。別のところにはやっぱり偉そうな人と話をしているイザークたち。

少し前まで自分のいた世界と違いすぎる今の現実に思わず潰れてしまいそうになる。

(なんだか、随分違う世界に来ちゃったよね...。ちょっと、外の風に当たってこよう)

そう思い、はテラスから庭に出て行った。



手入れされた花壇の前のベンチに座って空を見上げた。

空にはたくさんの星が瞬いて、そして、月が出ていた。

自分がいた世界と変わらない優しい月の光に思わず泣きそうになる。

「どうかされましたか、レディ」

そう声を掛けられて驚いて振り向くと

「イザーク...」

そこには銀髪の少年が立っていた。

「どうかしたのか?」

心配そうな声でそう言われ、は少しぎこちなく笑う。

「うん。大丈夫」

「そうは、見えんな。隣、座るぞ」

そう言っての隣に腰を下ろした。

「星を、見てたのか?」

空を見上げてイザークが聞いてきた。

「うん..」

も空を見上げる。

「星がね、綺麗でしょ?月も」

「...だが、あれは人工的に作った星空だ」

「そっか...」

のいた世界の空はどうだったんだ?」

不意にイザークが聞いてきた。

「うん。こんな感じ。もしかしたら、もう少し星が見えなかったかな?でもね、月の光はあんな風に優しかった」

「そうか。俺は、月といえばあまりいいイメージは無いな。ここの月には軍事基地がある。プラントから見る月は、無機質で、何も無い」

「そっか。じゃあ、いつか地球に行くことがあったら月を見てみてよ。たぶん、同じだから。優しく見えるよ、きっと」

そう言ってはイザークに笑顔を向け、

「イザークの髪って、月の光みたいだよね」

その銀髪に触れた。

「これは、光栄なお言葉です、レディ」

恭しく頭を下げて礼を述べるイザークには思わず噴出した。

「...そろそろ戻らないか?きっと皆が、というか、ラクス嬢がまた心配してると思うぞ」

そう言ってイザークが立ち上がり

「お手をどうぞ、レディ」

手を差し出す。

はスッとイザークの手に自分の手を掛けて立ち上がり

「ありがとうございます」

ラクスに習ったように軽く礼をして微笑んだ。

お互い少し照れくさくなり、

「行くぞ」

ぶっきらぼうにイザークが声を掛け

「うん」

はその隣に並んで少しゆっくりと会場へ向かった。




「あらあら?イイカンジじゃない?」

「だな。こういう展開になるとは予想外だ」

「いや、それよりも俺たち何をしてるんだ?」

「あら、よろしいではありませんか。にはこんな場所はきっと退屈だと思ってましたし。あんな楽しそうなが見れたのですから」

「ラフも目敏いよなぁ。が出て行って、少ししてイザークが出て行ったところをちゃんと目撃してるんだから」

「ところでさぁ。いい加減俺たちも戻らないとマズイんじゃないの?」

たちの座っていたベンチの裏の茂みで姿勢を低くしたまま、当然クルーゼ隊の所属しているためパーティ会場に来ていたラフ、ミゲル、アスラン、ラクス、ラスティ、ディアッカがこそこそと感想を述べていた。




何やってるんだか、エリートたちは(笑)
この話のタイトル、こういうイメージがあるために付きました。
イザ王子は月の光というイメージがあります。
そんな静かな性格はしてませんけどね(笑)

桜風
05.2.20


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