| ディアッカからの輸血も済み、は静かに眠っている。 「さあ、あなた達は演習があるんでしょ?...ディアッカ、アンタは休んでもいいのよ?適当に理由をつけて休ませてあげれるけど?」 「いーや、出る。何てったって俺は優秀なコーディネーターだから、これくらい何てことねぇよ」 少し血の気の失せた顔をしたディアッカはヒラヒラと手を振って医務室を後にした。 「...イザーク?」 が寝ているベッドの脇に座って痛ましい顔をしたイザークに、ラフは声を掛けて促す。 イザークは静かに立ち上がり、すっとの頬を撫で小さな声で「すまない」と囁き医務室を後にした。 傍にいて欲しいと願い、絶対に守ってみせると誓った。 それなのに、自分のすぐ傍では傷ついた。 それを阻止できなかった自分を責め、守りきれなかった無力感に苛まれる。 もし、あの時を発見することが出来なかったら彼女を失っていたかもしれない。 そう思うとゾッとする。失いたくない、守りたいと思うそれを守りきれない自分にどうしようもなく腹立たしさを感じた。 そんなことを考えていたせいか、イザークは午後の演習は散々だった。 演習が終わり、イザークは手短にシャワーを済ませて医務室に向かう。 「おやぁ?イザーク怪我してるじゃん。全く、どんなことがあっても集中しないと。演習って言っても本当に危ないときは危ないんでしょ?」 「...ああ」 上の空で返事をしたイザークは、ベッドの方に目を向けて、 「ラフ。はどこだ?」 もぬけの殻になっているベッドを見ながら眉間に皺を寄せてラフに聞く。 「んー、部屋に帰りたいって言ったから帰してあげたわよ?」 何事もないようにラフが答え 「何だとキサマ?!」 「誰が『キサマ』だ!!」 そう言いながらラフはイザークの負傷した箇所を思いっきり叩いた。 痛さのあまり声が出ずに蹲るイザークに向かってラフは 「あの子が『部屋に帰りたい』って言ったのよ。ここに居たら皆の心配する顔を見ないといけなくなるからって。自分がとても迷惑かけてるの分かっちゃうからって言ったの。そう言われて『まあ、いいからここに居なさい』って言える?症状も落ち着いてるし、私が往診すればいい事だしって思ってのよ。何か文句あるかしら?ジャリたれ??」 と続けた。 「『ジャリたれ』って、口が悪いぞ。...そうか。アイツは、もう大丈夫なのか?」 「そうね。そうじゃなかったらあの子の意思とは言え、部屋になんて帰しません。何てったって、わたくしこう見えても医者ですから?」 「そうだったな。は犯人の顔、見たと思うか?」 「見てるでしょ。あの子にリネン室は無縁の場所よ?だから、誰かに言われて行ったはずでしょ。その誰かって言うの知ってるんじゃないかな?手紙で呼び出されたにしても色々調べようはあるけどね」 「そうだな。それならに「あの子は言わないわよ」 ラフに言葉を遮られたイザークは眉間に皺を寄せて 「何でだ?」 と聞いた。 「私、聞いたもの。でも、答えなかった。言いたくないんじゃないの?無理に聞き出したら嫌われるから気をつけなさいね。はい、終わったわよ。今度から上の空で演習は受けないように!」 「ああ。すまない、気をつける」 「お帰りなさい、はどうでした?」 自室に帰ったはずなのにニコルの声が聞こえて、イザークは思わず部屋番号を確かめに再び廊下に出た。 部屋番号に間違いがないことを確認して再び部屋に戻り顔を顰める。 皆が部屋に集まっていた。 「もう部屋に戻っているそうだ」 「え?大丈夫なのか?」 「本人が帰りたいと言ったらしいし、医者も止めなかった」 「じゃあ、さんの部屋までお見舞いに行きましょう」 「賛成!よーし、そうと決まったらこんな部屋に用はないな」 そう言ってラスティが部屋を出て行き、「こんな部屋とは何だよ」と文句を言いながらディアッカも続いて出て行った。ニコル、アスランも出て行った後、最後に出て行こうとしていたミゲルが戻ってイザークの寝転ぶベッドの傍に立つ。 「イザークは行かないのか?」 「ああ。今はそんな気分じゃない」 「そうか...イザーク、今回のはお前のせいじゃない。分かってるよな?俺たち全員何も出来なかった。皆同じなんだからな?あまり、自分を責めるなよ」 そう声を掛けてミゲルもイザークたちの部屋を後にした。 「あれ?鍵が開いてる」 の部屋の前にたったアスランが呟き、皆がそれを確認する。 「どうしたんですかね?」 ブザーを鳴らすが返事がない。 不審に思った皆はそろりとドアを開けると寝息が聞こえてきた。 「寝てるのか?」 「無用心だなぁ」 そう言いながら部屋に入ろうとすると 「マイド!!アスラン、ゲンキカ??」 アイスブルーの丸い物体がピョンピョン跳ねて騒ぐ。 「ハロ!」 アスランが驚きそれを黙らせようと手を出すがのハロはピョンピョン跳ねながらその手をかわして逃げる。 「ハロ?どうしたの??」 ベッドの上から体を起こす気配がして皆は怯んだ。 「あれ?皆どうしたの??」 「お見舞いに来たんですよ。さん、部屋の鍵はしっかりかけておいた方がいいですよ。僕たちがここに来たときには鍵が開いてましたよ?」 「あれ?そうなんだ。掛けたつもりだったんだけどなぁ。ありがとう」 皆が自分の部屋に入ってきていることに無頓着なに皆はこっそり溜息を吐いた。 「ところで、」 気を取り直したラスティが話を変える。 「何?」 「お前をそんな目に遭わせたやつ、誰?」 「知らない」 ラスティの質問に即答した。 「知らないってことは無いだろ?お前に危害を加えるまでに何らかの形で接触したはずだろ?お前は食堂でも働いてるから名前を知らなくても顔を見たことがある人間なんて沢山いるはずだ」 「知らない」 その後、皆が聞きだそうと質問を変えて問い質すが一向に話す気配が無い。 全員が質問をするのに疲れた頃、が口を開いた。 「この事に関しては詮索無用です。大丈夫、次は無いから。さてさて。私はもう一眠りしたいから、皆出て行って。鍵掛けたいし」 「俺が添い寝してやろ..ッ」 ディアッカがその言葉を最後まで言えることはなく、ニコルに思い切り足を踏まれ、ミゲルに背中をきつく抓られ、ラスティに頭をはたかれた。 そのすぐ後ろでアスランは溜息を吐き、早々に引き上げる。 「それじゃあ、お大事に。大人しくしてるんだぞ」 ディアッカに声を掛けられ、は苦笑しながら 「その言葉、そっくり返すよ」 と仲間に手加減なく叩かれ、痛手を受けた彼に向かって手を振って見送った。 |
この船の中で最強なのはラフ先生のような気がしてなりません。
そして、ディアッカは非常にオチに使いやすいです...
桜風
05.5.1
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